眩い"闇" ⑨
指先に集めた魔力は安定し続けている。
このままの状態を維持するのは容易だと思えた。
「安定しているみたい。これだと簡単に出来る。それで、この次はどうすればいいの??」
「普通ならば、最初はその状態を維持するだけでも大変なのだが……」
「多分、維持するだけならずっとやってられそう。意識せずに出来ているし……」
「……まったく佑弥には驚かされてばかりだな。良しわかった。次は、その集めた魔力に形や意味を持たせるんだ。イメージのやり方はわかるな?」
「うん……」
正攻法とは言えないが、何とか次の段階まで進む事が出来てホッとする。
「俺が欲しかったもの……」
衣服を消す《魔法》は工程が複雑だ。
結果はイメージ出来ても過程がイメージ出来ない。
取り敢えず、一人だった時は火を起こす事が本当に苦労した事を思い出した。
キャンプ用品など無いこの世界で、火を起こす事はとても大変だったのだ。
火を起こす知識だけは有ったとしても、実際に手作業で火を起こしていた時の大変さを、どれだけ思い知らされた事か……
だから、一番便利そうで《魔法》っぽい"火"をイメージする事にした。
それに何となく初級といえば《炎魔法》みたいな先入観もある。
思い出すのはマテラがいつも肉を焼く為の"火"を『指先から出している姿』だ。
同じように、俺の指先に"火"が発生するイメージしてみる。
無から"火"をイメージするのは余りにも効率が悪い。
地球では"火の発生原理"などはとっくに解明されている。
要は分子や原子を激しく高速に動かせば良いのだ。
俺は"魔力"で分子や原子が激しく動くイメージする。
それだけで指先が暖かくなるのを感じた。
後は、次第に温度が上がって、自然に発火するイメージを頭に思い浮かべていく……
(ポッ……)
指先には、まるでロウソクの灯りの様に可愛くて小さな火が、申し訳無さそうに灯っていた。
「出来た!」
「まさか、『事象の操作』までがそんな簡単に!?信じられん!お前は魔法の天才だ!」
目を大きく見開いて、しっかり確認しなければ見えない程の小さな小さな"火"だったが、それは、俺が一人で発動出来た初めての"光"だった!
これはとてつもない一歩だった。
だが流石にこれは安定しない。
気を抜くと今にも"火"は消えそうになり、必死でイメージを保ち続けた。
「うおおっ!」
こんなにか弱くて小さな火の欠片だったが、人類が未だ誰も成し遂げる事が出来なかった超常現象を、自分の力で達成出来た事に涙が溢れそうになるほど嬉しかった。
俺の"やり方"に疑問を持っていたマテラも、やっと笑顔を見せてくれた。
心の底から喜んでくれている様に見える。
「凄い!凄いぞ!佑弥!おめでとう!」
「ありがとう!」
そしてマテラは喜びのあまり、諸手を上げて俺に抱きついてきたのだ!
(ポニュッ! ムニュニュニューーー!)
二つの巨大な爆弾が、俺の腕に当たって爆ぜた!!
その説明出来ない程の柔らかさと気持ちよさは、俺の頭の中を《大魔法》以上に真っ白に染め上げた!
「うわぁ!!」
「ああ!!集中力を切らしたらダメだ!」
苦労して灯した小さな"豆火"は、無情にも儚く霧散してしまった。
「ああ、俺の"火"が……」
「何をやっているんだ!なんでそんなにすぐ集中を切らすんだ!?」
マテラから"拳骨"のお仕置を食らう。
そして、すぐに集中力を切らしてしまう俺の態度を厳しく注意された。
せっかく発動出来た小さな"火"はあえなく霧散してしまい、マテラにはクドクドと注意され、頭には特大の"タンコブ"が産まれたが、それ以上の『ご褒美』を頂いた俺の目尻は異常な程に下に垂れ下がっていた。
先程起こった"爆発"の感触が、今も腕にしっかりと残っていて、微笑みが収まらない。
口元はもはや、制御不能なほどニヤついていただろう。
『何でそんなにすぐ集中を切らすのか?』と言われても、集中が解けた理由が『マテラの豊潤過ぎる胸』のせいだと言う事がバレたら、二度と抱きついてくれないかもしれない……
俺はその秘密を、墓まで持っていく決意を固めた。
注意されてもまったく反省の色が感じられない俺の事をマテラは呆れていたが、ここまでこれただけでもとんでもない事だったのだ。
すぐに機嫌は治り、初めての《魔法》発動を心から祝福してくれた。
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炉林佑弥 種族不明
HP ... 1800/1800
MP ... 0/150
力 ... 950
魔力 ... 0
耐久力 ... 2200
敏捷 ... 1070
特技 ... 【重力干渉】【虚空記録】【魔極集中】
【虚空記録】全ての体験を完璧に記録出来る佑弥にとって曖昧な記録という物は存在しない。だが、本来知り得る事の無い情報を、極限のストレス状態&ある条件下でのみ、未知の『記録』から読み取る事が出来る。ただし、それを自分の意思で操作&知覚する事は出来ず、ただ『何となく知っていた』という曖昧な形で現れる。
【魔極集中】大気に溢れる(もしくは周辺にある)魔力を身体の任意の場所に"集める"事が出来る。集めた魔力は《魔法》として使用可能。自身の体内で魔力を生成出来ない佑弥でも魔力を使い、結果として自分の魔力を消費せずに魔法を使用する事が出来る。反面、魔力の薄い場所では収集効率が下がる。また、自分自身から生まれた魔力では無いため親和性が低い。つまりどれだけ効率が良い魔力操作をしても魔力効率は最低レベル。




