聴き逃し配信だと思ったのに
えっ? 何か怖い話はないか? ですって?
しかも、自分で体験した話がいい? なんでまた?
小説投稿サイトに怪談を投稿したいからネタを探してる?
えっ? 作家さんなんですか? 違う? 趣味で書いてるだけ?
でも凄いですね。文章なんて小学校の読書感想文くらいしか書いたことないです。
しかも私、文才なくて。先生に、これじゃ本を写しただけだ、ってすごい怒られたんですよねぇ。
あっ、すみません。怖い話ですよね?
う~ん、申し訳ないけど、私、霊感とか全くないんですよねぇ。
あっ、そうだ!
少し不思議な話ならあります。怖いかどうかはわからないですけど。それでもいいですか?
はい。では、始めますね。
私、車通勤なんで、いつも車でラジオを聴いているんです。
聴き逃し配信っていうんですか? あれ便利ですよね。
私が学生の頃はそんなものなかったです。好きな番組を寝落ちで聴き逃した時とか、悔しかったなぁ。
あっ、すみません。話が逸れましたね。
その日の朝も前の晩の番組を聴いてました。
梅雨も明けたって言うのにしとしと雨で。少し肌寒い朝でした。
その時聴いていたラジオで面白い企画をやっていたんですよ。
ラジオで百物語、って言うんです。リスナーから怖い話を募集して百話を目指すんですって。週一回のラジオで百物語って気の長い話ですよね。
でも、その日の放送で九十八話目をやっていたんです。来週には百話いくんじゃないか、って。
へぇ〜、意外と続くものなんだなって感心したのを覚えてます。
で、次の日。その日も雨でいつも通り車でラジオをかけたんです。
番組も終盤、もうすぐ会社に着く頃に九十八話目が流れたんです。
どうやら昨日と同じ番組を聴いちゃったみたいで。
終盤まで気が付かないなんて呆れてしまいますよね。
更に次の日、また雨でした。何日続くんだよって少しイラっとしたのを覚えています。
雨の日って車通勤でも嫌なんですよ。視界も悪いし事故も多いですからね。
で、二度あることは三度あるっていうか、何と言うか。また九十八話目が流れたんです。
その時点で番組を変えようと思ったんです。でも、もうすぐ会社だし。
自分の迂闊さに腹が立ったけど、諦めてその日はそのまま聴きました。
四日目。雨はまだ続いていて、ただでさえ苛々していました。
朝なのにどんよりとした暗い曇り空。けぶるような雨で視界もすごく悪くて。
それなのにまたやっちゃったんです。さすがに今度はオープニングで気が付きました。
例の番組の例の回なんです。
情けないやら、腹が立つやら。
絶対に番組を変えようと思って車を路肩に止めようとして。そこで妙なことに気が付いたんです。
私が使っているアプリって聴き逃し配信は一番組につき一回きり。四回も聴けないんです。
でも私は実際に同じ番組の同じ回を四回も聴いている。
おかしなことと言えば、昨日、会社に行った記憶もないんです。
昨日だけじゃない。一昨日もその前も。
朝車に乗ってラジオを聴いて、気が付いたら次の日の朝。
その間の記憶が何もないんです。
どういうことだ? って思った瞬間、目の前が真っ白になりました。
対向車のライトが真正面から私の車を照らしたんです。
それで思い出したんです。
聴き逃し配信を四回聴いたんじゃない。
私が同じ朝を四回繰り返していたんだって。
私、死んでいたんだ、ってね。
あぁ、やっぱり怖くないですよね? すみません。
あっ、でも、今お話ししていてもう一つ不思議なことに気が付いたんです。
こっちの方があなた好みかも。
ねぇ、アンタ、なんで俺の声が聞こえてるの?
読んでいただきありがとうございます!
怖い話が苦手なくせしてホラーに挑戦してしまいました(>_<)
折角なので今のラジオっぽい要素をいれたいな、と思って聴き逃し配信のお話にしてみました。
最後の一文でヒヤッとしてもらえたらいいなぁ、と思って書いたのですがどうだったでしょうか?