表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/114

滅んだ異世界で ⑦

 更に時間は過ぎていく。


 もう、この世界に来て1717日が経つ。

 余りにも長い間、なんの手がかりも見付けられなかった俺は一つの結論に至る。


 此処は、いわゆる【異世界】なのでは無いだろうか……?


 何故なら、ここに存在する動植物は俺の記憶に無い物ばかりだし、地球上のどこにだってあんな巨大な怪物がいる筈も無い。

 ここまで人類の痕跡が皆無の地域など、今の地球上には"絶対"に存在しない。

 "異世界"については【不思議倶楽部】で散々見聞きした知識だったが、非現実的過ぎるし信憑性のある体験談なども存在しないので、空想の中だけの物語と思っていた。


 だが、ここまで認めざるを得ない現実が実際に目の前にある以上、ここが【異世界】であると認めるしかなかった。

 認めたく無かった。

 だって、余りにも辛すぎる世界だから。

 ハーレムや俺TUEEEEなんて、俺の目の前に拡がっている【異世界】には皆無なのだ。


 ここが【異世界】だという結論に至ってからは、穴をひたすら掘ってみたり、謎の呪文を唱えたり、勿論神様にも祈ってみた。

 こちらに"来た"時の記憶を頼りに底なし沼を探したりもした。

 記憶にある信憑性の不確かな、思いつく限りの全ての『帰還』出来る方法を試してみたが、残念ながら、全く効果は感じられなかった。


 あの時、アデラ先生は何故俺を見殺しにしたのか?

 あの時助けてさえくれていれば……


 未練がましく、それがずっと気になっている。

 いやまあ確かに、俺は死んではいないのだが、今思えば、まるで俺が底なし沼に沈んで行くのを知っていたかのような素振りすらあった。

『私にこ……』

 最後の言葉も、無くしてしまったが、渡された"何か"もとても気になる。


 けど、どれだけ考えてもわからなかった。


 行動も、思考も、全て意味が無かった。

 時間は"無限"にあったが、全て時間の"無駄"だった。


 もしここから帰れるのならば、如何なる手段を使ってでも帰る努力するだろうが、その糸口すら見付からない。


 村や町が見つかる期待は、とっくの昔に捨て去っている。

 小説で読んだ美女が溢れるハーレムの様な【異世界】は小説の中だけの話だ。

 この【異世界】には自分と怪物以外の登場人物は存在しないのだ。

 現実は厳しかった。

 この退廃した【異世界】には何の希望すら見付ける事は出来なかった。




 もう、俺には何もやる事が無くなってしまった。

 だから、残された俺に出来る唯一の悪あがきとして、ただ無心で、黙々と歩き続けているのだ。

 まるで"死"を迎える為だけに生きている、役目を終えた虫達の様に……


「ん?」


 "食欲"と"睡眠"以外の思考すら停止しそうになっていた俺は、久しぶりに聞いた自分の声に驚いた。

 長い間、声など出してなかったのだ。


「変わった……?」


 急に"空気が違う"場所に入り混んでしまった様な気がする。

 何が違うかと言われたら、説明出来ない程の微妙な違いなのだか、確かに何かが違う。

 いつもなら定期的に現れる筈の怪物の気配も感じられない。

 騒がしい鳴き声や、足音が、辺りからすっかり消えてしまっているのだ。

 知らない内に怪物の"縄張り"にでも迷い込んでしまったのかと考えたが、どうやらそれも少し違うようだ。

 言葉どおり、"空気が違う"感じがするのだ。


「なんだろう……この感じ。嫌な感覚では無いけど……」


 不思議な違和感を感じるが、何故か怖くは無い。

 違和感を感じながらも、そのまましばらく歩き進んで行くと、岩肌をくり抜いて作られたような"巨大な横穴"を発見した。

 大型の怪物がそのまま入れる程の巨大なサイズの横穴は、先が見えない程深くまで続いているようだった。

 俺の視力は、恐らく10.0を超えているし、暗い所でも良く見える。

 その視力を持ってしても、どこまで続いているのか、全く先が見えない深さなのだ。


「なんだこれ? 怪物の巣でもあるのか?」


 少し考えた末、奥へと入ってみる事にする。

 どうせ他に、何もやる事もない。

 もしかしら、この洞窟を抜けた先は、『元いた世界』と繫がっているのでは?

