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「ストリア子爵は我が弟のことを知っているかな?あぁ下のね」

「あ、アルフォンス王弟殿下のことでしょうか?」

「そう。じゃあ彼のことどのくらい知っている?」


 ベルンハルト国王陛下は少し笑っているように見えるが声は笑っていない。恐る恐る答える。


「……どのくらいと申されますと、その、リヴィアニア王国において魔道士部門のトップでこの国の軍部の副総帥様であらせられると。魔力はこの王国最高とも」

「うん、そうだね、正解」


 国王陛下の表情が少し和らいだ気がして、ホッと胸を撫で下ろしたが、すぐさま思い直すこととなる。


「その弟がね、とても怒っているんだ」

「……え?」

 それは、どういう、と言いかけたところで陛下が続けてくる。


「弟だけならまだ抑えられるだけど、彼の婚約者も怒っていてね。あ、知ってるかな?誰かは」

「あ、はい、黒竜様のレーツェル・シュヴァルツ様です……」


 確認されるように話しかけてくる。一体何なのか。背中に冷や汗が流れているのがわかる。


「その通りだ。アルフォンスを抑えられるのはどちらかというと私ではなくレーツェルでね。でもその彼女も怒っているとなるともう誰も弟を止められないんだ」

「……はぁ」


 もう言葉が出ない。


「で、君の娘のレーア嬢のことなんだが」

「あ、はい!何か……」

 ありましたでしょうか、と尋ねたところで陛下は足を組み直す。視線が一段と厳しくなるのがわかった。


「今日、レーツェルの所に来ているよね?」

「あ、はい。呼ばれましたので」

 一体何だろう。私達もそこに呼ばれたのではないのだろうか。どうしてこんな尋問みたないなことになっているのだろうか。


「どうやらレーア嬢は何かを壊したらしくてね。それと必要経費を自分で払うと言っていてね。アルフォンスがそれならば使役させると言っているんだ」

「え?」

 後ろで妻もカタリナも驚いている。


 一体何を壊したのだろうか。そんな弁償しなければならないようなものを壊したのか!アルフォンス王弟殿下やレーツェル・シュヴァルツ様を怒らせるようなものを壊したのか。あれほど言ったのに!だからカタリナに代われと。やっぱりあの娘には王宮でお茶会など無理だったのだ!


 私が下を向いて両手を握りしめて考えていると、後ろから妻が声を出してきた。


「……っその、壊したとは?弁償とはいくらくらいなものなのでしょうか?あの娘だけで賄えるのですか?私達にもいくらか払えと来るのですか?」


 先程の侍従が妻の発言を遮ろうとしたが、国王陛下が大丈夫だ、と指示を出している。


「レーア嬢は自分だけで解決したい、と言ってはいるが、このままでは我が国としては親であるストリア子爵にも請求せざるをえないかな、とは思っている。なぁイーヴォ」

「そうですね。親子関係、身内という方がいらっしゃるのなら、それが一番回収するのに手っ取り早いですからね。家族なのですから何事も助け合わないと」


 国王陛下と宰相様の言葉に三人とも顔色が悪くなる。ただでさえ借金があるのに、これ以上だと?それもあの娘のせいで!自分達には関係ないのに!


「……っレーアが、あの娘が自分で解決したいと言っているのならば」

「そ、そうよ!お姉様が自分で払うなら私達には関係ないんじゃないの?」


 後ろから妻とカタリナが叫ぶ。


「そ、それは如何ほどのものなのでしょうか、我が家は……その…」

 自分が弱々しく尋ねた質問に宰相様が

「まだ詳しい金額は出ておりませんね。これからも増えるかもしれないとの報告はもらっていますが」

 書類をめくりながら答える。


 三人の顔色が悪くなるのがわかる。これ以上の借金は無理だ。なんてことをしてくれたのだ、あの娘は。

 ふるふると手を握りしめて下を向いていると、ベルンハルト国王陛下が声を出してきた。


「父親であるストリア子爵が払えないとなると、イーヴォどうなる?」

 軽い感じで陛下に問われた宰相様は、そうですね、と考えながら呟く。


「現在親子関係なのは間違いないようですから、やはりここは親として責任をとってもらいましょうか。爵位を返上して色々と手続きをして、平民となれば借金は返せるかと」


「……そ、そんな!それだけは……返上だけは」

「そう、そうですわ!なぜあの娘が作った借金で私達が苦労しなければならないのですか?!」


 先程よりかはトーンダウンしているが、妻が反論する。すると陛下が


「つまり、ストリア子爵は娘レーアの借金を肩代わりはできない、と」

「そ、そうです、そうです」


 なら、と陛下は宰相様と顔を合わして頷く。


「そなたら三人がレーア嬢の肩代わりをしなくてもよくなる方法が一つだけある」


 方法がある、と聞いただけで、三人の顔色は戻っていく。


「それは……どういった…その何をすれば」

 よろしいのですか?と尋ねると陛下はニコリと笑って


「なに、簡単なことだ。親子関係を切ればいいだけだ。なぁイーヴォ」

「そうですね。書類上そうなれば、そちらの三人とレーア嬢の間での共存関係はなくなりますので、一切関係なくなるかと」


 宰相様が何かの書類を出してきた。右手にヒラヒラとさせながら


「こちらは親子関係を切る書類となります。これから先お互いに共存関係は無くすということになります。レーア嬢から迷惑をかけたくない、との申し出で書類を作成させていただき、彼女からのサインはすでにいただいております。あとは唯一の関係者であるストリア子爵よりサインをいただければ正式な書類となります」


 と説明される。すでに準備されていたのか。親子関係を切る、という言葉に少し引っかかったが、これ以上の借金は我が家の存続にかかわる。それもあの娘のせいだなんて。まぁ使役させてもらえて、返済できるのならそれでいいか。こちらに火の粉が飛んでこないならそれで。ヨリナス男爵には訳を話して嫁ぐのは少し延期にしてもらわねばならないが、先払いをお願いすればいいか、と考えていると、後ろから妻とカタリナが


「旦那様、早くサインを!あんな化け物みたいな娘のために苦労させらるなんてまっぴらですわ!何故あの娘が作った借金を私達が返さねばならないのですか?!」

「そうですわ!お父様、早くサインをしてくださいな!」

 と、せかしてくる。確かにそうだ。なんで私達が苦労しないといけないんだ。一歩前に進むと宰相様が書類を目の前に広げた。


「よくご確認の上、サインをお願いします」


簡単な机とペンも準備され、何箇所かサインをした。


 ベルンハルト国王陛下と宰相様は何も言わずにずっと見ていた。




本日もありがとうございます。


思ったより長くなってしまいました。

もうちょっとお付き合いくださいませ。


よろしければブクマ、評価★★★★★、お願いいたします。


明日もお待ちしております。

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