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6.二つ目のスキル

「ところで、リーフのスキルってどんなのにゃ?」


 リーフと番になった次の日の朝。

 皆で朝ごはんを食べながら会話をしていると、ミィがリーフに尋ねた。

 そういえば番になるとスキルが使えるようになるんだったな、確かに俺も気になるところだ。


「ああ、私のスキルは【加速】だ」


 【加速】……戦闘面ではスピードが上がるという事だろうし、探索面でも行動範囲が広がるし敵からも逃げやすくなるし、かなりいいスキルだなと思う。

 加速できる限界とかそういうのはあるんだろうか、と考えているとリーフが続ける。


「その名の通り、対象を加速させることができる。私がウインドドラゴンから逃げられたのもこのスキルのおかげだ」

「なるほど、自分を加速してウインドドラゴンの追跡を振り切ったのか」

「ああ、追いつかれれば確実に殺されると思い、その時出せる最大出力でスキルを使った。おそらく羽ばたき1回で2つの山を越えるぐらいに加速できたと思う」


 おいおいおい、どんなスピードだよ、目で追えないぐらいに加速してるんじゃないのか?

 しかし、ウインドドラゴンから逃げられたのも納得がいくレベルのスキルだ。


「しかしあまりにも加速を強めたためか、途中で魔力切れを起こして力尽き、ゴローたちが助けてくれた場所で倒れてしまったのだ……」


 魔力切れ。

 魔法やスキルを使うには魔力が必要であり、力が強いほど消費される魔力量も多くなる。

 魔力は言わば精神力、使いすぎると精神を擦り減らしてしまい、最悪の場合は意識を失ってしまう。

 時間が経つと少しずつ回復する他、魔力ポーションなどのアイテムを使うことでも魔力は回復する。


 ちなみにスキルには2種類あり、任意発動型スキルと常時発動型スキルに分けられる。

 俺の【言語翻訳】は常時発動型スキル。

 リーフの【加速】やミィの【身体能力強化】は任意発動型スキル。

 常時発動型は常に発動しているが魔力消費はほぼなく、自然回復の方が上回る程度の消費量だ。ただし、常時発動している分、任意発動型に比べて効果が低いものが多い。

 任意発動型は任意のタイミングで発動させるスキルで、魔力消費量は多いがその分威力も高いものがほとんどだ。


 リーフの場合、任意発動型のスキルの出力を高め過ぎたために魔力切れを起こしてしまったのだろう。

 それでもウインドドラゴンに追いつかれるよりも、一か八かの賭けに出た方が助かる可能性は高いはずだ。


「もしゴローたちが助けてくれなかったらあのまま死んでいたと思う、改めて感謝する。……ありがとう」


 深々と(こうべ)を垂れるリーフ。


「困ったときはお互い様だし、今はもう家族なんだ。頭を上げてくれ、リーフ」

「そうにゃ、ゴローと番ならミィとも家族にゃ。ミィおねーちゃんって呼んでくれてもいいにゃ」

「……どちらかと言うとミィが妹じゃないか?」

「にゃっ……!?」

「ふふっ……」


 俺とミィのやり取りに微笑むリーフ。

 まだ心の傷は癒えないだろうけど、少しずつでも和らげていけたらなと思ったのだった。




 結局年齢の差でミィが妹、リーフが姉という形になったのだが、ミィが12歳、リーフが15歳と聞いて驚いた。俺は自分自身が何歳かは覚えていないが、おそらく成人……たぶん18歳以上だとは思う。

 だからこの年齢差だと下手するとロリコ……いや、元いた世界とは成人年齢も違うだろうし、これ以上言及するのはやめておこう。




**********




「今日はちょっと探索がしたいにゃ」


 朝食を食べ終わるとミィが提案をする。


「確かに狩場が一つだとそのうち足りなくなるし、この家の周りをじっくり探索して新しい狩場を見つけるのもいいかもしれないな」

「そうにゃ、それに新しい獲物も見つかるかもしれないにゃ」


 いつも食べている獲物はバトルボアという、イノシシをより好戦的にしたような動物だ。

 そこそこの図体で可食部も多いが、好戦的なため筋肉が発達しており、肉が硬めなのが少し難ありである。

 それでも調理をすることで美味しく頂けるので、我が家の人気第一位の食材になっている。

 しかし最近同じ場所で狩っているため、警戒しているのか数が減ったのか、姿を見かけづらくなってきた。

 ブタみたいに家畜として飼育できればなあ……とは思うが、それをするにはまずエサが足りない。

 畑は広大だが野菜を育てる時間を考えると、供給が追い付かなくなる可能性もある。

 そのため、新しい狩場を探すのには俺も賛成だ。


「じゃあ俺とミィが地上を、リーフは空から偵察をお願いできるかな?」

「了解にゃ!」

「分かった、情報を交換したい時は合図を送って欲しい」

「そうだな、確か倉庫に笛があったはずだからそれを合図にしよう」


 こうして、それぞれが準備を進め、家周辺の探索を行うことになった。

 ミィは目をキラキラさせ、とても楽しみそうにしている。


「がんばって狩場を見つけて、ゴローにたっくさんなでなでしてもらうにゃ!」


 ……ミィさん、欲望だだ漏れですよ。




**********




「家の南側は崖、西側は温泉、北はいつもの狩場だから……今回は東だな」


 南側は崖のため風通しがよく、木も少なくて日当たりもよいため、絶好の立地条件だ。

 また、畑や果樹園も南側に広がっており、少し東に川が通っているため水やりも楽にできる。

 

