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2.家に帰って

「ふにゃぁぁぁぁ……すごくおいしかったにゃ……」


 ミィはお腹いっぱいご飯を食べてご満悦の様子。

 ……どうしてこうなっているかというと、番になるために家に帰って来たのだが、着いた途端に安心したのかミィのお腹の虫が鳴ってしまったのだ。

 そこで、家にある食糧でありあわせのご飯を作ってあげたのだが、これがミィに好評で「今まで食べたことないおいしさだにゃ!」と言いつつ、3人前ぐらいの量をペロリと食べきった。

 こんな簡単なもので喜ばれるなんて、モンスターと人間で食べる物が違うのかな。


「旅をしてたらどうしてもその場その場で取れるものしか食べられないから……幸せにゃあぁぁぁ……」


 そう言って満面の笑みを浮かべるミィを見ていると、こっちも幸せな感じがしてくる。

 自分の感情をそのまま出してくれるミィだから、自然とこちらの口角も上がる。


「それにしてもおっきい家だにゃー……」


 食事を終えたミィが、不思議そうに家の中をキョロキョロと見回す。

 耳を立てて物音にも注意を払いながら、いろいろと観察しているようだ。


「ゴロー、音がしないんだけど他に住んでる人間さんいないにゃ?」

「そうだな、俺一人なんだけど……」

「そうにゃの?」


 ミィが疑問に思うのも不思議ではない。

 これだけ広い家に一人暮らしで、しかも食料が潤沢、畑も広大で……。

 手入れのことなどを考えると、誰かが一緒に住んでいてもおかしくない状況だ。


「ちょっとね、前は別の所に住んでたんだけど、譲ってもらったんだ」

「ふーん……こんないい家をくれるなんて、神様みたいだにゃ」


 ミィの発言に内心ドキリとした。

 比喩ってことは分かるけど、神様にもらった家であることに間違いはないし。


「まあ、確かに神様みたいな人だったな」


 神様だけど。

 比喩とかではなく本当の神様だけど。

 まあ、転生のことを説明しても信じてもらえそうにないし、軽く流しておくことにする。


「ああ、あと近くに温泉も湧いてるから、入りたいなら案内するよ」

「温泉にゃ!?旅の疲れが癒されそうだにゃあ……」


 ミィが目をキラキラさせる。

 前世の世界の猫はお風呂嫌いな子もいたけど、ワーキャットはそうじゃないんだな。


「じゃあ、ちょっと替えの服とかタオルとか用意するからちょっと待っててね」

「はーい、にゃ!」




 **********




「ほら、こっちこっち」

「わぁ……すごいにゃ……」


 家から少し離れたところにある温泉。

 面積はかなり広く、10人ぐらいなら軽く入れるぐらいの大きさだ。

 家よりも少しだけ高いところにあり、見晴らしも良い。

 この付近はいつも湯気が立ち上り、近づくだけでもちょっとした熱気が襲ってくる。


「早速入るにゃ!」


 と言うや否や、ミィは服を脱ぎ始める。

 いくら番になるとはいえ、裸になることへの抵抗が無さ過ぎではないだろうか……。

 俺は咄嗟にミィから視線を外し、大事なところは見てない、見えてない、見えませんでした。


 しばらくして脱ぎ終えたのか、ミィが湯船に入る音が聞こえてきた。


「ねー、ゴローも一緒に入ろうにゃー」

「ぶっ!?」


 思わず吹き出してしまった。

 確かに番になると言ったとはいえ、急接近すぎませんかねミィさん。

 と、思わずさん付けにしてしまうほど、俺の心がかき乱される。

 天真爛漫でいいんだけど、もうちょっと羞恥心をですね。


 などと考えると急にぐいっと服が引っ張られる感覚がして……。


 ザパーン!


 水しぶきを上げて、俺の身体は温泉の中に引きずり込まれていた。


「あのぅ……ミィさん……?」

「えへへー、やっぱりゴローと一緒がいいにゃ……」


 ミィがぎゅっと俺の背中側から抱きしめてくる。

 当たる! 当たってる! 当たってますよミィさん!

