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越えるもの ③

 次の技が本当に最後の技だ。

 これで駄目なら、今の俺達では何をやっても通用しない。


「おおぉぉお!」


 空中へと飛び上がり、周囲にある魔力をありったけ掻き集める。

 限界ギリギリ。

 飽和して霧散しそうになる魔力を必死に収束させる。

 限界まで《黒》で《加重》させた身体を、限界まで《加速》する!

『重力』の力を最大限に発揮出来る空中からの上段斬りを、ド正面からマテラへ向かって振り下ろす!


『《刀刃加速アクセレーラ》!』


 更にスザリオが自らの刀身に《加速魔法》を重ねがけする。

 重力500%×速度300%=破壊力1500%

 単純計算で15倍の破壊力。

 最高の武器に、今使う事の出来る全ての力が合わせた、最高最重の一撃でマテラに挑む!


「これで、どうだぁ!!」


 今、この一撃だけは躱された後の事など考えない!

 何をやっても通じない格上のマテラに対し、二人で考え抜いたシンプルにて最強の物理破壊力を持ったこの技に全てを掛けた!

 この数日間、マテラから一本取る為に二人で必死に訓練した"思い"も全て刀に乗せた!

 刀の速度は、もはや物理的速度限界を超えた!


「いけぇ~~!!」


 俺達が考え辿り着いた"最速最強"の技が、マテラの直ぐ近くまで迫る。


「フフ。面白い……折角だから、受け止めてやろうじゃないか!」


 マテラが余裕の表情で笑った。

 マテラは顔色一つ変えず、俺達の全ての力を乗せた攻撃を、いつもの様に正面から左手一本で受け止める構えを見せた。

 なんと言う傲慢さだ……

 本来ならば余裕で躱せるが、敢えて俺達のお遊びに付き合ってやろう。みたいな態度だ。

 自身の"防御力"に絶対の自信を持っているからこその余裕だろうが、この攻撃は俺達の全てを詰め込んだ最強の技だと言うのに。

 だが、その慢心こそが、マテラの唯一の弱点。

 その慢心さに付け込んで、俺達は今日こそ勝つ!


「15倍以上の破壊力……否!俺達の思いも乗せた30倍以上の破壊力を持つこの技を食らって、今と同じ余裕を見せられるか、味わってみると良い!その慢心!今日こそ打ち砕いてやる!堕ちろよぉぉぉ!!」


(ズギャバガーン!!)


 刀が人にぶつかった音には聞こえない程の凄まじい衝突音が周辺に響き渡る。

 視界が全て奪われる程の大量の砂埃が激しく舞い上がる。


 手応えは確実にあった。

 両腕に感じる、今まで味わった事の無い程の反動が、確実にマテラに命中した事を物語っている。

 今の一撃で俺の両腕は粉砕骨折し、もはや"ニノ太刀"を放つ事は出来ない。


「どうだ!?」


 舞い上がった砂埃がゆっくりと収まり、その中から刀身をしっかりと握りしめたマテラの姿が現れた。


「ふむ。まあまあだな。確かに今の技は、お前達のレベルにしては、なかなかの破壊力だった。この数百年の中では一番マシだったかもな。私じゃ無かったら、木っ端微塵になっていただろう……」


 なんと、物理的限界を無理やり《魔法》で飛び越えて放った俺達の『最強技』を、マテラはまたしても左手一本で、悠々と受け止めていたのだ。


「……」


『化物だな……』


 余りのマテラの非常識さに絶句し、言葉も出せなかった。


「ほいっ!」


「ぐっはぁ!」


 全ての力を空っぽまで出し切って、満身創痍でガラ空きになっていた鳩尾に、マテラの鋭い前蹴りが突き刺さる。


「すぐにまた油断する! 最大の攻撃は最大のスキも産むんだ。自慢の攻撃を防がれたからってボーとしちゃダメだって言ったろう!?」


「う……ぐへ……は、はい……すみません」


 強烈な前蹴りが腹に突き刺さり、息が出来ない。

 少しでも喋ると、朝に食べた朝食が全て出てきそうだった。


「スザリオもだ!私の"裏"をかいたつもりの攻撃は"中々"よかったけど、その後は何だ!?私が敵だったら、佑弥はとっくに殺されてるぞ!」


『くっ……』


「破壊力はともかく、技としてはもうちょっと"工夫"が必要だな。興味本位で敢えて受け止めてやったが、あんなにダラダラと講釈たれて隙だらけの派手な"大振り"が実戦で敵に当たる訳無いだろ……」


