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14.ごめんなさい

 俺が望んだスキルは『動物に好かれやすい』ではなく『人間以外に好かれやすい』。

 このスキルのせいで、ミィを始めとした子たちが俺を番の相手として認識してしまっているのではないか。


 そう思い、みんなを集めて俺が転生者であること、神様から『人間以外に好かれやすい』スキルをもらったということなどを洗いざらい話し、土下座して謝罪した。


 ――はずだったのだが、なんでこんなことに!?




**********




 場所は温泉。

 周りはどこを見ても一糸纏わぬ姿の女性陣。


 原因は俺が謝罪した時にミィが放った一言。


「そういう時は、裸の付き合いがいいって聞いたにゃ!」


 ……ということで、俺、ミィ、リーフ、レム、スー、ルゥの6人で温泉に浸かっている。

 いや、ルゥは植物と身体が一体化しているので温泉には入れないのだが。


 ……それにしてもどこを向いても肌色面積が多いので、思わず目を閉じたくなる。

 でも、ここは俺のしたことにちゃんと向き合ってみんなと話さないと……。


「えーと……その、みんな、ごめん。動物に好かれたかっただけのはずなのに、亜人のみんなまで巻き込むスキルになってしまって……」

「……? 何言ってるにゃ? ミィはそんなの気にしてないにゃ」

「……え?」


 思ってもみなかった言葉に思わず声が出る。


「……ゴローには言ってなかったけど、亜人と番になってスキルを得たと分かったら、その相手を殺すという人も少なくないにゃ……」

「う、嘘だろ!?」

「いや、本当のことだ。番になるためには割と無理矢理襲い掛かる必要があるだろう? 普通はゴローみたいに言葉は通じないのでな」


 リーフの言葉にハッとする。そうだ、俺もミィに最初に出逢った時は押し倒されたな……。


「そしテ、自分と同じ種族ではない者と番になるのは嫌悪感を示す人も多くいまス」

「そ、それが無理矢理だったら、更に嫌がる人はいます……その相手の種族に自分たちが危害を加えられた過去があったりすると……」


 そうか、敵対する種族が番となる相手の可能性もあるのか……。


「でも、パパはそんなことしないよねー?」


 俺の膝の上に乗っているスーが振り返って無垢な顔で言う。

 転生者である以上種族間の問題なんてないから、みんなとの間にそういった隔たりはない。


「……そうだな、俺はみんなのことが好きだし、そんなことはこれからも絶対にしない」


 スーの頭を撫でてあげながら、みんなの方を見ながら宣言する。


「やっぱりゴローは優しいにゃ……ミィの相手がゴローでよかったにゃ」


 ミィの言葉にみんながうんうんと頷く。


「ゴローのように亜人を対等に扱う者は稀だ。私みたいに傷ついた者がいればトドメを刺すことも普通なんだ……」

「ワタシみたいなゴーレムも見つかった時点で破壊されるのが自然でス。危険な兵器ですからネ……」


 俺じゃなければ命を落としていた……か。


「だ、だからわたしたち亜人にとって、ゴローさんみたいな人がいてくれてとても嬉しんですっ……もし番になりたいと思う衝動がそのスキルのせいだったとしても、ゴローさんと番になれて幸せになってるんですから……」


 ルゥが顔を真っ赤にしながらも、そう言い切る。


「だから、もしそのスキルで新しく番になりたいって子が出てきたら、その子も番にしてあげて欲しいにゃ。ゴローと番になったら絶対に幸せになれるって、ミィも実感してるにゃ」

「そうだな、土の試練を受けたのも私たちのため。そこまで亜人を想う者はゴロー以外に見たことはない……ゴロー?」


 本当ならもっと責められるものだと思っていた。

 でも、みんなから優しい言葉をかけられて。

 俺がみんなを幸せにしていたと言うけど、俺もみんなのおかげで幸せになっていたんだなと改めて思わされる。


「ぱ、ぱぱー? なんでないてるの? どこかいたいの? だいじょうぶ?」

「あ、ああ、ごめん……ちょっと嬉しくて」

「うれしいのにないちゃうの? よくわかんないけど……ぱぱがうれしいならスーもうれしい……かも」


 スーは俺にぎゅっと抱きついてくる。


「あー! スーだけズルいにゃ! ミィ、ミィもー!」


 スーに嫉妬するミィを見て微笑ましく感じる。


「わかった。ほら、ミィも。リーフ、レム、ルゥも順番に……」




 そして全員をぎゅっとし終えたあと、スーが土の精霊と意識を交代させる。


「……随分いい表情になったな」

「ええ、胸につかえてたものが取れてスッキリしました」


 昨日、俺の本当のスキルに気付いてからずっとモヤモヤしていたものが晴れたのだ。

 そして、自分の出生の秘密を話せたし、みんなの本音を聞くこともできた。

 お互い隠しごとがなくなり、これまで以上にみんなの心と深く繋がれたような気がする。


「ところで一つお聞きしたいのですが……番相手が亡くなっても、スキルは相手に渡ったままなんですか?」

「ああ、それは真実だ。だからこそあのような残虐な行為がまかり通っているのだが……」

「……なるほど、少し安心しました。もし俺が死んだらみんなから【言語翻訳】のスキルがなくなって、お互いに話ができなくなるのではないかと心配でした」


 もしお互いの言葉が通じなくなってしまうと、みんながもう団らんできなくなってしまうのが心配だった。


「ははっ、自分が死んだあとまで他の者の心配か。お前らしいと言えばお前らしいが……」

「ご、ゴロー、死ぬなんて言っちゃ嫌にゃ……」

「た、例えばだよ! 俺はみんなといる今がとても楽しいから、できることならずっとみんなと一緒にいたいと思ってるし……その、時期がきたらこどもも……」


 最後の方は小声で言う。面と向かって言うのはやっぱりどこか気恥ずかしいし。

 しかし、ミィの大きな耳はそれを聞き逃さなかった。


「……ミィのお姉ちゃんはこどもができたとき凄く喜んでたし、生まれたこどもも凄くかわいかったにゃ。いつかミィも……って思ってたから、ゴローがその気になってくれたら、ミィはいつでも大丈夫にゃ!」


 み、ミィさん、そんなに大声で言うと……。


「そうだな、ゴローの初めてのこどもは最初にゴローと番になったミィがいいだろう」

「となるとミィさん、リーフさん、ワタシ、スーさん、ルゥさんの順番ですかネ」


 生まれたばかりのスーまで順番に入れるの!?


「……我を忘れておらぬか?」

「そそそ、そうですね。私の前に土の精霊様が……」


 ちょっと!? 土の精霊様まで!?


「……なんてな、冗談だ」


 いや、この流れで冗談を真顔で言わないでくださいよ。心臓に悪い。


「まあ……お前が気になっているのは確かだが、な」


 身体はスーのはずなのに、妙に色っぽい表情をしてこちらを除く土の精霊様。

 何か新しい扉が開きそうなんですけど!?


「おっと、そろそろスーに身体を返してやらねばな。せっかくの家族総出での温泉だ、楽しんでもらわねば」

「…………ぱぱー! みんなでおんせんすっごくたのしい! またしたい!」


 いつもの無邪気な表情に戻るスー。

 俺はスーの頭を撫でてあげながら、これからは毎日でもいいよと言ってあげた。


 ……多少、目のやり場には困るけど。

 それでみんなが楽しい時間を過ごせるならお安いものだ。




 その後、いつもより豪華な夕食を食べて眠りについた。

 大きな布団を作って、家族みんなで川の字になって寝るのもいいなと思いながら……。

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