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眩い"闇" ⑥

「ぁああ……!!」


 強烈な閃光で全てが"真っ白"に染まっていく。

 視界が全て奪われた後は、両手でしっかりと塞いでいた筈の聴覚にも、頭の中が爆発したのかと思う程の凄まじい爆音が響いた。


 何が起こるか分かっていたにもかかわらず、衝撃で地面にすっ転んでしまった。

 マテラが《防御壁》を展開してくれていたので、直接的な被害こそ無かったが、視覚と聴覚は完全に麻痺状態だ。

 今も『きぃい~ん』という耳鳴りが頭の中で木霊し続けている。

 耳だけじゃなくて『目も塞げ!』と教えて欲しかった。

 説明する為だろうが、まったくとんでもない《魔法》をぶっ放してくれたものだ。


「はぁ~っ……」


 彼女の行動は日本人の俺には、いちいち刺激が強過ぎる。

 彼女が、今使ったのは《対消滅魔法》と言われる超弩級の指定魔法だ。

 地球でも解明されている"現象"だが、実際にその現象を起こすとなると核分裂反応でも使わないと起こせない程の現象だ。

 それはコイン1枚分の物質を"対消滅"させるだけで"原子爆弾"の数倍の熱エネルギーを発生させる。

 無闇矢鱈に使っていいような物では無いのだ。

 勿論彼女はそれ以下の規模に制御して威力を抑えてはいたようだが、それでもとんでもない規模の大爆発であった。


「あちゃ~。なんて事するんだ。マテラやりすぎだよ……」


 爆音と閃光は直ぐに収まったが、空には巨大キノコ雲が発生し、前方には直径数百mにも及ぶ巨大なクレーターが出来ており、そこにあったであろう物が完全に消滅してしまっている。

 マテラが使った《対消滅魔法》の威力が、如何に凄まじかったかを物語っていた。


「驚かせてしまって済まない。今のように、正確なイメージさえ出来れば無駄な"魔力"を使わずに、とても破壊力のある《魔法》だって使う事が出来るようになるんだ!」


 マテラは青い顔をした俺とは対照的に、とても自慢げでスッキリとした表情だった。

 てっきり巨大な竜の姿や馬鹿げた怪力から、マテラは膂力に物を言わせた『戦士』だと思っていたのだが、マテラはかなりのレベルで科学、化学、魔法等の理論に精通しており、どちらかと言うと莫大な"魔力"を使って戦う『魔法師』らしい。


『どうだい!?凄いだろう!』とでも言わんばかりのドヤ顔で俺に微笑んでいた。

 "弟子"の俺に凄い所を見せる為だけに、彼女の得意な《広域殲滅魔法》を見せられる事が出来て嬉しかったのだろうか?

 彼女が凄いのは既に身をもってわかっている。

 今更、わざわざ見せてもらう必要は無いのに……


「出来れば……次から《爆発魔法》を使う時は、もっと離れた所でお願いします……まだ、足の震えが止まりません。けど……ありがとう。よく解ったよ」


 余りにも自慢げに魔法を披露するマテラに控えめにクレームをつけた。

 今も爆発の余韻で震える膝が止まらない。

 これを日常化されてしまったら、俺の寿命が縮んでしまうからだ。


「ああ!すまない!次回からは気を付けよう!」


 マテラは謝罪していたが、あまり反省している様には見えなかった。

 うっかり何かを巻き込んだりでもしていたら、一体どうするつもりだったのか……

 まあ、滅亡してしまっているこのゼジャータではそんな心配する意味も無いのだが……


「けれど佑弥、私が使おうとした《魔法》が事前に分かっていたような素振りだったが?」


「うん……前に見せてもらった『魔法書』に書いてあった"魔法陣"だったからね。一応見せてもらった本に書いてあった事は全て記録してある。でも、地球人の俺からすれば余りに"非現実的"な事ばかり書かれていたから、まさか実現可能な事だとは思ってなかった」


「なんだと!?もうスメーラ語を理解してしまっているのか!やはり【虚空記録】の能力は凄まじいな。私でも苦労するあれ程複雑な"魔法陣"を全て覚えてしまうとは……」


 この能力自体も、子供の頃から生まれ持っていた力なので、俺には当たり前の事だったが、必死で寝る時間を押しんでまで勉強していた人間達に比べると、確かにかなり優遇された能力だと思った。

 地球にいた頃は、綺麗な女性のラッキーな瞬間を覚える事以外には殆ど役に立たなかった"力"だったが、その気になれば殆どの教科で"満点"を取れるからだ。


「ありがとう。ところでマテラは、あの魔法書に書かれている《魔法》は全て使えるの?二千種類ぐらい合ったけど……」


「忘れてしまった物もあるかも知れないけど、多分可能だと思うよ。あの資料や本は、殆ど私が書いた物だからね……」


「マジっすか……」


 苦労した?一体どの辺が?と思った。

 俺は覚える事が出来だけで、"無"から"有"を生み出す事は出来ない。

 俺が"記憶"力だけの凡人だとするならば、マテラは"創造"と発展の天才のようだ。

 マテラは、俺の事を異常者扱いしていたが、マテラも充分過ぎる程に異常者だと思った。

 それはともかく、俺は全人類の憧れ《魔法》が、もうすぐ自分の手に届く所まで迫っている事に、とてつもない興奮を感じていた。

 凄まじい剣技のみで敵を殲滅していく『剣士』にも憧れるけども、やはり俺はあらゆる状況で、多方面に活躍できる万能な『勇者』に憧れていたのだ。


「よし! 明日からは《魔法》の基礎訓練も初めよう!! ほんの少しでも身体に"魔力"が流れてさえくれれば、きっと直ぐにコツを掴んで『彼』みたいな凄い『戦士』になれると思うよ!」


「う、ん……そこまで期待されても、俺……人間じゃ無いとは言え、元はタダのヒョロガリ高校生なんですが……」


 マテラの中では『異世界人』と言うのは、どうやら別格な存在のようで、俺の事を過去に現れた凄腕の『彼』と同じように考えているっぽい。

 そんな訳ある筈無いのに……


 それに、夢の《魔法》が使えるようになるかもしれないという事自体はめちゃくちゃ嬉しかったが、俺がそんなに簡単に使えるとは思えない。

 やっと"魔力"が感じられる様になった程度なのに……


 日本では、ただの『人外』だった俺には、少し荷の重すぎる期待にも感じられたが『この笑顔の前には何を言っても敵わない……』と思い、素直に期待に応えられるように努力しようと諦めた。

 既にマテラの性格については大分把握出来ている。

 マテラは常に前向きで、努力さえすればあらゆる事が可能になると、心の底から信じているのだ。


 とは言え、俺も《魔法》を使える様になりたいと思う気持ちは同じだった。

 知識だけは充分に記録してある。

 自信は無いが、優秀な"先生"に教えてもらえれば、何とかなるかも知れないし。


 俺は、何だかんだと弱気になりつつも、味わった事の無い興奮を胸に抱いていたのだった……






ここまで読んで頂きまして誠にありがとうございました。

二人の主人公が長い時間をかけて旅をする物語を少しでも興味を持って頂けましたら、是非ブックマークとこの下にあります評価欄に☆でご評価頂けますと、私のモチベーションになりますので、何卒よろしくお願いいたしますm(_ _)m


皆さんに最後まで読んで頂く為に何度も何度も修正を重ねて更新が遅れる事も御座いますが、是非最後までお付き合い下さい。


花枕

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