『やはり、そうか……』


 二人掛かりで一生懸命考えた作戦を、あっさりとマテラにダメ出しされ、俺達はまとめて酷いお説教を食らう事となった。

 確かに、調子に乗っていたのは自覚している。

 スザリオも気付いてるなら、早く止めてくれれば良かったのに……


『しかし、私が単独で《魔法》を使える事は知らなかったろう? それに、佑弥の攻撃力に私の魔力を全部重ねて捨て身で放った全力の一撃だった。いくら何でも頑丈過ぎないか?どんな防御法を使っているんだ?』


「私が、いったいどれだけ長い間生きてると思っているんだ?スザリオが単独で《魔法》を使う事ぐらいとっくに想定済みだし、防御だって身体に魔力を通しただけだ。攻撃力もスピードも、私の身体を"傷"付けるには全然足りないな」


 もはやギャグの様な桁違いの防御力を見せ付けてくれたマテラは、自慢げに大して大きくない力こぶを作って俺達に見せた。

 "対マテラ"用に新しく考えた魔法書に載っていない新しい《光学魔法》すらも、かつてマテラも『似た様な《魔法》を考えた事があった……』との事で、その弱点までも完全に理解されていた。


「今日こそは、って思ったんだけどなぁ……」

『あれまで通用しないとなると、まだまだ先は長そうだな……』


 信じられない程にデタラメな身体能力と戦闘経験だが、その信じられない様な"デタラメ"の持ち主は現実に目の前にいるのだ。

 悔しいが、今の俺達ではどんな手段を使おうとも彼女には届かない事を、認めるしか無かった。


 そして、スザリオと固く誓った。


「『だが、いつの日か、必ずマテラから一本を……」』


 巨大な『鉄壁』を前に、俺達には種族や生命を超えた固い絆が出来るのであった。


 ☆。.:*・゜


 炉林佑弥(イロリン).... 種族不明


 HP ... 3800/5750

 MP ... 0/3100

 魔力 ... 0

 力 ... 4800

 耐久力 ... 7080

 敏捷 ... 4600

 属性 ... 黒

 特技 ... 【重力干渉】【虚空記録】【一極集中】【動体視力】【黒い物?】


 妖刀『スザリオ』

 攻撃力 ... 9999

 魔力 ... 7700


 黒竜王であったスザリオの"魂"だけがマテラの作成した刀に憑依している。

 マテラの身体を素材として作成されており、そのままでも最強の硬度と靱性を持っており、マテラが存命してる間は仮に欠損や破損をしても自動修復する『超神級武具』。

 単体で《魔法》発動可。

 更に《風魔法》で自由自在に動く事が出来る。

 あらゆる五感を魔力で互換しており、もはや身体を持たないデメリットは無い。

 復活したスカード人と同じ『超高性能CPU』の様な知能を持っており、あらゆる事を演算、推測、処理出来る。

 人間には及びも付かない複数の複雑な並列計算も容易。

 ただし、刀自体の"質量"はとても軽い為、単体で敵を斬撃する場合には"重み"にかけて破壊力に劣る。

 とはいえそこまでの破壊力を必要とする敵はこの世界ではマテラぐらいしか存在しない。

 人間とは比べ物にならない程に優秀だが、人間に比べて"怒り"や"愛"という一部の『感情』が乏しい。

 ただし"仲間"に対する"情"だけは極めて深い。

 スザリオの目的は、かつて仲間が持たなかった『慈悲や愛、悲しみ』といった人間が強く持っている感情行動に対する興味と、自分を救おうとした佑弥とマテラに対する深い『尊敬』と『感謝』の為に二人に尽くす事。

 既に生命を持たず、限りある生命故の打算的な感情も持たない為、二人に『誓った』約束を一生涯かけて守り抜く。




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