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15.ルゥのスキル

 転生者であることをみんなに告白して数日。

 今までと特に変わりなく……いや、どちらかというと今まで以上にみんなと仲良くできている。

 隠し事が一切ないという関係もいいものだな……。


 などと思いながら、ルゥのところへ蜜を取りに来ている。


「あっ、ゴローさん……じゃ、じゃなくて……ゴロー……」


 ルゥが赤くなりながらも俺の名前を呼ぶ。

 番になったんだからさん付けはいらないよ、と言ったのだがどうもまだ慣れないらしく、少しぎこちない。

 でも、そんなところが魅力なんだよな、ルゥは。


「いつもありがとうな、ルゥ」

「い、いえ、わたしがお役に立てるのであればなんでもしますからっ」


 お礼を述べながらルゥの頭を撫でる。

 ルゥは恥ずかしさのあまり俯きながらも、頭を俺に預けてくれる。


 しばらく撫でてあげたあと、ルゥから蜜を水瓶に移してもらいながら会話をする。

 ルゥは川の近くに根を下ろしているため、会話をする機会は他の子に比べて少なくなりがちだ。

 だからこうやって会う時にはいろいろな話をしている。


「そういえば、ここの川の水はアルラウネにとっていい水なの?」

「そうですね……魔力が含まれているのもあってとても美味しいです」

「魔力が……?」


 そういえばレムが温泉には魔力が含まれていると言っていたが、この川もそうなんだ。


「おそらく上流に何かがあると思います、亜人の子か、それとも……」

「なるほど、その子が水に魔力を与えてくれているのかも。もしそうならお礼に行きたいな」

「ゴローさ……ゴローは優しいですね、そんなところが……その、好きなんですが……」


 顔を花弁のように真っ赤にし、手で顔を隠しながらも本音を言ってくれているルゥ。

 面と向かってだと相当恥ずかしいだろうに、それでも言葉にしてくれるのはとても嬉しい。

 言葉にしないと伝わらないことも多いから。


「ありがとう、ルゥ」


 俺もそれに応えるように、しばらくルゥの口を塞ぐ。

 口を離した時にはルゥの顔はそれまで以上に紅潮していた。


「……え、えへへ……本当に愛されてるって、こんなにも嬉しいものなんですね……」

「それは俺も同じだよ。正直、スキルのことを話したときはみんなに嫌われるんじゃないかって思ってたから、今まで通り……いや、今まで以上によくしてもらって……」

「それはゴローが優しいからだと思いますよ。ここまで亜人に優しい人間なんて、そうそういませんから……」


 やっぱり俺はこの世界の基準だと異端なようだ。

 以前の世界の知識を持っているからかもしれないが、敵意がないと分かれば仲良くできそうなものなんだけど。

 言葉が通じない動物でも、人間のパートナーになれるんだから。


「ありがとう、ルゥ。……そういえば、ルゥの持ってるスキルって何か教えてもらえる?」

「あっ……はわわ、すっかり忘れてましたっ! ごごご、ごめんなさい!」


 あまり褒められすぎるのもむず痒いので、話題を変えてみることにした。

 実際に気になっていたことではあるんだけど。


「わ、わたしのスキルは【光合成】です。日光を浴びることで体力と魔力が自動的に回復するスキルですね」

「そういえば最近、日中に疲れがあまりないなと思ってたら……そういうことだったんだ」

「少しのキズならすぐに塞がります。でも、雲で太陽が隠れると効果が薄くなったり、効果がなくなったりしますので注意してくださいね」

「分かった、ありがとう。それじゃ、蜜を持って帰って夕食にするね」

「はい、またがんばって作っておきますね」


 俺は見送ってくれるルゥに手を振り、帰路についた。


 ……しかし【光合成】か……葉緑体も持ってないのにできるものなんだな……。

 今の俺、人間なんだろうか。それとも植物なんだろうか。

 まあ、ルゥみたいに人間と植物とどっちの性質も持つアルラウネのような子がいる世界なんだ。

 向こうの世界の常識なんて当てはまらなくて当然……かなあ……。




**********




「お帰りにゃ! ゴロー、蜜、蜜が欲しいにゃー!」


 帰ってくるなり、入口でミィが蜜をねだってくる。

 この蜜が相当なお気に入りらしく、いつも一番に食べたがるのがミィだ。


「はいはい、パンを用意するから待っててね」


 ぽん、と手をミィの頭に置き、なだめるように撫でまわす。


「ふにゃあ……わかったにゃー」


 ミィを落ち着かせるとパンを台所から持ってきて、みんなに切り分ける。

 そしてルゥの蜜を塗って……サラダとお肉も用意して……。


「それじゃ、いただきます」


 みんなで食卓を囲み、それぞれ今日起きたことを話しながら夕食にする。

 俺はルゥのスキルについて話したんだけど、レムがとても驚いたような顔をしているのに気づく。


「どうしたの、レム?」

「い、いエ……そういった自動回復スキルは割合回復というのが多いのですガ……」


 割合回復。

 体力総量や魔力総量の何パーセントかの回復ってことかな。

 それが常時発動しているとなると、結構な回復量になりそうだ。


「レムが驚いているのは分かる。なにせ、ゴローの魔力総量は魔術師9人以上だからな」

「えっ!?」


 嘘だろ……そんなに俺の魔力あったの……?


「なんでぱぱがおどろいてるの?」

「い、いや……俺、自分の魔力総量すら知らないから……」

「鑑定魔法があれば分かるのですガ、持っている人はほとんど見かけませんネ」

「何にせよそんな総量なんだ、自動回復する量もとんでもない量になるだろう」


 そうか、下手するとほぼ消費なしで魔法やスキルを乱発できるのか……。

 特に【岩石生成】は攻防どちらにも使えるから、かなり有利に戦いを進められそうだ。


 ……もっとも、戦いなんてしたくはないんだけど。

 それでもみんな……家族が危険に晒された時は、俺がみんなを守りたいとは思う。

 万が一の事態にはとても有用なスキルだな。


「ゴローはいったいどれだけ使えば魔力切れが起こるのか分からないにゃー」

「本当に、規格外だな」

「ぱぱ、すごーい!」

「ははは……ありがとう」


 しかしまあとんでもないスキルをたくさん持ったものだ。

 それもこれもみんなのおかげなんだけど。


「……話は変わるけど、ルゥの近くの川のことなんだけど――」


 俺はあの川に魔力が流れていることをみんなに伝え、できれば上流にいるであろう亜人にお礼を述べたいと相談した。

 それなら、と次の日にリーフが空から川を辿り、様子を見てきてくれることになった。


「そ、その代わり……終わったら頭を撫でて欲しい……」

「リーフ、ゴローにはもっとガツガツいかないとダメにゃ。なでなでだけじゃなくてもっといろいろして欲しいって言わなきゃダメにゃー」

「……ミィさんハ、ちょっと積極的過ぎますネ」

「ぱぱー、スーも! スーもなでなで!」


 いつの間にか俺のひざの上に移動してきたスーまでおねだりを始める。

 ……平和だなぁ。




 そして翌日、偵察から帰ってきたリーフから、川の上流にウンディーネという水の精霊に近い亜人がいることを聞かされた。

 しかし、それ以上に驚くことがリーフの口から発せられた。


 「ウインドドラゴンの気配がする」と。

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