40.過去の真実
本日二度目の更新です。
未読の方は一話前からどうぞ。
「ど、どういうことにゃ!? 光のドラゴンとゴローが……知り合いにゃ!?」
「それに今、神様とか聞こえたのだが……?」
ミィとリーフを始め、みんな驚いているようだ。
それもそうか、ドラゴンたちでさえ素性をあまり知らない、光のドラゴンと面識があったのだから。
『ふむ……混乱しておるようじゃのう……それでは、過去の真実を語らねばなるまい』
「過去の……?」
『千年以上も前の、勇者と魔王の戦いのその後からじゃな……』
「勇者と魔王は戦い、勇者が勝ち、今の中央国となる基を作ったのでは……?」
そして、その際にアグニたち四属性のドラゴンを倒し、力を持つ国などを滅ぼすように『願い』を叶えたという認識だ。
『いや……勇者は負けたのじゃよ』
「!?」
『勇者は今のゴローのように、カースドラゴンに取り込まれて命を落としたのじゃ』
「しかし、それなら勇者が勝ったという今の歴史は……?」
『変装したのじゃよ、魔王が勇者に、な』
魔王が勇者に変装……!?
いや、でもそれならドラゴンに力を持つ国を滅ぼすように仕向けたことに合点がいく。
『表向きは魔王は倒され、勇者は世界を救って姫と結婚し権力を持った。しかし、本当は魔王が人間の国を乗っ取る策略だったのじゃよ』
「どうしてそんな回りくどいことを……?」
『カースドラゴンが本来の力を発揮するには、大量の怨みや憎しみが必要じゃった。じゃから、魔王は自国に攻め込まれるまで勇者の相手をしなかった。勇者に倒された魔物たちの怨みや憎しみを集めるためにのう』
そして、集めた怨みや憎しみを使い、俺のように勇者を呪い殺した……。
「カースドラゴンの力を使うために魔物がいなくなったから、人間の国を乗っ取ろうと……」
『そうじゃ。それに国を滅ぼすのにドラゴンたちを使ったのは、魔物ではなくドラゴンに憎しみを向けさせるため、そして国を滅ぼすことで瘴気を発生させて魔物たちを復活させるためだったのじゃ』
「しかし……そうなっても、どうしてあなたは動かなかったんです?」
『……勇者が魔王に敗れたのには原因がある。それは……儂が勇者を見放したからなのじゃ。勇者は武力こそ強かったものの、その武力を使い私腹を肥やし、旅の先々で女子を侍らすようなり……とても英雄と呼ぶには相応しくない素行じゃった』
そうか、俺が神様と出会った時に今までの転生者が『世界の理すら変えてしまうほどのスキルを所望した』ことに呆れていたのは、それが原因だったのかな。
『本来、儂の加護があればカースドラゴンの呪いは無力化できる。しかしその加護がなくなったことにより、勇者は魔王に敗れたのじゃ』
「勇者の自業自得……ということですかね」
『……。そして、その後は瘴気が世界中に満ちていった。光の存在である儂は徐々にその瘴気により力を奪われ、世界に手を出せなくなっていったのじゃ。』
「しかし、どうして今はその力を発揮できたのでしょうか?」
そう、力が失われたのなら今ここに顕現できているのはなぜなのか。
アネットがゴブリンに、フィーリアがミノタウロスの大群に襲われたように、まだ世界に瘴気が満ちているはず……。
『それは……ゴローのおかげじゃな』
「俺の……?」
『そうじゃ、中央国の亜人を解放したことで亜人たちに希望を与えた。更にドラゴンたちを解放し、その真実が世界に知れ渡った結果、ドラゴンに怯えずに暮らせると知って、人々も希望を持って暮らすようになったのじゃ』
「だから世界から瘴気が減っていって……?」
光のドラゴン……神様が頷く。
『しかし、中央国の王族は魔王の子孫。その者たちは長い年月の間に魔力は失われたものの、カースドラゴンの加護は失われなかった。そして中央国の者たちのゴローへの恨みが募り……カースドラゴンが再度顕現したのじゃ』
「そして俺がカースドラゴンに取り込まれ……そこをあなたが助けてくれたのですね。ありがとうございます」
『いや……礼を言うのは儂の方じゃ。まさか、あの無欲な青年がドラゴンを倒し、亜人たちの村を作るようになり、世界から瘴気を薄れされるとはのう……』
「偶然ですよ、俺も彼女たちと会わなければ……独り、のんびりと過ごしていたでしょうし」
色々な人との出逢いが、今の俺を作ったんだ。ミィたちには感謝しないとな。
『そうか……。さて、儂はこれから世界を巡り、瘴気を取り除いていく。魔王の血族も途切れ、カースドラゴンはもう二度と復活しないじゃろう。……この平和になった世界で、お主はこれからどうする?』
「もちろん……みんなが笑って暮らせる、幸せな町を作ります」
『それを聞いて安心した。ゴローよ、世界から瘴気を消し去れたら、また会おう』
神様が、翼を広げ飛び立っていく。
それを俺たちは姿が見えなくなるまで見送った――。
**********
「うう……ゴロー、本当によかったにゃあ……」
「まったくでス……本当に死んでしまうかと思ってしまいましタ……」
「……みんな、心配かけてごめんな」
その後、俺はみんなからもみくちゃにされてしまうのだが、これは俺の責任だ。甘んじて受けよう。
……そして。
「……返事もしなきゃな」
「? ゴロー、それはどういうことにゃ……?」
俺は、隠れてこっそりと帰ろうとしているルセアの腕を引っ張り、抱き寄せる。
「ルセア、俺も君が好きだ。俺と番になって欲しい」
「~~ッ! ジ、自分ナンカデ、ヨロシケレバ……」
「なんか、じゃない。ルセアだからいいんだ」
「……ハイ……デ、デモ、皆ノ前ダト……ハ、恥ズカシ……」
かわいいことを言ってくれるルセアの顔を逃げられないように捕まえ、喋れないように口で口を塞ぐ。
「ウゥ……ゴロー、少シ、イジワル……デス」
そう言いながらも、尻尾をぶんぶんと振って喜びを身体で表現するルセア。
そんな彼女が愛おしくて、もう一度抱き寄せて口付けをする。
「あーっ、二回もずるいにゃー! ミィも、ミィもー!」
「ぱぱ! そのつぎはスー! スーもーっ!」
番になるには一度でいいのに、二回もしたものだからみんなから声が上がる。
「ははは、それじゃあ順番にな」
脅威は去り、いつもどおりの日常が戻ってくる。
でも、町の発展などはまだまだこれからが正念場だ。
それでも、みんなと一緒なら絶対にいい町を作ることができると。
そう思いながら、爽やかに晴れた空の元、みんなと口付けを交わすのだった――。




