逆行 ⑤
「ふっ……むほおっ!」
密着し、しっかりと四つに組み合った俺の身体に、柔らかな二つの果実が当たってひしゃげた。
想像を超える感動だった。
俺の顔が喜びで変形してしまう。
ごく自然に彼女の耳元へ顔を近づける。
鼻腔にはマテラの何とも言えない花の様な香りが溢れ、柔らかい巨塊の感触が俺の脳天を刺激した。
これは本当に……最高だ……
マテラは俺が耐え切れずに変態性を発揮してしまっている事など全く気にした様子もなく、徐々に力を入れてくる。
腰巻をグイグイ上に持ち上げられ、腰紐が俺のお尻に食いこんでくる。
「くっ……」
少し恥ずかしいが、俺の恥ずかしさなど今は"どうでも"いい。
俺も力いっぱいマテラの水着を上に持ち上げた!
「くっ!やるな!佑弥も随分と力をつけたものだ!」
彼女の水着が見事にお尻に食い込み、美しい曲線美が丸出しになっている。と思う。
悔しい事にいくら身を乗り出そうとも、残念ながらこの位置からは見えなかった。
「ぐ……ぬぬぬ!ならば!以前の俺とは違うって事を見せてやる!」
首を亀の様に全力で伸ばす。
何がなんでも見たい!
だが、首がこれ以上伸びる訳もない。
これでは蛇の生殺し状態だ。
「うおおお!」
俺はマテラと出会ってから、一日も休む事無く激しい筋力トレーニングを続けて、人間の数百倍の速度で成長しているのだ。
もはや、見えない食い込みなどどうでも良い。
薄いパンツの一枚程度、この日の為に鍛えた腕力で引き千切ってやる!
容赦など一切出来なかった。
何をしてでも俺は、本気でマテラの裸が至近距離で見たかったのだ!
その時の俺は、激しい妄想に取り憑かれ、まともな"精神"が崩れ去っていたのだと思う。
この時抱いていた激しい気持ちは、きっと女子には一生理解出来る事など無いであろう。
「うがあぁあ!!」
渾身の力を両手に込めて、パンツを引っ張った!
両腕の血管は余りの負荷に耐えきれずに、血が噴き出していた。
毛細血管が破裂する鋭い痛みを欲望で押さえつけた。
しかし、それ程までに力を込めても、パンツはまるで鋼鉄で出来ているかの様にビクともしない。
「何故だ!?」
余りの興奮に思わず妄想が声に出ていた。
「おおう!いいぞ!もっと全力で来い!"水着"には魔力を通してあるので、絶対に破れないから遠慮は無用だ!そりゃあ!」
何だと! そんな魔力の運用法まであるのか!? くっ…… なんと万能な力なんだ!
期待が外れてガッカリしたが、まだ希望は残っている。
後ろの『桃』がだめなら、前の『メロン』を頂くだけだ!
「つおおりゃあ!」
俺は無抵抗な高反発枕のような柔らかな胸に標的を変えた。
全身の感覚器と神経を全て肩に集中させる!
まるで、全力で押しているかのように見せかけて、肩で胸をプニュプニュと揉み散らす!
「うほおおおっ~!」
最高としか言えなかった……
今この瞬間が永遠に続けば良いと、心の底から思った……
「どうした!?そんなもんか! もっと全力で来い!」
「とおりゃあああ!!(声だけ真剣)」
まるで巨岩のように、ビクともしないマテラを押し倒すのはもはや諦めた!
と言うよりも、はなから勝負の事など考えていない。
俺は次の作戦に移る。
もう"肩"では満足出来ない。
もはや小手先の技を使うまでも無かった。
溢れる欲望を制止する事が出来ず調子に乗って、俺は彼女の双丘に顔を埋め、埋まる顔に全神経を集中させた!!
「うーおおりゃああ!!(声だけ真剣)」
大気を震わすほどの裂帛の気合いとは裏腹に、柔らかな胸に包まれた俺の顔はまるで天国に昇ったかのように破顔していた!
「あああ……」
なんという気持ちの良さだ……
余りの柔らかさに我を忘れる。
ここは天国かと思った。
生まれて初めての"経験"は形容する言葉が見つからない程の気持ち良さだった。
実際には胸に顔を埋めて、十数秒間は楽しんでいたのだが、まるでこの刻は一瞬の出来事のように感じた。
時間の感覚がまるで100分の一になってしまった様だった。
最高だ!!この最高の時間をもっともっと味わっていたい……
時間よ! 願わくは、止まってくれ!!永遠にこの瞬間を、味あわせてくれ!!!
顔を左右に振り揉みながら、心の底から懇願した……
(ドクン……)
(ドクン……)
その時、俺の内側から何かが脈動しているのを感じた。
な、何だ……?
身体の様子がおかしい。
興奮の脈動では無い。
俺の身体に何か異変が起こっているのか?
脈動はどんどん激しくなり、心臓が今にも破裂しそうだった。
こんな感覚は今までに一度も味わった事が無かった。
鼓動と共に全身に黒い痣が浮かび上がる。
痣は俺の体を埋めつくしていき、全身が"漆黒"に染まっていく。
「うわぁ!」
そして、俺の身体から黒い『影』の様な物が噴き出したのだ。
《魔法》や《特技》の類は、発動も意識もしていない。どういう事だ?
俺は混乱した。
この黒い『影』の様な物は一体何なんだ!?
「消えろ!」
慌てて、黒い『影』を身体に戻そうとするが、全く『影』は言う事を効かなかった。
それどころか、『影』は物凄い勢いで際限なく溢れ続け、ついには周囲一体を塗りつぶしていった。
「何だこれは!?いつもと違う!?」
しっかりと掴んではいるが、マテラの姿は"漆黒"に飲み込まれ既に見えなくなっている。
俺は原因不明の『影』に戸惑い、一旦相撲を中止しようと……
「マテラ!ごめん!突然、力が……」
深い胸の谷間に埋まっていた顔をあげて、マテラに話しかけた瞬間……
(ドカッーーッ!!)
急に力を弱めてしまったからか、激しく突っ込んできたマテラの押し出しが直撃し、俺の身体は豪快に突き飛ばされてしまった。
「ぐっはぁ……」
完全に油断した状態で弾き飛ばされた俺は、久しぶりに意識を失ってしまった……




