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「どうしてお姉様が呼ばれるのよ!」


 庭に戻ろうとしたレーアの前に現れたのは、やはり継母と妹カタリナだった。


 まぁ来るだろうな、とは思っていたけれど。


 そう言われても、私が何かしたわけでもないしな、と思いつつ、何も言わずにいると


「本当に何でこんな何を考えているかわからないような化け物みたいな子が選ばれたのかしら?ちゃんと返事したんでしょうね?失礼なことしてないわよね、カタリナに影響あったら困るんだけど」


 妹も妹ならその母親も母親だ。その言葉が私だけではなく、精霊が視える者全てを蔑んでいることに気づいているのか。そしてその者がどなたかということも。


 二人はレーアが言い返さないと思って段々とヒートアップしていった。


 「なんで!?なんでお姉様なの?普段引きこもっているお姉様より私でしょ?年齢も近いのは私じゃない!」


 かなりの大声が響く。流石にこの大声はまずいと思ったのか

「……もうそのへんで、ね?」

 と母親がいなしているが妹は止まらない。


「おかしいわよ!私の方がきれいだし、王妃様やレーツェル様の隣にいっても見劣りしないわ!なんでお姉様なのよ!ったく、変な物が見えて化け物のくせして!気味悪いったらありゃしない!」


 そうカタリナが叫びきったところで、私達三人以外の靴音が聞こえた。


 カツンカツンとヒールの音が響いている。そちらを見ると先程までテーブルを一緒に囲んでいたレーツェル・シュヴァルツ様だ。後ろに護衛の騎士らしい女性も控えている。その表情から察するとわざと靴音を響かせたようだ。


「………あ!」

 カタリナがその姿を見て叫ぶ。いかにもしまった、というような顔をしており、彼女に対してマズイことを言っていたのがバレバレだ。


 するとレーツェル様はニッコリと微笑み、とても優しい声で話しかけてきた。


「御機嫌よう、ストリア子爵家の皆様。レーア様におかれましては先ほどはありがとうございました」


 いえ、私達はこれで、と継母と妹はあっという間にいなくなった。あんなに速く動けたんだと少し感心した。


 自分とレーツェル様、護衛の女騎士様の三人だけになると先程の件、ご迷惑をかけたのでは、と頭を下げてきたので、慌てて止めた。


「お止めください!何も迷惑など。今程の妹の態度の方がよっぽどご迷惑を!」

 思わず言ってしまうと

「大丈夫です。私など今までどちらかというと忌み嫌われる存在ですから。今でも、かも知れませんが。この色ですから」

 フッと微笑みながらそう告げられた。


 あぁそうか、この方もこの色で今まで色々と言われてきたのか。とても綺麗な色なのに。


「……シュヴァルツ様はお強いですね。私などとは違います」

 ポツリと呟いてしまった。するとそれを聞いたレーツェル様はニコリと笑いながら


「どうぞ、レーツェル、と呼んで頂ければ。レーア様と呼んでも?」

 とても優しい声で尋ねてくれた。レーアは少し驚いてから、慌てて

「も、もちろんです!」

 と元気よく答えた。


「もしよろしければ少しお話させて頂いてもよろしいですか?」

 レーツェル様が尋ねてきた。少し驚きつつも失礼のないように


「はい、大丈夫ですが、何故私に?」

 と答えると、とても綺麗な微笑みで告げられた。

「是非仲良くしたいと思いまして」

「わ、私なんてどちらかというと引きこもりで仲良くしていただいてもレーツェル様のお役に立つことなんて」

 慌てて手を振りながら答えた。


「いえいえ、そんな謙遜なさらないでください。それこそ多分今日このお茶会に来ている令嬢方の中で一番私にとって重要かと。ねぇみんな?」

「え?」


 レーツェル様のその一言で三人の周りに精霊が集まってきた。とてつもない数だ。こんなに飛び回っているのを見るこは今まで初めてだ。


「わ、わ!凄い、何でこんなに…」


 隠すことも忘れて、思わず声を出してしまった。


「レーア様、『視えて』ますよね?」


 レーツェル様がニコッと笑って告げてきた。


「…え、あ、何のこと…」

 あ、しまった、と思った時には遅かった。


「この子達の事です。私には隠さないで結構ですよ」

 と、レーツェル様は精霊達を手の平に乗せたり、肩にいる子を撫でたりしている。


「……あ、大丈夫なんですか……?レーツェル様も?視えてらっしゃいます……?」

 ボソッと呟くと明るい声で帰ってきた。


「視えてますし、私、この子達の王、らしいんですよ」


「あ、そうですね、『竜王』ですものね……」


 そうだ、そうだった。なら視えるのは当たり前であって。何だか肩の力が抜けた。するとレーツェル様は人差し指を口元にあてて、内緒のポーズで


「はい、ですのでお仲間です」


 とても可愛らしい。さらに尋ねてきた。


「ちなみにレーア様は小さい頃から視えたのですか?きちんとした人型で視えているのですか?」

「あ、はい、人型に視えますが……かわいい感じですよね。あと小さい時には既に。物心ついた時には視えてました。ただ」

「ただ?」


 言ってもいいのか一瞬迷ったが、レーツェル様なら大丈夫なのではないかと思った自分がいた。初めてお会いしたのに、何故か安心感があるのだ。

 

