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眩い"闇" ⑧

 

 何も感じる事が出来ない暗黒の世界。

 俺はまた、この変な夢を見ているようだ。


 もう何十時間もこの夢を見続けている様な気もするし、今この夢が始まったばかりの様な気もする。


 今回のこの世界で俺は、産まれたばかりの"赤子"であるらしい。

 勿論、視覚は無いので自分の姿を見ることは出来ない。

 ただ、そんな『気がした』だけだ……


 この世界での"時間"は『可逆的』な物だ。

 この世界に限らず、本来"時間"とは『可逆的』な物なのだ。

 それをなぜ人間は『不可逆的』な物だと思いこんでしまったのだろう。

 もしくは、誰かがそう思い込む様にしたのだろうか?


「……?」


 今、俺の身体に何かが触れた感じがした。

 身体どころか、触覚すら無いこの世界で、そんな事が有る筈は無い。


 きっと気のせいだろう……


 しかし、一瞬感じた様な気がしたその感覚は、とても心地の良い物だった。

 叶う事ならば、もう一度、ずっと永遠に感じていたいと思う程に。



 ………………


 …………


 ……



 •*¨*•.¸¸☆*・゜



 目が覚めた。


 以前に見せて貰った、超爆発とでも言えるような凄まじかった《魔法》を思い起こす。

 あれ程の大魔法は俺には必要だとは思えない。

  出来れば初心者用の可愛いやつが……


「……」


 何か不思議な"違和感"を覚えたが、身体には特に何の異変も無いようだ。

 きっと気の所為だろう。


 という訳で、簡単な"呪文"のようなものを教えて貰おうと思っていたのだが、この世界には声に出すだけで発動するような簡単な《魔法》は存在しない。

 《魔法》とは、どちらかと言うと超能力のような物だ。

 自分の身体に流れる"魔力"と"想像力"さえあれば、どんな物でも創造出来る様になる。

 そうすれば、あらゆる"事象"を起こす事が可能になる。


 残念ながら俺には自分の身体に流れる"微弱な魔力"を操作する才能が、絶望的に欠落していた。

 マテラがどんなに優秀な先生であろうと俺がそれを出来るようになる事は"無い"のだ。


「佑弥の属性は【黒】なんだが、よく正体が解らないので、最初は属性には拘らず【魔法の基本的な発動】から覚えていこう。まずは身体の中に流れる魔力を、少しでも良いから感じてみてくれ」


「わかった……」


 目を瞑り、身体の内面に語りかける様に精神を集中していく……


 簡単に自分の身体の中心にある魔力の"粒"を見つける事が出来た。

 ここまでは簡単な作業だ。

 もう何度も繰り返している。


「おお、なかなか良い調子じゃないか! 次はその"魔力"を手や足に動かしていくイメージだ!」


「……」


 ()()()出来る気がしない。

 その為の器官や神経が存在しないのか。

 理由は分からないが、その才能が全く存在しない俺にとっては、このまま魔力を動かそうと千年続けても絶対に不可能なのだ。

 身体にある魔力は感じられるものの、それは自分の意思では絶対に動いてくれない。

 俺の魔力とやらは、まるで完全に溶接されてガチガチに固められた"超合金"の様に、何をやろうが、まったく言う事を聞いてはくれないのだ。

 その事を、俺は嫌と言う程に理解出来ている。

 何年やっても無駄なのだ。


「……むっ」


 だが…… 要は魔力を自分のコントロール下に置けばいい。

 指先や身体の表層部分、もしくは任意の場所に集める事さえ出来れば良いのだ。

 ならば、『こっちの方法』ではどうだろうか?

 俺は()()()いるやり方で指先に意識を集中していく……


「よし……出来た!」


 俺の指先には少ないながらも、"魔力"が集まっていた。

 マテラの様に大気に存在する魔力を自分の体内で貯蓄、錬成、流用するのは無理だとしても、自分の身体を通さずに直接運用する。


「佑弥……今、()()やったんだ?」


 マテラが喜んでくれるどころか、非常に険しい表情になっている。

 無事に"魔力"を集める事に成功したと言うのに……


「マテラ、ごめんね。俺の内包している"魔力"は絶対に動かない。俺はそれを()()()()()んだ。だから代わりに、大気中にある魔力を直接"集めた"」


「知っている?どう言う事だ……?」


「何でだろう…… 上手く説明出来ないけど、何故だかそれを知っているんだ」


 俺は"魔力操作"の訓練など一度もやった事が無かった。

 だが、何故かそれが『出来ない』事を知っている。

 そして、これが『出来る』事も知っていた。

 一つ一つの指の筋肉の動きなど意識などしなくても、生まれた時から『手を握る』動作が自然に出来るように……


「何を言っているんだ?それとも、虚空記録の力?まあ…… 確かに"過程"が全てでは無いのだが……」


 マテラは信じられない物でも見るかのように、魔力が集められた俺の指先を凝視していた。

 集まった魔力は今も煌々と俺の指先で不思議な光を放っている。

 マテラが無言なのがとても申し訳なかった。


 だが、物覚えの悪い生徒の為に、何()()も必死で《魔法》を教えようとしてくれたマテラに応える為、必死で考え抜いた俺なりのやり方だった。

 内包する魔力が動かないのなら、容易に動かせる所から持ってくればいいのだ。


「大気に存在する自然の魔力を"魔法陣"も使わずにそのまま集めたというのか?確かに不可能な事では無い。だが、それで無理はしていないのか?」


 どれだけ集中しても途方に暮れるぐらいに出来なかった事が、この方法だと"息を吸う"かの如く自然に出来た。

 多少の集中力さえあれば、あれこれ悩んで身体の内面に問い掛けたり、限界まで《重量操作》を使う事に比べたら、全くストレスも無い。


「今の所、全く平気みたい……」


 これなら、次のステップに進めそうだ。


 

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