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-6- お礼を言いましょう


「はいっ、良く眠れました! 昨日はスープをありがとうございました!とっても美味しかったです!」

「そうか、良かったな。オレはジェロームってんだ、嬢ちゃん名前は?」

「アリスですっ! ジェロームさん、よろしくお願いします!」


 度迫力のマッチョさん圧され、体育会系のノリで返事をすると、ニカッと笑って白い歯を見せた。


「おう、よろしくな。今日の飯も美味いから、しっかり食っとけよ」

「はい! ありがとうございます!」


 ぐっと腰を曲げて90度のお辞儀をして元に戻ると、カウンター前にいたリュカが目を丸くしていた。


「受け答えが訓練を受けた人みたい……、アリスって、不思議な子だね」


 人生初めての、不思議っ子頂きました。スポーツの世界は上下も厳しくて、染み付いた癖はなかなか抜けないのだ。


 ジェロームさんの美味しい朝食を食べながら今後について色々と考えていた私は、とりあえずここに居られるように自分の出きることを探そうと思った。

 保護とは言っても、何もしないのは性に合わないかった。とりあえず、母の手伝いで家事全般はそれなりに出来る。コミュニケーション能力も高い方で、体力にも自信がある。



 ここで私でも出来ることってあるのかな?



「食べ終わったら、隊長が呼んでるから一緒に来てくれるかな?」

「隊長さんが?」

「うん、アリス昨日困ってたでしょ? 昨日の事とか、今後の事じゃないかな」


 確かに、どうしたらいいんでしょうか? と聞いてしまった。私も相談したいことはあるし、よし。まずは話しをしなくちゃ。


「わかりました。よろしくお願いします」


 リュカに連れられ食堂から出た私は、道順を覚えようと、回りをキョロキョロと見回していた。ここの地図とか無いのかなぁ。

 食堂と2階へ上がる階段の間の廊下を進み、少しするとちょっと豪華な扉の前でリュカが立ち止まり、ノックをする。


 ――コンコン。


「失礼します隊長、連れてきました」

「ああ、入れ」


 すぐに返事があり、リュカは扉を開けて礼をすると中に入っていった。私も続いて礼をとり中に入る。


「失礼します」


 執務室? って言うのかな、中には対面のソファーとテーブル。奥には事務机が置いてあった。そして、机に座って書類に目を通す団長さんと、隣には背の高い金髪碧眼サラサラショートヘアのいかにも外国人風な男の人が立っていた。何故か左耳の横に三つ編みがあって、ちょっと印象が柔らかい。昨日居た人かな? あの時は良く見なかったけど、フランクさんだったかな。この人も整った顔してるなぁ……。顔基準の審査でもあるんだろうか。


「来たか、そこに座ってくれ」

「はい、失礼します」


 席を進められ、ソファーに腰を掛ける。すると、団長さんと立ち上がり反対側へと座った。


「良く眠れたか?」


 何度目かの質問に、同じように返事をする。


「はい、良く眠れました」

「そうか……」


 会話が続かない……。隊長さんはソワソワとした様子でこちらをうかがっていた。私から話しをした方がいいのだろうか? なかなか話し出さない隊長さんにしびれを切らしたフランクさんが、隊長さんの隣で咳払いをした。


「隊長、女性に慣れていないのはわかりますが、色々と聞かなきゃいけないことが山ほどあると思うんですよ」

「フランク! そ、そんな事はわかっている!」


 耳を真っ赤にしながらチョット拗ねた顔をする隊長さんを見ていたら、なんだか少し拍子抜けしてしまった。これは、私から話をしないと進まない感じかな? そう思い、まずは昨日のお礼と自己紹介から始めることにした。


「昨日は助けていただいて、本当にありがとうございました。アリスと申します」


 座りながらではあったけど、深くお辞儀をする。体勢を戻すと、驚いた表情の二人がいた。


「その様子だとだいぶ落ち着いた? それにしてもしっかりした子だね。あ、俺はフランク。隊長の補佐をしてるんだよ」

「礼には及ばぬ。私はクロードだ、幼いながらも感心だな」



 んん? なんで? 私、そんなに、幼く、無いよ?



 言葉からするに、どうやら相当下に見られているらしく、扱いも子供を相手にする感じだった。ちょっと傷つく……。年相応に見られたことはないが、童顔の扱いでもなかったはず。


「すみません。私18歳なんですが……」

「成人しているのか?!」

「ウソっ! どう見ても13.4じゃないの?!」

「僕より2つ年上?!」


 こちらの成人がいくつなのかは知らないが、三人の驚きは凄かった。そして、隊長さんは25歳。フランスさんは22歳。リュカは16歳だったよ。

 ちなみに、フランクさんが隊長さんに私を女性と言ったのも、年頃の女の子はそこら辺が気になる子が多いらしく、怒らせないためだったらしい。皆が優しかったのは幼い子扱いだったのかと思い、地味にショックを受けた。

 一番に立ち直ったのは隊長さんで、取り繕うように咳払いをした後に、私に質問をしてきた。


「失礼をした。昨日の事を聞いても大丈夫だろうか」

「はい」

「なぜあの場に?」

「わかりません、気がついたらあそこにいました」

「それ以前の記憶は?」

「帰宅途中でした」

「ご家族は」

「両親と兄がいます」

「ご家族との関係は?」

「良好です」

「誰かに恨まれたりは……」

「自分で言うのもなんですが、友人も後輩も仲の良い人ばかりで、ご近所付き合いも良好でした。気付いてないだけかもしれませんが、恨まれるようなことは何も……」

「もしや、その、拐われてきたのではないのか?」

「途中、誰かと話した記憶も会った記憶もありません」


 聞かれたことに淡々と答えていく。


「あの場に来る前に変わったことは?」


 変わったこと? 昨日の事をよく思い返してみる。こっちに来る直前に何か変わったことって……。


「あっ!」

「何かあったのか?」

「はい。目の前がキラキラしてました」


 そう、帰宅途中突然目の前がキラキラしていたのだ。目が開けられないほど眩しくなって目を閉じ、開けたときには草原だったんだ。


読んでいただきありがとうございました!

次の更新は明日の21時です。


応援よろしくお願いします(*´艸`*)

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