 服越しだからまだなんとか耐えられたものの、これが裸だったらと思うとぞっとする。


「……あのね、実は異種族の人と番になれるのって、滅多にないことなんだにゃ……」

「そう……なの?」

「言葉が通じないから、この人だ!って思っても相手に伝わらないし、襲われたと思って返り討ちにあうことも多いのにゃ……」


 それもそうか。

 俺もミィの言葉が分からなかったら、ミィの気持ちに気づかず、追い返していたかもしれない。

 普通の人なら、モンスターに襲われたと思って必死に抵抗をして、最悪……命を落とす可能性もあるだろう。


「だから……ゴローが番になるって言ってくれて、ミィ、ゴローのことが大好きになっちゃったにゃ……」

「ミィ……」


 ミィの方を振り返ると、ほんのりと顔の赤みが増していた。

 温泉のせいではなく、自分の気持ちを伝えたから。

 なら、俺もミィの気持ちに応えなければ。


 俺はミィの方に身体を向き直し、じっとミィを見る。

 ミィはこれから何をするのか察したのか、微笑んで目を閉じる。

 そして――。




 **********




「あー、いいお湯だったにゃー!」


 しばらく温泉を堪能したあと、辺りが暗くなる前に俺たちは温泉から出て、家へと帰ってきた。

 番の契りを結んだから、ミィはとても嬉しそうな表情をしていたな。

 俺の腕に抱き着いて歩くものだから、動くたびにミィのマシュマロが腕に当たって別の意味で大変だった。

 一緒に温泉に入って裸の付き合いをしたとはいえ、出会って初日だからまだまだ慣れない。

 というか、出会ってすぐに番って今考えたら凄いよな……。


 ちなみに、万が一のことを考えて俺の分の着替えも持って来ていたため、びしょ濡れのまま帰宅とはならずに済んだ。

 お湯をかけられる、ぐらいの想定だったんだけど、まさか引きずり込まれるとは。

 まあ、これも一つのいい思い出になるだろう。


「あれに毎日入り放題だにゃんて……はふぅ……」

「ははは、ミィは温泉をかなり気に入ったみたいだね」


 ミィは温泉をいたく気に入ったらしく、毎日どころか1日3回は入ると宣言した。

 戦闘訓練で汗だくになることもあるだろうし、うってつけだったのかもしれない。


「ところでゴロー、身体に何か変わったことないかにゃ?」

「変わったこと……?それってどういう……」

「実は番になると、相手の持ってる特別な力……スキルって言うらしいんだけど、それが使えるようになるって聞いたにゃ」




 **********




 ミィの話をまとめるとこうだ。


 番になると、相手のスキルを使えるようになり、相手側の言葉が分かるようになる。

 例えば、俺はミィのスキルを使えるようになり、ワーキャットの言葉を話せるようになるらしい。

 話せるようになると言っても意識して発動するものではなく、喋った言葉が相手側の言葉に自動的に翻訳されるシステムのようだ。


 ただし、同じ種族で番になった場合、スキルが相互に使えるようにはならない。

 なぜこういうシステムになっているのか理由は不明だが、そういうものと捉えられているようだ。


 そして特殊な例としてはハーレムだ。

 ハーレムを形成して複数の番が成立した場合……例えば俺がA、ミィがB、他の子がCとしよう。

 AとB、AとCがそれぞれ番になった場合、AはBとC、どちらのスキルも使えるようになる。

 しかしBとCはどちらもAのスキルが使えるようになるだけで、BはCのスキルが使えるようにはならないし、逆もまた然り。


 このハーレムを形成した者は、多種多様なスキルが使えるようになるので、歴史に名を残すことが多いらしい。

 しかし言語の壁もあり、ハーレムを形成するのは並大抵の者では成し得ないとも言われている。




 **********




「ふーん、番になることでそういうことが……」

「だからミィもゴローのスキルが使えるようになってるし、ゴローもミィのスキルが使えるようになってると思うにゃ」

「なるほど、だから俺に変わったことがないかって聞いたのか」

「そうにゃ、ちなみにミィのスキルは【身体能力強化】にゃ」


 言われてハッと気づく。

 ミィが俺にした最初の突進、あれは桁外れのスピードだったのだがもしかして……。


「ということは、最初に会った時のあの突進って……」

「そうにゃ、あれはスキルを使ったにゃ、絶対に絶対に逃がしたくないって思ったからにゃ……」


 やはり。

 となると俺にもああいう感じの強化ができるようになってるのか。


「ちなみに、どうやって使うんだ?」

「ちょっと慣れがいるけど、強化したい身体の一部をイメージして、力を解き放つ感じ……ってミィは教わったにゃ」


 なるほど、ミィのあの突進は足を強化するイメージをしてスキルを使い、脚力を強化したのか。

 応用すれば腕力なども強化できそうで便利だな。

 スキルを使った後にミィに変わった様子はなかったし、デメリットはなさそうかな。

 だとしたら俺も使えるようになっておけば、狩りや探索などで役に立ちそうだ。


「じゃあ明日ちょっと練習してみようかな、ミィ、付き合ってくれる?」

「もちろんにゃ! 大好きなゴローと一緒に訓練、楽しそうだにゃ」


 笑顔で承諾してくれるミィ。尻尾もぶんぶんと振ってとても嬉しそうだ。

 そして、面と向かって大好きという気持ちを真っ直ぐ伝えてくれるミィに、こちらも頬が緩む。


「ところでゴローのスキルってどういうスキルなんにゃ?」


 そういえば、俺のスキルってなんだろう。

 神様にお願いしたのは【動物に好かれる】スキルなんだけど、まだ実践できてないし。

 あ、でもミィの言葉が分かったし【言語翻訳】スキルも持ってるかもしれない。


「たぶん、【言語翻訳】スキルかな。ほら、ミィの言葉も分かったでしょ?」

「なるほどにゃ!じゃあ使えるかどうかは他の種族の子がいないと分からない感じにゃ?」

「そうだね、また他種族の子と会えたら確かめてみよう?」


 ミィは俺の言葉に頷く。

 【動物に好かれる】スキルも確かめられたら教えてあげよう。


「じゃ、今日はもう寝ようか?」

「確かに、お腹いっぱい食べて、あったかい温泉に入って、ちょっと眠たくなってきたにゃ……」

「じゃあ空いてる部屋をミィの部屋にして……」

「ゴローと一緒がいいにゃ」


 え?


「番になったんだから、ゴローと一緒のお布団で寝たいにゃ」


 あー、確かにそうですね。

 番になった……要するに結婚しましたもんね。


 一緒に寝るというのはそういう意味ではないんだろうけど。

 かわいい女の子が隣にいて、寝れるだろうか俺……。


「じゃあ部屋に行こうか……」

「はーい、にゃ!」




 結局緊張し過ぎて、その夜俺が眠れたのはミィが眠りについて数時間後のことだった……。

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