 叶う可能性の低い、夢のような期待も抱いた。


 もしタチの悪い怪物が居たとしても、適当に逃げればいい。どうせ死にやしない……

 死に対する恐怖が完全に麻痺していた俺は、軽い気持ちで横穴へと入っていった……



 •*¨*•.¸¸☆*・゜



 乱雑に削り取った様な岩肌が続く。

 少なくとも人間が作った"通路"では無いようだ。

 やはり、ただの自然に出来た横穴だろうか?

 だが、横穴は想像以上に深く長く、まるでゲームのダンジョンの様であった。

 かなり奥深くて外の光は殆ど届かない所まで来たので、周りは真っ暗だったが、俺はまるで夜行生物の様に、人間の視力では何も見えない様な暗い場所でも、ほんの僅かな光があれば闇夜でも物を見る事が出来た。

 流石に明るい所と同じ様には見え無いが、ある程度の地形や距離などは問題無く知覚できるのだ。


「……?」


 洞窟内を更に進んで行くと、突然嫌な気配を感じる。


 今、何かに見られた様な、感じがしたのだ……


 その感覚は、この世界に来て更に研ぎ澄まされた信頼の出来る物だった。


 少し、怖くなってきた。

 引き返すべきだろうか?


 少し悩んだが、麻痺している恐怖よりも久しぶりに味わう新鮮な"好奇心"に勝てず、そのまま進む事にした。

 何かに見られている様な感じは、それからも時折感じられた。

 だが、無視して進み続ける。


「なんだ?ここは……」


 得体のしれない"視線"に怯えながら、長い洞窟内を更に深く進んで行くと、急に大きな広間のような場所に出た。

 どこからか、外光が漏れてきているのか、この広間は先程の通路よりも、明るくなったようだ。

 そして……


 やはり、見られている……


 何者かが"居る"事を明確に感じる。

 感じる視線は更に強くなっており、もはや何かに"監視"されているのは疑う余地も無い。


 それでも、広間の奥へと進んでいった。


「!!……」


 何とか叫び声を上げてしまうのだけは回避出来た。

 予想していた予想を遥かに超えた存在を見てしまった事に、息が詰まる。

  暗くて全容は把握出来ないが、信じられない程に凶悪で巨大で不気味な怪物が、闇の奥で俺の事をジっと凝視していたのだ……


 _______________


 炉林佑弥いろりばやしゆうや .... ??

 HP ... 底なし

 MP ... 無し

 力 ... 学校で一番級

 魔力 ... 無し

 耐久力 ... 異常

 敏捷 ... 犬並

 属性 ... 健康

 特技 ... 【体重操作】【超記憶力】


 特技【体重操作】全ての物の重さを増減する事が出来る。

 増減幅は自分の体重を減らす分には【ゼロ】まで、増やす分には2倍ぐらいまで。

 ただし自分以外の重さを操作する場合は増減幅が減る。


【超記憶】一度でも見たり、聞いたりした物、匂いや触感に至るまで、あらゆる感覚を全て完全に記憶出来るが、その情報量は余りにも膨大な為、思い出す為に必要な時間はその記憶の強弱に左右される。

 その力を応用して殆ど光の無い暗い場所でも僅かな"光"の記憶を増幅して見る事が出来る。

 空気や匂いまでも記憶している為、僅かな変化も"違和感"として感じる事が出来る。










ここまで読んで頂きまして誠にありがとうございました。

この先で、やっともう一人の主人公が登場します。

二人の主人公が長い時間をかけて旅をする物語を少しでも興味を持って頂けましたら、是非ブックマークとこの下にあります評価欄に☆でご評価頂けますと、私のモチベーションになりますので、何卒よろしくお願いいたしますm(_ _)m


皆さんに最後まで読んで頂く為に何度も何度も修正を重ねて更新が遅れる事も御座いますが、是非最後までお付き合い下さい。


花枕

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
読んで下さってありがとうございました! ご意見、ご感想、叱咤、激励、何でも頂けると幸いです! 励みになりますので是非ご登録、応援よろしくお願いいたします!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