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私は病院の廊下を歩いてる。
少し熱い。
あまり熱くない方へ行きたい。
もたつく足で、先に進んだ。
前に、明かりが見える。
「わ!」
男の子の声だ。
眩しいので、顔の前に手をかざすと、ライトが下を向いた。
「ど、どうしたんですか!?」
青年が寄ってくる。
私の好きなアイドル、爽やか三銃士のミックンに似た美男子だ。
胸がドキドキした。
彼の後ろにもう1人、同年代の大柄な男の子が居る。
「迷ってしまったみたいで…」
私が答えると、2人は顔を見合わせた。
美男子が、何か言った。
「え?」
私が訊き返すと、大きな声で「ボクは優希。こいつは剛志です」と教えてくれた。
「私は茜。2人は、どうしてここに?」
「オレたちは霊とかオカルトが好きで。この廃病院に黒い怪物が出るって噂を聞いて」
「黒い怪物?」
「ええ。大きくて真っ黒で、口には牙がびっしり生えてて…」
「怖い!」
私は優希くんに、しがみついた。
「あ! ごめんなさい! 怖いですよね」
彼が、私の背中を擦ってくれる。
ハンサムで優しい。
私はもうすっかり、優希くんを好きになってしまった。
「じゃあ、とりあえず外に出るか。茜さんを連れて、黒い怪物探しもないだろ?」
剛志くんが、優希くんに提案する。
「そうだな…戻ろう。茜さん」
「茜ちゃんって呼んで」
「え!? アハハ! 茜ちゃん、外に出よう。ここは危ないから」
剛志くんの後に、私の手を引いた優希くんが続く。
彼は本当に優しい。
床に落ちた瓦礫やコンクリート片につまずきそうになると、優希くんが支えてくれた。