眩い"闇" ①
ゼジャータは地球みたいに複数の大陸などに別れていたりはせず、巨大な一つの大陸で出来ている。
その大陸の周りをぐるりと海で囲うような、シンプルな地形になっている。
正確な大きさは分からないが、超高速で飛ぶマテラでも、大陸を横断するのには何時間もかかっていたので、地球と同じ程度には大きい惑星なのだと思われる。
原始の地球も一つの巨大な大陸だったと聞いた事があるので、生物が誕生する惑星とはある程度似通ってくるのかもしれない。
大陸中央には巨大な山脈が広がり、大陸を東西南北の四つのエリアに分断している。
エリア間の移動は通常かなり困難になっているのだが、成層圏近くまで高く空を飛ぶ事が出来るマテラには関係ない。
"北"は行けば行くほど気温が下がり、最北端ともなれば地球の北極の様な氷しか無い極寒の世界となる為生物が繁栄する条件は悪い。
なので優先的に探す必要は無い。
逆に、"南"は暖かい気候ではあるが、同時に怪物達の数も多くなり、温暖な気候を好む動植物や怪物の天国になっているらしかった。
そんな怪物がウヨウヨ居るような過酷な環境では、やはり知性のある文明が発展しているとは考えにくい。
もしこの世界にまだ人類が生き残っていたとしても、たしかに極寒地獄や怪物地獄なんかで生活しようとは思わないだろう。
スメーラを後にした俺達は、それらの理由から"東"に向かって進路をとった。
スメーラは大陸の"最西端"に位置しているのでそのまま端から端まで横断しよう。と言う事なのだ。
東の果てには、かつてスカードや他の文明が栄えていた。というのも理由の一つでもあった。
ここは"地球"では無いので、東に行った所で日本があるわけでも無いが、それでも太陽の登ってくる"東"の方向に向かうと言うのは、【日の出づる国】と呼ばれた故郷の日本に近づいてるような気がして嬉しかった。
勿論このゼジャータには日本という国は存在しない為、俺がこの世界で初の"日本人"になるという訳だ。
少しだけ胸の熱くなる話だった。
•*¨*•.¸¸☆*・゜
マテラの背に乗ってのんびりと優雅な空の旅を続けてる。
今度こそ本当にのんびり蛇行してくまなく調査して移動しているので、西の果てに到着するのには暫く時間がかかる。
「む……」
マテラが突然何かを見つけたように高度を下げていく。
「怪物達の群れがある。佑弥。練習相手が私だけでは、一体どれだけの力が付いたのか分からないだろう?あいつらを相手に実戦訓練にしよう!」
「ええぇ!あの大群を!?」
マテラと出会った洞窟のある大陸中央西部寄りのエリアは、あれでもまだ比較的に安全な地域だったらしい。
このエリアでは、単体でしか現れなかった大型獣や怪物が恐ろしい事に普通に群れで行動している。
あれからも一日も休まずに、マテラとの訓練は続けていたが、あれだけの怪物を一度に相手にした事は無い。
少し前までは嫌でも毎日のように襲われて、見るのも嫌気が差していた怪物達だったが、ここ数ヶ月の間はマテラのお陰でまともに怪物達とは向き合っていなかった。
確かに地獄の訓練で鍛えられた自分がどれだけ強くなっているか試してみたい気もする。
それに、今俺の手にはマテラから託された"刀"もある。
後ろでマテラが居てくれている限り、最悪の事態も起こりようがない。
マテラは『大丈夫!』とばかりに手でガッツポーズを作っていた。
いったい何処でそんなポーズを覚えたんだろう?
