似合わない
活発でクラスの中心だった彼は卒業間近で、雨が降る悪天候の中この世に別れを告げた。
雨が降り、まるで彼の死を世界が悲しんでいるようだった。クラスメイトという名目で彼のお葬式に呼ばれた私は、お葬式で泣くことが出来なかった。
周りのクラスメイトは、彼の死を嘆き、悲しみ、男女問わず泣いていた。
その中で私は1人。下を向いていた。
泣かない私を見て周りのクラスメイトは
「気味が悪い」「感情がないんだ」「サイテー」と口々に言っていた。
そんな中、彼の母に話しかけられた。
「あなた、うちのユキと仲良くしてくれていた子よね?ユキからよく話は聞いてきたわ。」
彼の母は、赤くなった目を擦りながら微笑んだ。
「はい…、仲良くしていただいていました。」
彼とよく似た彼の母。
泣いている顔と苦笑いの顔までそっくりなんて懐かしく思う反面。私なんかの話なんてと思った。
「これ…、あなたに…、きっとあの子も喜ぶわ」
「ありがとうございます。」
古くて少し角が破れている本が1冊。
その本を片手に、彼との最後の別れが悲しくて、彼の火葬が終わる前に帰ることにした。
彼の母から貰った古くなった本の表紙を見るとそれは本ではなく、日記だったようで、ダイアリーと書いてあった。中を開くと「僕が死んだらこの日記はメガネに」と書いてあった。
私の事なんて気にしていないような人だったのに。
「似合わないことしてバカ」
その時、その場でしゃがみこんで日記を抱えたまま泣き出してしまった。
泣く資格なんてないのに。
最後の最後まで私を乱して来る人だった。