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-27- ジェロームさんの教え方


 ガヤガヤと賑わう食堂で、今日も無事に戻ってきたみんなが楽しそうに食事をしている中、私は新しく覚えた魔石を使って、食器を洗っていた。


「アリスさんも魔力制御が上手なんだね」

「そうかな?」


 あの後時間通りに来たメディさんに、調節しながら水を出していたらそう言われた。上達もなにも、さっき覚えたばっかなんどけどな。


「魔法も上手なのかい?」

「いえ、魔法は使ったこと無くて。あ、でもさっきジェロームさんに水の出し方を教わりましたよ」

「そうなんだ。ジェロームさんの教え方って上手いよね」

「はい、言葉もわかりやすくて実際に見せてもらいながら教えてくれました」

「ああ見えて、現役の時は後輩の指導なんかもしてたみたいだしね。僕もコツとか教えてもらったよ」


 ジェロームさんは、冒険者時代にギルドからの依頼で指導なんかもしてたらしく、面倒見が良くて評判も良かったらしい。魔法に関しては、攻撃系ではなく、身体強化や武器に魔法を纏わせたりとか、細かく分けてってそう言うことだったんだと、さらに私の中のジェロームさんの凄さが増した。

 ドッカンドッカンは、魔法ではなく物理的な方だったのは、なんかむしろ納得である。


「で、アリスさんは水出せた?」

「あー、出すには出せたんですけど、全然維持できなくて……」

「維持? なに教わったの?」

「こう、水球を……」


 と、さっき教わったの要領で、手を軽く握って水球をイメージすると、暖かさがなくなった所で手を開いた。少しは形を保ってはいるものの、すぐにパシャンとまたしても水球が弾ける。


「なかなかそのままにって、ならなくて」

「え、今日初めて魔法習ったんだよね?」

「はい、後は風魔法も見せてもらったんですけど、そっちはまだやってみてないです」

「アリスさんそれ、初心者用の魔法じゃないからね。初めての水魔法はだいたいこっちね」


 こっちと、メディさんはジェロームさんがやってみせてくれた時よりも少ない量の水を、手からチョロチョロと出して見せてくれた。


「こっちは、出すだけだから固定も何もいらないし、流れ出す分止めて溜める必要もないんだよ」

「えーーーー……」


 メディさんの言葉に呆然とする。ジェロームさん、教える順番逆ですよ……。ジト目でジェロームさんを見れば、こちらを見ていたジェロームさんがやや焦り気味な顔をしていた。


「いや、ほら、嬢ちゃん、調節が上手かったから、そっちより水球の方がいいと思ったんだ」

「そんなこと言って、また良くない癖が出たんじゃないんですか?」

「良くない癖ですか?」


 聞けば、ジェロームさんは、素質がある人には、教え方は丁寧なんだけど、順番すっ飛ばしたりと、結構スパルタになるらしい。ジェロームさん曰く、アリスなら手から水出すくらい、見てれば勝手に出来るようになるから。だそうだ。私としては、1から順に教えてほしかったんだけどなぁ。


「それってどうやってるんですか?」

「これは、そうだな……、例えばそのパイプから出てくる水を思い浮かべながら、魔力を変換してみるといいよ」

「変換……」


 そう言えば、さっきジェロームさんも変換って言ってたな。私が頭を傾けると、ジェロームさんがコンロの方から声をかけてきた。 


「嬢ちゃん、あんまし小難しく考えんなよ。感覚の問題だからな。さっきも見たまんまでいけんだろ。変換っつっても、フィルターを通して魔力を水に変えるって、感覚だ」

「フィルター……」


 次から次へと情報が追加される。変換にフィルター……。んー、と眉間にシワを寄せて悩んでしまう。


「見ただけで水球作ったんだ、さっきはできただろ。あれこれ難しく考えてっと、それも出来なくなんぞ」

「え?! それはイヤです!」

「どうせ皿洗いも後少しなんだろ、少しくらいなら練習していーからやってみな」


 せっかく形になった水球が出来なくなるのは悲しい。ジェロームさんも、見たまんまで出来るだろうって言ってたし、取りあえず【変換とフィルター】は考えずに、ジェロームさんのお言葉に甘えて水を出してみることにした。


 水球と違って、止めない溜めない、流れ出す……、流れ出す……。


 体の中心から腕に魔力を流して掌まで持ってくる。そこからパイプから出てた水をイメージして掌から流れ出す……。


 目を閉じて体を流れる暖かい魔力を感じながら水が出てくるイメージをすれば、掌からこぼれ落ちるような感覚がしてきた。目を開ければ自分の掌からさらさらと水が流れ出ていた。


「ほらな、一発で出来んじゃねーか」

「わぁ! 水が出た!」


 面白くて、魔石の時と一緒の感覚で量を調節してみれば、出てくる量がどんどん変わっていた。本当に頭の中で思い浮かべれば量が変わるんだなと思ったら、今なら水球も出きる気がしてきた。流れ出る水を手の中で溜めてみる。透明な丸いガラス瓶があると思えば、そこにどんどん水が溜まっていく。ちゃぷんちゃぷんと丸い縁に当たっては真ん中に落ちていき、水がどんどん丸に近くなる。ピチョンっと最後の一滴が落ちると、綺麗な水球が掌に乗っていた。


「できた……」

「その状態で、最後に少しだけ魔力を流してみな」


 水球から意識をそらさずに、言われた通りそっと魔力を流す。水球の周りに波紋が広がり静かにおさまっていく。


「浮けと念じて手を離してみな」

 

 浮いて……


 水球がフワッと掌から離れる。離れても水球は形を止めたままだ。自分のしたことが信じられなくて目を大きく見開き感動で鼓動が大きく高鳴った。


「出来たじゃねーか」


 ジェロームさんがほらなとメディさんを見ていた。メディさんも少し驚いた顔で私を見る。


「出来ました!」


 私はその後スッゴク嬉しくて、洗い物も忘れて全部片付けが終わるまで水球をずっと見ていたのだった。


読んでいただきありがとうございました!

次の更新も、明日の18時となります。


もしよろしければ、応援よろしくお願いします(*´艸`*)




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