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まるで下劣なゴミ虫の様に……

 先程見た地獄を思い起こす。

 今も冷や汗が止まらない。


 あっという間の出来事だった。

 問題が発覚した次の日には、彼女は"万"を超える数の黒竜達をたった一人で殲滅させてしまったのだ。

 その地獄を引き起こした彼女は、今も俺の目の前でいつもと変わらぬまま存在している。

 たが、いつも見ていた少し天然気味で、優しく可愛いらしい彼女の姿はここには無かった。

 目の前に居るのは、【死】という現象を具現化したかの様な"マテラ"と言う名の恐ろしい"悪魔"だったのだ。


「私の事が怖くなってしまっただろう?」


「まさか。俺は知っているから……」


 この恐ろしい"悪魔"は、同時にこの星全ての生命にとって"神"でもあった。

 あの非情なまでの殲滅は、純粋に『この星を守る為』だけにやった事だったのだ。

 星を守る為だけに、マテラは他人の生命を吸ってまで長い時を生きながらえてきた。

 そして、ただ世界を守る為だけに数万の黒竜達を滅したのだ。

 いくら彼女が無敵の存在だとはいえ、それはとても辛い事だと思った。

 それは、これまでも、そしてこれからもずっと続いていくのだろう。


 もし"地球"で同じ事が起こったなら、俺にそれが出来ただろうか……


「お疲れ様。終わったね……」


 俺は、星の為に悪魔となった彼女にゆっくりと近づいていく。

 変わらない。

 彼女が何をしようと、彼女は俺にとっては"天女"のままなのだ。


「いや……まだ終わってはいない。ゴーレム達が討伐した数は現在16033体。ここでも私が1000体程度は倒したが、その間にもゴーレム達が同程度の群れをいくつも発見している。今倒した巨大な個体はただの"隊長格"だったようだ。『スザリオ』と呼ばれる王の存在も直接確認する事が出来た」


「え!まだ居るの?」


 信じられなかった。

 あれ程の大群だったと言うのに、あれが幾つもあるただの"群れ"の一つだと言うならば、本隊はどれだけの規模を持っていると言うのか。


 更にはあの個体を超える『王』までもが残っているという。

 ただの隊長ですら、あのガムダンを苦しめる程の戦力を持っていたと言うのに……


「急がねばならん。黒竜の進化は私の予想を超えていた。既にある程度の知恵を持ち、言葉を使える個体まで居た。そしてあれだけ広範囲に拡がっていた黒竜達が急に"南"に結集している」


「結集……」


 マテラは深刻な顔で頷いた。

 怪物が言語を使うという異常さ、更に、本来本能だけで生きているような生物が、あれ程の数を組織して動いているという事態に恐れを抱く。

 "最西端"のスメーラから"東"へ大陸横断した時には、黒竜達は一匹も見なかった。

 たった数ヶ月の間に、組織をつくり、言葉まで覚えるまでに成長したというのだ。

 一体どれだけの進化速度と繁殖速度だと言うのか。


「『王』は何かしらの方法で我々の存在に気付き、結集して防御を固めているのだろうが、この状況はむしろ私達には好機だ。ゴーレムを使ったとしても散らばった黒竜をわざわざ潰して回るのは大変だ。ゴーレム達には"南"に集まった黒竜達をこれ以上拡散させないように閉じ込めておくように指示を出した。一晩待って、集まった所を一気に叩こう」

 