 西側に少し行くと温泉があり、一日の疲れを癒す憩いの場となっている。

 家より小高くなっており、温泉に入りながら風景を眺めることができ、一年の季節の移り変わりによる山の衣替えが今から楽しみだ。

 ちなみに温泉の西側は山になっており、その山肌から源泉が流れ出てきている。


 北側は森になっていて、狩場の平原まで行くには獣道を通る必要がある。

 最近は道を踏み固めたり、草を伐採して通りやすく改良したりしているが、本格的な整備はこれからだ。


 東側は今のところ未踏の地となっている。

 リーフが空から偵察したところ、東に進むにつれて少しずつ標高が上がっている……つまり坂になっているらしい。

 北側の平原に比べて木が多く、上空からでは地上を把握しづらいため、歩いて探索することになった。

 ほぼ高低差のない北側に比べて探索はしづらいだろうが、食べ物のためだ、がんばろう。




**********




「ゴロー! こっちにゃーっ!」


 遠くから俺を呼ぶミィの声がする、どうやら何かを見つけたようだ。

 大きな声を出すということは、おそらく獲物ではない何かだろう。

 俺は足早にミィの元へと駆け出した。


「あっ、ゴロー! これ……!」


 ミィが指し示す先には大きな横穴が口を開けていた。


「これは……何かの巣穴か、それとも……」


 中を覗き込もうとするが、木々の陰になっていて光が届かず、一寸先は闇となっている。

 この横穴に入って確認しようにも、あいにく松明などの明かりを灯すものは持ち合わせていない。


「こんな横穴があったとは……」


 俺たちが横穴を観察していると、空から周囲を警戒していたリーフも合流する。

 リーフによると、現在この周辺では動物などの動きはないらしい。


「となると、この穴は動物たちの棲み処ではないんだろうか」

「……周辺を見た所、動物の足跡もない。ゴロー、ミィ、ここまでの道のりで獣道は存在したか?」

「いや、そういえばなかったな……流石だなリーフ、よく観察してる」

「ミィの方にもなかったにゃ、リーフは賢いにゃ……」


 耳を垂れて少ししょんぼりするミィ。


「でもこの横穴を見つけたのはミィのお手柄だ、ありがとうな」


 そんなミィを励ますように俺はミィの頭に手を置き、優しく撫でる。


「ふにゃあああああぁぁぁ……」


 するとミィの表情は一変。恍惚とした表情に変わる。

 まあ出発前に「たっくさんなでなでしてもらうにゃ!」って言ってたし、言葉通りたくさん撫でてあげよう。


「こうなるとこの横穴の中が気になるな……でも、松明とか持ってないんだよなぁ」


 ミィを撫でながら横穴を覗き込む。

 場所は分かったので一旦引き返すのもありなのだが、どうしても気になってしまう。


「そういえば、ゴローはリーフを助ける時にヒーリング使ってたにゃ。もしかしたら光源魔法(ライト)も使えるんじゃないかにゃー?」


 そういえば、ゲームとかでは光魔法にそんな魔法があったな……ヒーリングが使えることもすっかり忘れていた。

 ものは試しだ、ちょっと洞窟の中で使ってみよう。


「と、その前に……念のため、と」


 ミィを撫でるのを止め、足元の石を拾って横穴の中へシュッと投げ入れる。

 中で石が落ちる音が響き、しばらくしてシンと静まり返った。

 そして中から何かが出てこないかを警戒した……が、何も出てくる様子はない。


「おそらく中にはモンスターのようなものはいないはずだ、普通ならこれで出てくるだろうし」


 縄張り意識の強いモンスターや動物なら石を投げ入れたら縄張りが荒らされたと思い、出てきて迎撃するだろう。

 それがないという事は、この中には何もいないという結論になる。


「じゃあミィとリーフはここで周囲を見張っててくれ。俺は光源魔法(ライト)が使えないか試してみる」

「わかったにゃ!」

「わかった、気を付けて」


 二人に見送られると光の届かないところまで歩を進め、意識を集中させた。


「もし俺に光魔法を使える素質があるなら……暗闇を光で満たしてくれ、光源魔法(ライト)!」


 俺がそう言うと、光が俺の手に集まり、辺りを照らし始める。


「わー……すごいにゃ」


 突然横穴の中が光り出したのに反応してミィがこちらを覗き込む。


「どうやら本当に使えたみたいだ、ありがとうなミィ」

「ふっふーん、どういたしましてにゃ!」


 腰に手を当てて胸を張ってご満悦なミィ。

 仕草がいちいちかわいいな。


「それじゃちょっと中を探索してくる、二人は外を頼む!」


 二人に引き続き外を任せると、俺は横穴の奥へと向かっていった。

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