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滅亡していない人間の町 ⑤

 鉛の様に重かった瞼がいつの間にか開いていた。

 気付いた時には太陽はとっくに頂点まで上がっていた。

 せっかく目を覚ましても、やはり隣には、いつも居たはずの彼女は居なかった。

改めてまた一人ぼっちになってしまった事を痛感してしまう。

残念ながら、夢では無かったようだ。

 マテラと別れて、初めて一人での夜を明かした。

 しかし、あの至高の『抱かれ枕』を失えば、二度と寝られないと思っていたが、意外にも熟睡出来たようだ。

 複雑な気持ちだったが、どうやら俺は自分が思っているほど繊細な心を持っていないのかもしれない。

 タフで良かったと思う。


「ふぅあぁ!仕方ない!よ~し!やるぞ!」


気合いを入れ直しながら、昨夜の出来事を思い出す。

 それにしても、昨夜の宴は凄かった。

いくら酒の場が楽しいとはいえ、一人だけ酒に酔えない体質と言うのも困ったものだ。

 イワノスを始め隊員達の大半は酒に潰れて気絶するかの如く、次々とその場で眠りについてしまい、残された俺はギリギリ正気を保っていたカイラさんに安宿を紹介してもらって、やっとの思いで眠りにつくことが出来たのだ。


 まあ、おかげで寂しさを感じる事も無く、グッスリと眠りに着く事が出来たのだが。


 今日は【ギルド】に昨日の報奨金を受け取りにいく手筈なのだが、昨夜のあの暴れっぷりでは隊員達はまだ潰れているに違いない。

 だが、いつまでも宿に居ても仕方が無いので取り敢えず町へと繰り出す事にする。


 町も見ておきたいし、少し時間でも潰せばその内に隊員達も起き上がってくるだろう。



 ☆*°



「よぉ!そこの珍しい髪の若い兄ちゃん!見て言ってくれよ!」


「ああ、また後で寄らせてもらいます!」


 昨日も思った事だが、ヤマシーナの町は活気に満ち溢れていた。

 大小様々な商店や露店が道を連ねており、全てが初めての俺にはただ歩いているだけでも興味が尽きない。

 文明レベルは恐らく地球の中世ヨーロッパ程度だろうか。

 形から何となく想像出来るような物もあれば、全く見た事も無いような不思議な道具も見受けられた。

 基本的にはヨーロッパ系の様な金髪や茶髪の様な見た目の人間が多く、俺の様な黒髪のアジア系は居ないようだ。

 だが、何だか良く分からない獣人種や、まるでエルフの様な見た目の者、一瞬モンスターかと思って驚いてしまう様な様々な種族の人々がいるので、俺の見た目もあまり警戒される事は無いようだ。


「珍しい髪だな!どっから来たんだ?」


「あっ、すいません!また後で……」


 それでもやはりこの"黒髪"というやつはめずらしいらしい。

 黒髪の事でこんなに珍しがられるとは、まるで日本にいる外国人になった様なそんな不思議な気持ちになる。

 やたらと愛想良く話しかけてくる人が多いのはこのバビロディアと言う国の国民性なのだろうか。

 地球で半ボッチでコミュ障だった俺には、やや抵抗があった。


 でもまあ、決して悪い気分では無い。

 今の俺は貧弱なガリゾンビでは無い。

 マテラ達のおかげで生まれ変わったのだ。

 時間がある時は、なるべく積極的に情報収集してみよう。


 取り敢えず、素性を明かす事が出来ない今は町の人達と友好を深めるのは後回しにして、町を詳しく観察する。

 たったそれだけで多くの事が見えてきた。


 ヤマシーナは西側に海のある港町だ。

 西側エリアは地球と同じで、如何にも漁師といった感じのワイルドな人が多い。

 東側中心は金持ち風の人達が多く、外壁に近付くに連れて飲み屋や各種商店、ファンタジーには定番の武器屋等など、どんどんカジュアルな感じになってくるようだ。


 ほぼ無一文の俺には今の所何も買う事が出来ないが、報奨金を受け取ったら旅の準備の為に買いに来よう。


「大体把握出来たな。めぼしい店の位置も分かったし、そろそろ行くか……」


 昨日の【アジト】や【ポッスD】は町の南側にある。


 町は想像してたよりも遥かに人も規模も大きく、軽く下見しているだけで随分日が落ちてしまった。

 そろそろ【髭】の皆も動き出してそうなので一旦【アジト】へと向かう事にする。


 ☆*°


 ━【竜の髭アジト】━


「こんにちは。カイラさん居ますか?」


「あら変態さん。待っていたわよ」


 やや疲れ気味の隊員達の中で相変わらず美しくピンとしたカイラさんが迎えてくれた。

 昨夜の酔っ払って色気に満ちていたカイラさんを思い出して胸が熱くなる。


 しかし、既に変態などという"渾名"を付けられてしまっている事が気になる。

 変態なのは事実だし、名を名乗っていない以上そう呼ばれてしまうのも仕方の無い事だが……


「はい。これがあなたの取り分よ。使い易いように細かいのを多めにしておいたわ」


「ありがとうございます!」


 金貨や銀貨がビッシリと詰まった袋を手渡される。

 この国の硬貨は白金貨、大金貨、金貨、大銀貨、銀貨、大銅貨、銅貨、大石貨、石貨。の10種類。

 この白く輝く一番大きい白金貨1枚が10万$(トル)。

 飯屋や宿屋での価格から推定し、日本円で換算すると大雑把に白金貨から、10万、5万、1万、5千、千、5百、百、50、10円みたいな感じだろう。

 日本円に慣れてる俺からすると分かりやすくて有難いシステムだ。

 全て硬貨なので重くて少し嵩張るのが問題だが、皆が居ない所で『ストレージ』仕舞えば問題ない。


「確かに受け取りました。色々とありがとうございました」


「こちらこそ、ありがとう」


 深々とお礼する。

 これでこの国の資金が出来た。

 せめて数日間分の食料とかこの世界の衣服ぐらいは手に入れないと、話にもならない。

 これで二人を探す為の旅に出る事が出来る。


「他にまだ聞きたい事なんかはある?」


「ありがとうございます。出来ればこの国の歴史とか、地形とか、あと神話なんかも調べる事が出来る場所ってありますか?」


 あの異常なマテラの事だ。

 直接名前が知れ渡っていないとしても、何かしかの情報が神話や伝説となって残っている可能性が高い。

 俺はまずそこから調べる事にした。


「そうね。簡単な歴史なんかだったら私達でも教えてあげれるけど、詳しく知りたいなら『帝国』の図書館にでも行って見ればいいんじゃない?帝国はここから歩いて1週間程の距離よ。あなたならモンスターに襲われても大丈夫だし、誰にでも解放しているから行ってみたら?」


「あ、ありがとうございます!早速行ってみます!あ、イワノスさんにありがとうございましたとお伝えください!」


 次の目的地が決まった。

 そこならばきっと二人に繋がる情報が得られるに違いない!




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