 先程のえげつない《魔法》を見たばかりだ。

 彼女の言っている事が、油断でも過信でも無いことが簡単に解る。

 あれはもはや戦闘と呼べる物では無かった。

 どれだけ数が多くて、どれだけ強い怪物だとしても、それでも尚彼女の敵になるとは思えなかった。

 数で圧倒されているものの、こちらとの戦力差は比べられない程に開いている。


「では一先ず帰るか。《転移》」


「うわっ!」


 再度マテラが《転移魔法》を使った。

 視界が瞬時に切り替わる。



 •*¨*•.¸¸☆*・゜



 あっという間に俺達は拠点へと戻っていた。


「今出来る事は全てやった。後は明日まで待とう」


 マテラは元気が無かった。

 無理もない。

 あれ程の数の黒竜を"殲滅"した直後なのだ。

 マテラは平然を装っている様に見えるが、やはり彼女はそんなに冷酷では無い。

 かなり無理している様に見えた。


 俺もかなり衝撃を受けていたが、何とかこの沈んだ空気を切り替えようと思った。


「よし!じゃあ俺が今から『カレー』を作るよ!」


「ひゃっ!!カレーか、それは……楽しみだな」


 マテラが驚いた様な仕草をする。

 だが、少しは元気を出してくれたようだ。

 沈んだ気持ちを切り替える為、無理して元気ぶった甲斐があった。


 マテラと旅するようになって"食"には充分に満たされていたが、やはり"地球"の味が恋しい時もあった。

 幸い、スメーラには"香辛料"の類も豊富にあったようで、材料には困らなかった。

 そして、何度も何度も試行錯誤して、何とか『カレー』に酷似した料理を作ることに成功していたのだ。

 それは、俺の唯一の"自信作"となっていた。


「そ、そんなに入れるのか!?」


 彼女に材料を出してもらって『カレー』によく似た食べ物を作る。

 カレーは彼女に取って正しく未知の味わいだったらしく、最初こそ驚いていたものの、とても喜んでくれていた。

 それ以来すっかりクセになってしまったのか、定期的にカレーをリクエストしてきては「辛い!辛い!」と文句を言いながらも美味しそうに食べていたのだ。

『辛過ぎる!』と文句ばかり言うくせに、すぐに「そろそろアレが食べたくなったな……」と催促してくるのだ。


「か、辛ひぃぃ! ひゅーや!今日のハいつもよひ辛過ひるのでは無ひか?」


 強敵が現れようが難なく対処し、苦戦するところなど微塵も見せないマテラが、カレーの辛さに悪戦苦闘して『ヒーヒーフーフー』言いながら、弱みを見せる姿が俺には堪らなかった。


「そう? 辛過ぎたかい?」


「ひや、だが、それがひい。これがまた……クセになる感びだな!何やら溜まった膿を吐ひ出すようなスッひリひた気持ひになる!」


 マテラは大量の汗を吹き出しながら、犬みたいに舌を出して『ハァハァ』言いながらカレーを頬張っていた。

 実は、彼女が"悶える姿"を見たいが為に、毎回少しずつ辛さを増していたのだ。

 それを俺は白々しくとぼけ続けていた。

 だが、俺とて決して余裕のある戦いなどでは無かった。

 彼女が悶える姿を見たいが為だけに、俺も同じ辛さと戦っているのだ。

 ただ、俺は幸いな事に『頑丈』だ。

 どれだけ辛いものを食べても、舌や胃に深刻なダメージを負う事は無い。

 たとえ舌が焼けただれとしても、数秒後には復活出来る。

『肉を斬らせて骨を経つ』作戦だったのだ。


 彼女とて辛いぐらいでどうにかなる様なヤワな身体はしていないものの、やはり俺よりは辛さに弱い。

 今も汗だくになって、特製カレーと戦い続けている。


(良い。凄く良い!)


 流れる汗がめちゃくちゃエロスを感じさせる。

 実は、マテラの戦闘服は今では多種多様に展開しており、様々な色と形を取り揃えてある。

 今日は胸元に強い切れ目が入った『桃色』のハイレグ戦闘服『スーパーVスラッシュ』だった。

 佑弥特製カレーは発汗作用も絶大で、代謝を異常に促進させる。

『スーパーVスラッシュ(SVS)』が、流れる汗を含んで肌に密着し、下にある肌を薄らと映し出していく。

 谷間や関節部に大量の汗を吹き溜めて、彼女はそれを恥じらうように拭い、またカレーを食っては汗を流し続けていた。


 今日が『SVS』で本当に良かった。

 滴る汗で湿った髪や、しっとりと濡れた"玉の肌"の美しさとは何と素晴らしいものだろうか……


 マテラとカレーとSVSの"三重奏"。

 それはゼジャータが生み出した最高の"オーケストラ"だと思った。


 それを見ながら、俺は卑猥な妄想にふける。


『汗で濡れたマテラとビチャビチャになりながら相撲訓練してマテラ汁を全身で味わう事が出来たなら、どれほど幸せだろうか……』


 俺の変態度は限界を突破して、もはや危険なレベルにまで昇華していた。

 まさかそんな変態的な事を思われているとは思いもせずに、マテラは激辛カレーを黙々とお代わりし続けていた。

 何とも言えない匂い立つような紫色の色気を纏いながら、豊満な谷間には大量の汗が流れ続ける。

 吹き出した汗はやがて滴り落ち、SVSの"終着点"に流れていった……

 それをじっと観察しながら、俺の身も心も温まって行く。


「こへは……本とふに、クセになふ味わひだ!」


 少し元気が無かったマテラも、特製カレーのお陰でいつもの笑顔を取り戻してくれたようだ。

 そして、特別なご褒美ショットを見せてくれたお陰で、俺も最高の気分に戻る事が出来た。


 俺が卑猥な変態行為を楽しんでいる間も、黒竜達は続々と南に集結し"来るべき戦い"に備えていたと言うのに、この時の俺は知るよしも無かった……


 

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