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 全てにサインが終わり、宰相様が確認する。騎士に指示を出したと思ったら扉から文官の格好をした男性と女性が入ってきた。二人真っ直ぐに宰相様の元に向かい、渡された書類を確認する。二人とも頷いたかと思うと国王陛下の元に何か箱のようなものが運ばれる。

 

 三人で何が起こるのか訳がわからないまま立ちすくんでいると、陛下の椅子の横に置いてあった机に書類が並べられる。先程の文官二人が陛下に何かを説明したと思うと運ばれた箱の蓋が宰相様によって開けられ、陛下は中から印章を取り出した。

 

 そして自分が書いた何枚かの書類全てに印を押している。もう一度文官が書類を確認して、揃えて国王陛下に渡した。文官二人はお辞儀をして下がって行った。


「これで無事終了かな」

「そうですね。陛下の印も押されましたし、正式な書類となりました」


 いやー良かった良かったとベルンハルト国王陛下が笑顔になる。思わず声を出した。


「……あ、あの、それでレーアは、娘はいつ頃家に戻ってくるのでしょうか……?」

 

 私が弱々しく発した質問に対してベルンハルト国王陛下と宰相様はこちらを見てから、不思議そうな顔をしながら


「何を言っているのかな?レーア嬢はもう君の家に戻ることはないよ」

「……へっ?」

 思わず変な声が出た。後ろの妻とカタリナも何で?といった顔をしている。


「だって、もう君達とレーア嬢は親子や家族ではないでしょう?戻れないじゃない」

 ベルンハルト国王陛下が軽い感じで告げてきた。いや、確かに親子関係を切る書類にサインはしたが、それは借金の関係だけであって。


「……あ、いえ、そのレーアはもう結婚が決まっておりまして……」

「そ、そうですわ!もう嫁ぎ先も決まっておりますし、来週には彼女は相手の家に行く予定でしたのに。働くというのであれば嫁いだ後でも大丈夫ですわよね?」


 そうだ、レーアがヨリナス男爵の家にとにかく行かないとお金は入ってこない。先払いを頼むにしてもいつまでに嫁ぐか決めないことには金を払ってもらえないだろう。働くのなら、男爵の家から通ってもいいはずだ。そう思っていると国王陛下の瞳が一瞬にして厳しくなったのがわかった。


 一気に背筋に緊張が走った。動けないくらいだ。


「………あぁ、ヨリナス男爵と、だっけ」


 どうやら話は知っていたようだ。ストリア子爵は少しだけ息を吐き、声を出す。


「………あ、はい、そうです、その」

「何で?」


 続けようとした言葉をベルンハルト国王陛下の低い声で遮られた。一瞬にして周りの空気が冷たくなったように感じた。ごくりと生唾を飲み込みどうにか返事をする。


「……な、なんで、とは…」

「何では何でだよ。言葉の意味がわからないのかな?」

「あ、いえ、そんなことは」


 ベルンハルト国王陛下はこちらを見下ろし、さらに続けてくる。


「じゃあ質問を変えるけど、ヨリナス男爵っていくつか知っているんだよね?」

「あ、はい、もちろん」

「十八歳をいくつの人に嫁がせるの?」

「………五…十五歳で…」

「ストリア子爵より年上だよね?そこは了承しているの?彼女は」

「………あ、は…い」


 了承するも何もレーアの意思など今まで確認したことなどはない。今まであの娘は言われた通りにしてきた。だから今回も、と思っていたが……そういえば婚姻の話をした時、何も返事はなかった。何も言わずに部屋に戻っていった。


 いつもそうだった、か?いつもはとりあえず、はい、と返事をしていたのではないか?


 ぐるぐると考えているとベルンハルト国王陛下は妻に問いかけてきた。


「ならストリア子爵夫人に聞くが、自分より三十七も年上で、しかも父親より上の男性に嫁ぐことをどう思う?同じ女性の立場としての意見は?」


 いきなり自分に振られたからか、驚いていたが、一度ごくっと唾を飲み込んでからどうにか答える。


「それは光栄に思いますわ!自分のためにお相手を探してもらって、見つけていただいて。そしてお家のためですもの、文句などあるわけがないですわ!」


 ここぞとばかりに声を出す。


「……ふーん、なるほどね。そこにいる娘も同じ考えかな?」


 カタリナもそう問われ、顔を上げて答える。


「……も、もちろんそうですわ、とても良いお話だと思いますわ!」


 ふーん、と国王陛下は口元に手をあてて何かを考えている。


「君達は娘があのヨリナス男爵に嫁ぐことは良いことだと認めているんだね?」


 確認するような物言いに少しひっかかるところはあったが返事をする。


「も、もちろんですとも!良いお話ですから」

 妻も頷いている。


「なるほどね、じゃあ何の問題もないね」

「そうですね」

 ベルンハルト国王陛下が宰相様に確認をとる。


「そうです!何の問題もごさいません!で、レーアはいつほど」

 戻ってくるのか、と言うところを遮られた。


「―――だから戻ってこないと言っているだろう」


 とても低い冷たい声が響いた。



本日もありがとうございます。

 

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