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この手に掴むもの ①

 何も見えない白の世界……


 いつも見ていた筈の、この夢の世界は、眩い光?に覆われて、全て真っ白な完全に"白"の世界だった。


 白、白、白、完全な白……


 全てを眩い光で白く覆い尽くした完全な白の世界の中では、ありとあらゆるものを視認する事は出来ない。

 完全な白の世界と完全な暗黒の世界という対極に位置するこの二つの世界は『何も見る事が出来ない』という点では、全く同じ物なのだと言う事を知った。


「あれ、は……」


 いま、遠くで何かが見えたような気がした。

 人、というやつだろうか?

 俺に何かを伝えようとしていたのか?


「……」


 いや、やはりそんな訳が無い。

 いくら目を凝らしてみても、やはり私には何も見る事が出来ない。

 俺の周囲は、変わらずに完全な白の世界が広がっているだけだった。

 きっと勘

「はぁ……」


 ここは本当に矛盾だらけの不思議な世界だ。

 矛盾だらけのこの世界を、理屈や論理で理解しようとしたのが、そもそもの間違いなのかも知れない。

 しかし、たとえ理解出来ないとしても、私はこの不思議な"光景"を深く心に記録しようと思った。

 二度と忘れる事の無い情景として。


 俺はこの夢の記憶を無くし、また直ぐに、この世界に戻ってくる事になるとは思うが……


 意識が段々遠のいていく……


 ………………


 …………


 ……



『おはよう。佑弥』


「う~ん。ああ、おはようスザリオ。あれ?マテラは?」


 寝惚けた瞼を擦りながら、いつもなら近くに居るはずの彼女の姿を追う。


『マテラなら、随分前に起きて、朝食の準備をしている』


「そっか……」


 寝起きでぼんやりとしていた頭に、鮮明な意識が戻って来た。

 スザリオが俺の刀になってから、既に数日が経っている。

 最初は強い違和感を感じた"刀に話しかけられる"という奇妙な感覚にも、今ではすっかり慣れてしまった。

 マテラが居ない時でも、常にスザリオは俺の周囲を見張ってくれているので、非常にありがたい。

 だが、毎朝にマテラの笑顔で起こしてもらえる"至高の喜び"が、無骨な刀の"念話"になってしまった事が少し残念だった。


 どんな時でも傍に居てくれるスザリオには大変申し訳なかったが、やはり朝ぐらいは美しい女性の笑顔で目覚めたい。

 地球に居た時にはいつも一人だったし、ゼジャータに来てからしばらくは、挨拶出来る相手すら居なかったと言うのに、俺もすっかり贅沢になってしまったものだ。


『ところで、朝食の後に時間をくれないか?この数日間、佑弥の訓練を見ていて思う事がある』


「何?もちろん俺は構わないけど?」


 見ていて? スザリオが?

 一体何が分かると言うのだろうか……?

 というか、見えるのだろうか?


 とはいえ、黒竜だった時のスザリオは、たった数ヶ月しか"生きて"いなかったと言うのに、俺よりも遥かに優れた知能と戦闘能力を持っていた。

 きっとこいつがそう思うと言うのならば、それはそうなのだろう。

 特に反対する事も無く快諾し、マテラの元へ向かった。


「『おはよう。マテラ』」


「やあ、おはよう! 二人ともやっと起きたか。佑弥、昨夜は随分うなされていたな」


「え?そうだった?気付かなかったよ」


『うむ。常に仮死状態の如く熟睡している佑弥には、珍しくうなされていた』


 言われて見れば、確かにいつもよりも身体が重い様な?気がしない事も無い様な? どちらにせよ指摘されないと特に気付かない程度の違いだ。

 寝付きが異常に良い俺は、一度寝たら最後、朝まで滅多な事でも無い限り起きたりしない。

 流石に怪物に寝込みを襲われ時には起きてしまうが、それ以外なら"大音"がしようが、"地震"が来ようが、まったくビクともせずに熟睡する事が出来る。

 その特技とも言える寝付きの良さは、よく家族に『人間離れしている』と不思議がられていたものだ。

 もしかしたら、これも俺の正体と何か関係があるのかも知れない。

 種族の特性が『寝付きが良い』と言うのも少し微妙な気もするが……


 そんな訳で、夜に"酷くうなされていた"と言われても、俺にはまったく記憶が無い。

 そんな産まれた時からの性質を今更になって気にする事も無く、美味しい朝食に精神を集中させた。


「そう言えばスザリオ、さっき何か俺に話があるって言ってなかった?」


『うむ。その事なのだが……マテラ、佑弥に刀の使い方は教えたのか?』

「いや、教えていない。私は刀を使わないから、刀の使い方は佑弥に任せている」


 マテラはその異常な身体能力故に、肉弾戦も強かったが本来はれっきとした『魔法師』だ。

 "知識"としての格闘技には精通しているが、格闘技を専門に訓練した事は無いそうだ。

 そんなマテラが、何故こんな馬鹿げた性能の刀を作ったのかは謎だったが……


『では、佑弥はどうやって刀の使い方を知ったのだ?』


「それは……」


 刀の使い方等は俺の記録にある現代の剣道や剣術等の教本を参考にしていた。

 とはいえ、やはり専門家に指導された経験がある訳では無い。

 模倣の精度だけは高いと思うが、所詮"自己流"と言ってもいい。


『では私が指導の‘補助‘をしても良いだろうか?実戦の訓練自体はマテラに任せるのが最適だと思うが、少し技術的に気付いた理論的な点をいくつか私が指摘して行こうと思っている』

「ああ!それは良い考えだな!だけど、スザリオは剣を使えるのか?」


「スザリオこそ、どこで剣を覚えたの!?」


 俺の記録ではスザリオが黒竜だった時、武器など持って居なかった。

 というより、この時代に武器術などとうぜん存在しないのだ。


『この数日間、二人の戦いを良く見て研究した。今よりも合理的に『私』を使う方法を伝えられると思う』


 よく見ていた??

 言っている事は分からないでも無いのだが……


「スザリオ、研究したって、たった数日間で?」


『そうだ。剣術における人体の構造と運動力学の合理的解析をほぼ完全に終えたと思う』


 な、何を言っているのか全然理解出来なかった。

 そもそも、さっきからさも当然の様に言っているが……

ここまで読んで頂きまして誠にありがとうございました。

二人の主人公が長い時間をかけて旅をする物語を少しでも興味を持って頂けましたら、是非ブックマークとこの下にあります評価欄に☆でご評価頂けますと、私のモチベーションになりますので、何卒よろしくお願いいたしますm(_ _)m


皆さんに最後まで読んで頂く為に何度も何度も修正を重ねて更新が遅れる事も御座いますが、是非最後までお付き合い下さい。


花枕

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