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 一体どういうことかわからないまま、立ちすくんでいると、さらにベルンハルト国王陛下が足を組み直す。


「………ヨリナス男爵にも聞いてみたんだけどね」


 何を聞いたのだろうか、借金のことか、一千万のことか。


「確かにストリア子爵との話はある、と」

「そ、そうです。間違いなくあります!」


 ないと困るのだ。今さらなかったことになると借金がと思っているとベルンハルト国王陛下が続けてくる。


「ヨリナス男爵が言うにはストリア子爵令嬢との婚姻だ、と」

「そうです、ですのでレーアが嫁ぐのですが」

「レーア嬢は駄目だよね」


 へっ?とした顔をした自分にベルンハルト国王陛下は横の机に置いてあった書類をもう一度手に取り


「だよね?イーヴォ」

「そうですね」

 隣に立っている宰相様に確認している。宰相様も冷静に返事をしている。何が駄目なのだろうか?先程の書類には婚姻を禁止とは書いてなかったはずだ。


 ベルンハルト国王陛下は書類を手にしたまま


「ヨリナス男爵は『ストリア子爵令嬢』との婚姻を受け入れるんだよ?先程のこの書類が受理されたことにより、レーア嬢は『ストリア子爵令嬢』ではなくなったよね?それこそ今現在は平民扱いのレーアだ」


 国王陛下の言葉にストリア家の三人があっけにとられた顔をしていると宰相様も続けてきた。


「レーア・ストリア子爵令嬢は全ての事を放棄いたしております。それによりストリア子爵との親子関係が切れましたので先程ベルンハルト国王陛下が印章を押し、正式な書類となった時点で『レーア・ストリア子爵令嬢』は存在しません。陛下の言う通り『平民扱いのレーア』となりますね」

「……いや、そ、そんな!それは……困る」

「困ると言われましても、もう受理されましたので」

 イーヴォ宰相様がとても冷たい声で告げる。


「それに『仕方ない』んじゃないか?だって君達はレーア嬢が作った借金の返済はしないのだろう?それを切る方法は一つしかなかったんだから。お互いに納得してサインしたんだから」

「…い、いやその、しかし先程のサインは……急かされて、慌てていて…その」

 すると陛下はニコリと笑って

「ちゃんとイーヴォがよく読んで、と言っていたよね?まさか子爵ともあろう者が書類の見方がわからない、とかはないはずだし。そんな難しい書き方ではないよね、これ」

 ヒラヒラと書類を振る。


 確かに言っていた、ような気がする。でも


「そ、そのレーアがヨリナス男爵に嫁がないと……我が家の借金が、あ」


 ベルンハルト国王陛下の目が厳しく光る。


「借金?あぁ君の家の借金か。で、その借金は誰が作った借金なの?」

「え?」

 予想しなかった質問に動きが止まる。


「言葉の意味がわからない?簡単に言ったつもりなんだけどな。その借金はレーア嬢が作ったの?そんなわけないよね?彼女は家から出ることはあまりなかったし、夜会でも見かけることはなかったよね?そこにいる夫人と娘は連日のように夜会やお茶会に出てたみたいだけど」

 国王陛下のその言葉に後ろにいる妻とカタリナの顔色も悪くなる。


「ドレスや宝飾品も二人分じゃあかなりの金額だよね?もう一度聞くけど、ストリア子爵家の借金は誰が原因?レーア嬢?」

「……い、いえ、レーアではありません…」


 下を向いて答えるだけで精一杯だ。そうだ、我が家の借金は二人のドレスや宝飾品代が殆どだ。レーアが作った借金など一つもない。


「ならレーア嬢が返す必要はないよね」


 陛下はとてもにこやかにそう告げた。私がでも、と声を出すと後ろから妻が声を上げる。


「いえ、でもレーアが、あの娘がヨリナス男爵に嫁げばそれで我が家は……」


 ベルンハルト国王陛下の瞳がまた光る。


「だから何故レーア嬢が嫁ぐことが前提なんだい?夫人もさっき言っていたじゃないか、レーア嬢が作った借金を何故自分達が返さなければならないのか、って。じゃあその反対も然り、君達が原因の借金を何故レーア嬢が返さなければならないの?ん?」

「……そ、それは…」


 妻の言葉が詰まる。確かにその通りだ。


「レーア嬢が作った借金はレーア嬢が働いて返す。君達が作った借金は君達がどうにかして返す。こういうことだよね、私は何かおかしいことを言っているかな?イーヴォ」

「いえ、至極正しいことだと」


 宰相様も頷いている。どうすれば、どうすればいいんだ、このままレーアがヨリナス男爵に嫁げないとなるとお金が入ってこない。それどころか男爵から契約違反と言われて反対に払わねばならないかもしれない。更に金が出ていくだと?いや、出せる金などない!あとは爵位を返上するしか、いや、それはまずい。自分の代で潰すなどできやしない。一体どうすれば……。



「何か色々考えているようだけど」

 ベルンハルト国王陛下が手を組み直しながらこちらを見る。


「単純な方法があるじゃないか、爵位を返さなくても借金を返せる一番単純な方法が」


 低い冷たく言い放つ声がこの場に響いた。



本日もありがとうございます!


ブクマ付けてくださった方々、ありがとうございます!

評価★★★★★、ブクマお待ちしております!


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