「よし!わかった。やってみるよ」
少し不安な気持ちも残っていたが、俺は鍛えてくれたマテラを信じる事にする。
"刀"の斬れ味にも興味があった。
覚悟を決めた俺は、マテラの背から群れの中へと向かって勢い良く飛び降りた。
ドヒュッ!と凄まじい勢いで地面が近づいてくるが、今の俺はどれだけの高さから飛び降りたとしても問題はない。
そのぐらいは既に鍛えこまれている。
着地寸前で《減重》の力を使い、音もなく地面に降り立った。
『ギャアアア!!!』
突然見慣れぬ生物が空から現れた事で、怪物達は驚いている様だったが、すぐに矮小な俺を"餌"と認識したようだ。
巨大な牙を剥き出しにして俺に向かって突進してくる。
が、その速度がまるでスローモーションかのように見えた。
「そんなノロマな攻撃、もう喰らわないぞ!」
怪物の初撃を冷静に避けて側面に回る、しっかりと体勢を整えてガラ空きになった怪物の首目掛けて"刀"を力いっぱい振り下ろした!!
(スパッ!!!)
「へ!?」
なんと、怪物の首をたった一振で、綺麗に両断してしまったのだ。
手応えが無さ過ぎて動揺してしまった。
いつもはマテラ竜相手にしかこの刀を使ってなかったので、こんなに凄まじい斬れ味の刀だった事が、全く分かっていなかったのだ。
まるで豆腐を切ったのかと思う程に、抵抗"硬を感じ無かった。
予想以上の刀の斬れ味と、怪物の動きがスローモーションに見える程の動体視力に驚いている暇も無く怪物達は次々と襲いかかって来る。
怪物は俺を薙ぎ払おうと巨大な尾を振り回して来たが、マテラ竜の"落雷"のような尾の攻撃に比べれば、まるで時が止まって見えた。
避ける必要すら感じず、無造作に片手で掴んで力任せに放り投げる。
空中に高く放り投げられて、頭から地面に激突した怪物はそれだけで動かなくなった。
次の怪物を全力で《加重》してみる。
怪物は動けなるどころか《加重》されて自分の重さに耐えきれず、ペシャンコに潰れて絶命してしまった。
《体重操作》の力まで格段に上がっている。
次は《減重》で弱体化させた怪物を力任せに殴りつけた。
一撃で巨大な怪物の頭が爆散した。
「凄い……」
巨大な怪物相手に全く力負けしていない自分の膂力に驚く。
あれだけ苦戦していた筈の怪物達が全く脅威とならない。
もはや、剣を使うまでも無かった。
襲いかかってくる群れを蹴りつけ、振り回し、締め殺した。
練習相手にもならない。
恐ろしい怪物達が、まるで手応えの無い"雑魚"と化していたのだ。
10匹ほど仕留めた頃には、あの獰猛な怪物達が俺に恐れをなして退散してしまった。
「なんだこれ…… 俺強くなり過ぎてない?俺の身体は一体どうなっちゃったんだ?」
見た目は大きくは変わっていない。
だが、なんだこの馬鹿みたいな成長は?
マテラの訓練に依る俺の成長が、想像以上過ぎて興奮がまだ収まらない。
まるで自分では無くなってしまった様な、圧倒的な無敵感さえ感じてしまう。
「マテラ……俺、おかしい。俺の身体じゃ無いみたい!」
自分の身体の変化に戸惑いながら、笑顔で待つマテラの元へ行く。
「私が直々に鍛え上げたんだ、当たり前だろう。佑弥の異常な回復力と適切な訓練。佑弥に残っていた"潜在能力"が一気に目覚めたというだけの事だ。もうこの時代の怪物程度では、お前をどうする事も出来ないだろう。だが、いくら強くなっても、世の中には"上には上"がいる。今のお前でもどうにもならん相手もいくらでも存在する。それだけは忘れないでくれ。《魔法》や《特技》など、他にも厄介な技を使う奴はいくらでも居るからな」
マテラは『当然!』と言った感じで説明しているが、何よりも自身の"急激な変化"に付いて行けなかった。
理屈はともかく、感情が追いついていないのだ。
確かに、強くなっている自覚はあった。
単純な腕力だけでも比べものにならない程に成長していたのだ。
だが、この"進化"とも呼べる程の急激な成長は、そんな簡単な説明で納得の行く程度の事では無かったのだ。
「あ、そうだ! スメーラで面白い『物』を見つけたぞ。使ってみるといい!」
マテラはそう言って、手のひらサイズの結晶体のようなものを放り投げて来た……
ここまで読んで頂きまして誠にありがとうございました。
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花枕




