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想起の地へ ⑤

 激しい閃光が収まっていく。

 やられてしまった。

 十中八九、今のは敵の《石化魔法》だろう。

 ダメ元で《障壁》だけは張ってあるが、これが敵の攻撃に対してどれぐらいの防御効果を持っているかはわからない。

 今の俺に出来る最善手は、今の攻撃を食らう前に倒すか、戦わずに逃げ切る事だったのに……


『ギャッ!ギャッ!』


 不気味な鶏みたいな鳥型モンスターは既に勝ち誇ったかのような喜びの鳴き声を上げている。

 奴にとって、必勝の戦法が決まったつもりなのだろう。


「すまんやられてしまった!ラーちゃん大丈夫か?」


「うう。大丈夫やけど、なんか足がパリパリしてる……」


 見ればラーちゃんの足先が石化を初めていた。

 瞬間的な《石化魔法》でなく、遅延型の魔法だった事だけが幸いだったようだ。

 だが、進行速度は早くは無いものの、のんびり出来る程の余裕も無さそうだ。


「《|Проклетство, исчезне《組成変化解除》》」


 ラーの石化を解くべく、治癒魔法をかけてみるが残念ながら効果は感じられない。

《石化魔法》は身体の組成を強制的に変質させる類の魔法なのだが、どうやらこいつの《石化攻撃》は魔法の類では無いようだ。

 モンスターの特殊攻撃は大気の魔力に直接干渉するものなので、魔法陣や詠唱から対策を取る事が出来ないのだ。

 厄介極まりない。


「あかんみたい。兄ちゃんは大丈夫なん?」


「うん。今の所は…… あ、危ないっ!」


 俺達の隙をついてきた鳥の攻撃をギリギリの所で躱す。


 何故だかわからないが、俺には《石化攻撃》は通じなかったようだ。

 俺自身の身体のキレは問題無いようだ。

 取り敢えず、無傷で逃げ切るという選択肢は無くなってしまった。

 どうにかしてこの厄介者を何とかせねば……


「こいつが、アクジキ様か……」


 鳥のクセに、全長は3mぐらいあった。

 身体は鶏みたいに丸々としているが、不気味なコウモリみたいな羽を持ち、しっぽはなんだか爬虫類みたいだ。

 まるで神話に出てくる『コカトリス』みたいな感じだ。


「間違い無いで!いつも食べてた奴や!」


「……まあ、取り敢えずこいつを倒してから、治療法を考える。《黒球》!」


 ちんたらやってる余裕は無い。

 一気に《黒》で圧殺を試みる。


「あっ!兄ちゃんアカン!潰してしもたら食べれへんようになる!」


「そんな事言ってる場合じゃないだろう!?まだ敵の強さもわからないんだ!余裕持って戦える相手でも状況でも無い!」


 一気に片を付けようと思った寸前の所をラーに制御されてしまう。

 既にラーは、足首まで"石化"してしまっており、食べられないとか、そんな悠長な事を言っている場合では無いと言うのに……


「兄ちゃんやったら大丈夫や!多分あいつの肉食べたら石になった足も治ると思う!だからなるべく"身"は残して!」


 本当なのかそれは……

 だが、《治癒魔法》が効かない以上、今はこの子供の言う事しか方法が見つからない。

 どうにも嘘くさいが、それがもし事実ならば何としてでも"身"は残さなければならない。


『ギャギャ!』


「やるだけやってみるけど、そんな余裕は無いかもしれんぞ?少し残ってれば大丈夫か?」


「絶対大丈夫!なるべく綺麗にやっつけて!」


 綺麗に。と言ったって、一体どうすれば良いのか。

 それに、このデブ鳥はこの巨体でどうやって空を飛んでいるのか……

 取り敢えず動き回られ無いように敵の動きを制御する事にする。


「《黒の体重増加》……」


 取り敢えず、なるべく外傷を付けない様に、まずは敵を《黒》で包み込み体重を増加させていく作戦に出た。

 ザコ敵ならばこれだけで窒息死させられるのだが、死なずとも動きを制限出来ればこの先の戦闘が楽になる。


『ギャ!?』


 自身の勝ちを既に確信して油断していたのか、コカトリスは俺の《黒》を避ける様子も無く、その身を《黒》で覆い尽くされていく。


『グー!ギャギャ…ギャ~ギャ~~~…………』


「あっ……!」


『ギャッ……』


 コカトリスはバタバタともがき抵抗していたが、そのまま増えた体重での"飛行状態"を保つ事が出来ずに急落下して、そのまま山肌に墜落してしまった。

 大量の青色の不気味な"血"を撒き散らしているが、原型だけは何とか保っている。

 かなりの速度で飛行していた事から、敵はかなりの強敵で、激しい激戦になる事を予想していたのだが、意外な事が弱点だったようだ。


「もしかして、死んだ?のか……?やっぱりあの巨体で飛ぶのはかなり無理があったんだな……」


「やったぁ!あれやったら食べられる!兄ちゃん流石!」


「お、おう……」


 念の為暫く様子を見ていたが、動く気配は無い。

 完全に死んでいるようだ。


「何とか無事に倒せたようだな。石化攻撃以外は大した事ない奴で助かった。ラーちゃん、足は大丈夫?」


「なっ!言うたやろ!兄ちゃんやったら絶対大丈夫やと思ってん!」


 石化していると言うのに異常に元気なラーの足元を見ると、何故か石化していた足は元の可愛い足に戻っていた。

 どうやらあの攻撃はコカトリスの死と同時に解除される類の攻撃だったらしい。

『肉を食えば治る』と言うのはただの勘違いだったのか、それとも肉が食べたいがだけの嘘だったのか……


「やったっ!今夜はご馳走や!めっちゃ嬉しいわ~!兄ちゃんありがとう!」


 ラーは喜んでいるし、どちらにせよ危機を回避出来たので良かったとしよう。









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