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「二度と顔を見せないのであれば、これ以上の追求はしない。本来なら王族に対する侮辱罪を行使したいところだが、アルフォンスもレーツェルもそこまでは望まない。ただ」

「……た、ただ?」

「この先、レーア嬢に一度でも接触、または接触しようと画策した場合はこれまでの罪全てを合わせて請求するものと思え」


 もう頷くしかなかった。王族に対する侮辱罪など、どんな請求が来るかなど考えたくもない。三人呆然と項垂れるしかなかった。


「ストリア子爵家がどうなるかは貴様等次第だ。レーア嬢は一切関係ない。彼女の身はこちらで預かる」

「レーアは、レーアはどうなるのですか…?彼女も借金を抱えて……」


 ベルンハルト国王陛下は冷たい視線のまま


「それは何の心配だ?今更親として、とか言うのか」


 そう言われると何も言えない。親らしいことなど何一つしてこなかった。彼女が言うことを何一つ信じてなかった。それこそ、今更、だ。


 一つ溜息をついた国王陛下が話し出す。


「今更だが、教えておいてやる。イーヴォ」

 隣の宰相様が、はい、と書類を見る。


「レーア嬢の借金はいくらだ?」

「今のところ三万ほどかと」

「さ、三万!?たったの……」


 我が家の一千万とはえらい違う。三万ならそれこそ……。


「どれくらいで返せそうだ?」

「そうですねレーア嬢なら魔道士部門に入り最初の給与で返せるかと。多分ですが彼女の力量ですと初月から三十万ほど入ってくるかと」


 三十万?一月で?え?どういうことだ?三人が何も言えずに呆然としていると宰相様はなおも続ける。


「彼女の場合、借金ではなく、これからの生活に必要な物を買うだけですから。所謂必要経費です。増えるといってもあとは服代とかですかね。仕事中は魔道士の制服が支給されますのでそれほどかからないかと」


 え?それが借金?服代?


「それはどういうことですか?何かを、高価な物を壊したのではないのですか?それを弁償しなければならないのでは?先程陛下はそう言われて……」


 ベルンハルト国王陛下と宰相様がこちらを見る。


「物を壊して弁償?そんなこと言ったか?」

「いえ、物を壊したとは言いましたが、その壊した物を弁償とは言っておりません。借金というか必要経費を払う話とは別の話でしたね」

 

 宰相様の話を聞いてベルンハルト国王陛下は一度頷いてから


「ちなみにレーア嬢が壊した物って、魔道士部門の訓練用の的だから備品だし、壊しても弁償の必要はないね。寧ろ今まで誰も壊せなかったのに、訓練もまともにしていない彼女が壊すほどの攻撃の魔力量を持っていると言うことで魔道士部門は喜んでいるくらいだ」


 少し国王陛下の顔が笑っているように見える。だが何も頭に入ってこないとはこのことか。


 物を壊して弁償しなければならないから、借金がと言う話ではなかったか?いや今思い出すと確かに弁償とは言っていない。こちらが勝手に勘違いしただけだ。レーアが壊した物も王宮の物だから高価だと勝手に認識しただけで、いくらとは確かに聞いていない。


 そしてアルフォンス王弟殿下が使役させると言っていたのは魔道士部門に入るということか。魔道士部門と言えばこの王国において、かなり高位の職業だ。誰でも入れる部門ではない。兵士部門や騎士部門より上位とも言われている。


 そんな所にレーアが?あの娘が?


 妻も同じことを考えたのかブツブツと小声で呟いている。


「嘘よ、あの娘が……そんな……魔道士だなんて。嘘に決まってるわ……」


「嘘ではないぞ。もう魔道士部門に入ることは決定した。騎士や兵士と違って推薦人がいる部門だが、とてつもない推薦人がついて、もう魔道士部門のみならず、王宮内でもかなりの注目の的だ。なぁイーヴォ」

「はい」


 宰相様もにこやかに返事をしている。


「す、推薦人……とは?あの娘に誰が……」

「名前くらい聞いたことがあるだろう?前魔道士部門トップのヴァイツェンだ」

「ヴァイツェン…様…」

 聞いたことがないわけがない、前国王陛下であるルカリスティア公爵のお抱えで、この王国の魔道士の中でもアルフォンス王弟殿下と肩を並べるお方だ。


 そんな方が?レーアの推薦人?


「そのこともあり魔道士部門ではかなりの衝撃が走っているとか」

 宰相様が淡々と話し出す。


「あの、ヴァイツェン殿が推薦人の欄に名前を書いたと、今まで誰の推薦人にもならなかったのに。身内や息子ですら書きませんでしたからね。彼が認めたと言うことでそれだけ期待が大きいということです。アルフォンス殿下も認めてらっしゃるということと、何よりもレーツェル様のご友人ということもあり、王宮内はもとより貴族の皆様が黙ってはいないと思います。平民扱いとなった今、争奪戦が始まりますね」


「そ、争奪戦……?何の…?」


 何が何だかわからないことが起こっている、ということはわかる。レーアが?あのレーアが?


「もちろんその身分についてだ。それだけの逸材を高位貴族が逃すはずがない。養子縁組のお誘いが山程来るだろう。なぁイーヴォ」

「そうですね。ヴァイツェン殿の後ろ盾でも十分でしょうが、明日から問い合わせがあるでしょうね。我が家も父に進言したいと思うくらいです。義妹になっても我が家には得しかない」


「宰相様の……」


 宰相様の家名はスタアスト侯爵、侯爵?侯爵家の養子?


「ヴァイツェン殿の所も離さないかもしれませんね」

「そうだな。ヴァイツェンも伯爵だし、養子にする分には何も問題ないな。まぁ間違いなく伯爵位以上になるように世話をするよ。良かったな、ストリア子爵、『元』娘が出世するなんて。手放してくれて喜ぶ者達は沢山いるぞ」


「そ、そんな……」

「あの娘が……?伯爵……」

「う、嘘でしょ…?」


 妻もカタリナも私も信じられないことを聞いて言葉が出ない。さらに国王陛下は畳み掛けてくる。


「あぁ、もちろん近づくことは許さないが、これから先許されたとしても、家格が違うから貴様等から話しかけることは一切許されないと思え、わかったな」


 その言葉が三人に冷たく言い放たれた。


本日もありがとうございます。


明日、18話、19話を連続更新して完結となります。いつもの時間あたりに2話更新します。


よろしければ評価★★★★★、ブクマ押していただけると嬉しいです。


明日、お待ちしております。


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