「ただ、小さい時には視える事を両親には言っていたのですが、信じてもらえなくて、気味悪がられて。最近は誰にも言っていませんでした」

 

 レーツェル様はフッと微笑まれて


「レーア様、ちょっとお伺いしますが、今まで魔力とか魔法の訓練とか受けた事ありますか?」


 思いもしない質問がきた。


「……いえ。通常の生活魔法は習いましたが、それだけです。その事が何か?」


 少し驚いて、苦笑しながらレーツェル様は続けてきた。

「この子達が人型に視えると言う事自体、凄いことでして。多分我が国の軍の魔道士部門にもそんなにいないと思います」


「え?!」


 え?そこまで?そんなにいない?不思議がっている私にレーツェル様はさらに続ける。


「もしレーア様さえよろしければ是非一度アルフォンス殿下と会っていただきたいですわ」

「え?アルフォンス殿下と?……あ、魔道士部門の」

「はい、我が国の魔道士部門のトップです」

「で、でも私、今まで一度も訓練なんて」

「訓練なんて何時でも始められます。要は素質があるか、です。魔力がないと訓練しても意味ないですからね。レーア様はその点は間違いなくクリアしていますし」


 私が魔道士?え?今までそんなこと、と思いつつ思わず声に出していた。

「わ、私今まで、家族に気味悪がられてて…このまま隠していかなきゃと思ってて……」


 レーツェル様は優しい笑顔で


「確かに女性だと後々のことを考えて軍に入るなんて、と思われるかもしれませんし、レーア様がこのまま隠していく、と決められたのでしたら、その事に関しては私は何も申しませんし、アルフォンス殿下に話すつもりもこざいません。後ろのアメリ様も話す事はありません。安心してください」

 さらに続けて

「家の事もありますし、ご家族の事も。無理強いはいたしません。ただ女性だから、と言って無理に抑えられて、不自由なのであればいくらでも手助けはいたします」

 するとレーツェル様の後ろに立っておられた護衛の女騎士様が手を少しあげた。

「ちょっとよろしいですか?」

 どうぞ、とレーツェル様が促している。その護衛騎士様も優しい笑顔で話しかけてきた。


「私も家名に囚われていた所をレーツェル様とアルフォンス殿下に助けていただきました。感謝しきれないほどです。先程の妹様を見ましたが私の家族と同じような気がしました。もしレーア様が一歩でも踏み出したいようでしたらレーツェル様とアルフォンス殿下が必ず良いようにしてくれますので。心配なさることはないかと思います」


 え?同じ?それって……

「わ、私でも役に立つことが……あるのですか……?」

「役に立ちますし、大歓迎だと思いますよ」


 レーツェル様は即答だった。こんな私でも?役に立つ?本当に?


 家族(とは言えないかもしれないが)からも気味悪がれ、疎ましく思われている私でも誰かの役に立つのだろうか?


 何も発せずに立っているとレーツェル様は優しい笑顔のまま


「すぐにどうこうは難しいと思いますし、しばらく考えてからで結構ですよ。そうですね……」


 精霊達に向かって何かを話している。するとレーツェル様はその子を手に乗せて、私の肩に近づけてきた。その子が嬉しそうに肩に乗ってきた。


「この子がしばらく一緒にいるそうです。もし私に連絡する時はこの子に話してかけてください。そうしたらすぐに伝わりますから。そうしたら私名でもアルフォンス名でも使って絶対家族の方が勝手に断れないようにお呼び出しいたしますから」

「あ、そんな事が…」

「はい、できますので。お家のことは考えずに、自分が何をしたいか?を考えてみてくださいね」


「……自分が何をしたいかを」

「はい、後はこちらにお任せくださいませ」

 

 自分が何をしたいのかを。そう言われて思わず考えこんでしまった。

 こんな私でも?役に立つのだろうか?


「とりあえず、お庭に戻りましょうか」


 レーツェル様の一言にハッとなり、一緒に庭に戻って行った。



本日もありがとうございます。


本編(竜王の契約者)と同じ部分が出てきますが、話の都合上お許し願えればと思います。


明日もお待ちしております。

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