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「あぁ怒っているね、とても。アルフォンスも、レーツェルも、私も」

「なら…」

「もちろん、君達、にね」


 言いかけた言葉を遮られるようにベルンハルト国王陛下の声が冷たく響く。


「………え……?」


 思考が停止するとはこのことか。今何て言われた?


「だからアルフォンスやレーツェルが怒っているのは君達三人に、だよ。私も怒っているけどね」


 ベルンハルト国王陛下は手を組み直しながら、笑顔の消えた顔でそう告げてきた。


「…あ、いや、その。え?怒っているのは、レーアに対して、ではないのですか?」

「どうしてレーア嬢に怒る必要があるの?」

「……っさ、先程、何かを壊したから、と……」


 あぁそのことか、と陛下は口元に手をあてながらこちらを見る。


「王宮内の物を壊したからって怒るほど狭量ではないよ。壊したということと怒っている、というのはまったく別の話だね」


 え?と思ったが、確かに物を壊したという話と怒っているという話は一緒の時に話していたが、続いてはなかったのか。なら私達三人に対してというのは一体。


「何故怒っているのかわかっていないようだね」

「……あ、はい…」


 背中に感じる冷たいモノがさらに増していく。


「じゃあ一つ聞くけど、何故レーア嬢を閉じ込めていたの?」

「と、閉じ込めてなど」

「いない、と言い切れるの?」


 遮られるように返ってくる質問に戸惑う。すると妻が声を出す。


「あの娘は化け物ですわ!だから家から出さないようにしていただけです!私達は何も悪い事などしておりません!むしろ化け物を抑えていただけです!」


 その叫びに国王陛下だけでなく、宰相様や侍従の男もこちらをギロリと冷たく睨む。ヒッと言う妻の声がけ聞こえる。


 ベルンハルト国王陛下は溜息を一つつき


「まったくまだこんな考えの者がいるのかと思うと腹が立つな。なら聞くが何故レーア嬢が化け物なのだ?」


 あの、とやっとのことで妻が声を出す。


「あ、あの娘は小さな時から何かが見えると言っていました!何もいないのに!誰もいない、何もないところに向かって話しかけたりして、おかしいとしか言えないのです!私だけでなく、旦那様も娘もその姿を見ておりますわ!」


 ふーん、と言いながらこちらを見ている国王陛下が


「ストリア子爵も?そこの娘もそう思っていたの?」

「は、はい。気味が悪いと」

「そ、そうですわ!」


「そのことに怒っているんだよ、私は」


 ベルンハルト国王陛下の雰囲気が一気に変わった。冷たい空気がこの空間を支配するような感じだ。


「変だと思ったのなら何故どこかに相談しなかった?何故閉じ込めていた?然るべきところに相談していればその見えているモノが何かはすぐにわかったはずだ。それをせずに今まで放置しておいてどれだけ我が国に損害を与えたかわかっているか?」


 今までの物言いとは一切違う感じに三人はもう何も言えないし動けない。


「そ、損害……とは……」


 やっとのことで絞り出した声が出る。ふぅと溜息をついた国王陛下が話し出す。


「……レーア嬢が見えていると言っていたモノが何かわかるか?」


 国王陛下の質問に三人はやっとの思いで首を振る。声は出ない。


「なら教えてあげるよ。レーア嬢が見えると言っていたのは『精霊』だ。この王国にとって大切な存在だ。そして普通なら『精霊』は見えない。視えるという者は非常に稀な存在だ。それこそ我が国でも一握りの魔力がかなり高い者しか視えない。レーア嬢はその一握りに入ると言うことだ。本来なら成人した時点で我が王国の魔道士部門に入り活躍貢献していてもおかしくない魔力量だ。この二年間の損失は計り知れない」


 ベルンハルト国王陛下の説明に目を見開く。


「そ、そんなレーアがそんなこと……。それに『精霊』が視えるなど聞いたことがな」


 ない、と続けようとしたところまたしても遮られた。


「聞いたことがないのではなく、聞こうとしなかった、調べようとしなかったのだろう?」


 確かにその通りだ。何も言えない。


「それにもう一つ、何か見えているから化け物だとも言っていたな。その理屈なら我が弟と義妹も化け物だと言うことになるのだが、それをわかっての発言と受け取っても?」

「あ………え?」


 間抜けな声を出した三人に対してさらに厳しい視線が集まる。


「先程我が弟について質問したときに、この王国最高の魔力の持ち主だと認識しておったな。ということはレーア嬢と同じく『精霊』が視えているよ。そして我が義妹のレーツェルにいたっては彼等精霊達の王に等しい存在だ。そして貴様等はその視える存在であるレーア嬢を化け物だと罵った。ということは同じような存在の我が弟と義妹を罵ったも同然だ。このことを怒って無いわけがないだろう?」


 先程までのにこやかな表情など一切無くなったベルンハルト国王陛下が冷たく言い放つ。


「特にその後ろの二人にはかなり、だな」


 そう言われた妻と娘は立っていられないほど青褪めて、膝をついた。


「……ど、どうすれば…」

 絞り出した言葉にさらに冷たい言葉が被さる。


「どうもしなくていい。いまさら謝罪など必要ない。今まで言ってきた言葉を取り消すなどできやしないのだから。だから二度とその姿を彼等の前に見せるな。見せた場合何をするかわからんぞ」


 もう何も言えなくなり項垂れるしかなかった。


 

本日もありがとうございます。


19話で完結予定です。

あともう少しお付き合いくださいませ。


よろしければ評価★★★★★、ブクマ、押していただけると嬉しいです。


明日もお待ちしております。





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