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異世界都市 ②

 ついにマテラから認められた。

 嬉しかった。

 大切な刀を預かり、旅に出る事になったのだ。

 ついにこの地獄の様だった訓練からも解放される!


「よおおおっし!」


 どんな理由があれ、巨大な岩石を担がされたり、容赦の欠片も無い巨大竜(地獄モード)相手に、昼夜ひたすら緊張感のある戦い(一方的な)ばかりの生活が楽しい訳が無い。

 早く優しい(天国モード)のマテラと共に、色んな所を旅して"帰還方法"を探したかった。

 ついにそれが叶う日が来たのだ!

 俺はかってないほどに、テンションが上がっていた。


「よし!じゃあ基礎体力がどのぐらい強くなったか、私と『力比べ』をしてみよう!勝てれば基礎訓練はおしまいだ!」


「はぁ?そんなの無理に決まっているじゃないか……」


 頂点に達していたテンションが一気に冥府の底までダダ下がる。

 散々期待させておいて、それはあんまりの仕打ちだろうと思った。

 いくら俺が強くなっているとは言え、マテラの非常識な"怪力"っぷりは身をもって味わっている。

 もう可愛い見た目に騙されたりはしない。


「まあまあ良く聞け。勿論ハンデをつける。私は"魔力"を使わないし、佑弥は『力』を全力で使って良い」


「いや、それでも全然無理だと思うけど……」


「むむ…… 私は佑弥の筋力がどのぐらい成長したのか見てみたいのだ。佑弥もせっかく鍛えた筋力を試して見たいとは思わ無いのか?」


「確かに……」


 この世界にはバーベルやダンベルと言った自分の腕力を図るような器具は無い。

 たとえ有ったとしても、今の俺の腕力はそんな物では測りきれない程に強くなっている。


 急激な変化に対応出来なくなるので、頻度は減らしていたが、あれからも毎日岩潰れ訓練はおこなっている。

 確かに、俺も自分の今の腕力がどのぐらいの物なのか試して見たかった。


「わかった。挑戦してみよう……」


「よし!そう来なくてはな!いざ尋常に勝負だ!」


 マテラは亜空間からおもむろにテーブルを取り出して、肘を置いた。

 そして『さあこい!』と言わんばかりに手招きをしている。

 成程……『力比べ』とは、地球でいう腕相撲の事らしい。

 確かにこれなら、体格差と体重差で有利な俺にも少しぐらいは勝機が有るかもしれないが……


「さあさあ!早く掛かってこい!」


 しかし、何という漲った自信と楽しそうな表情をしているのだろうか……

 テストと言っておきながら、異常に楽しそうな顔をしている。

 恐らく彼女は、生来勝負事と言う物が好きなのであろう。

 ただの腕相撲とは思えない程の気合いの入りっぷりであった。


 対して俺はと言うと、幼少期からずっと"貧弱体型"で過ごしていた。

 腕相撲はおろか、身体を使った勝負事では一度も勝った記憶が無い。

 そんな俺が、こんな勝負に熱くなれる訳も無かった。


 だが、今の俺は確かにマテラの修行の成果で昔とは全く違う。

 ましてや相手は"魔力"を使わない。

 勝てないにせよ、良い勝負ぐらいは出来るようになっているかも知れない。


「よし!」


 気合いを入れ中央でマテラの小さく細い手をガッチリと握りしめた。


 これは、いける……?


 握った手は想像以上に小さかった。

 女子の手とはこんなにか弱き物なのか?

 余りの小ささに、本気で握ると壊れてしまいそうだ。

 そう言えば、人間の姿のマテラとは一度も戦った事は無い。

 もしかすると、竜状態に比べたらかなり力は制限されているのだろうか?


 いや、だが、相手は何度も何度も俺を苦しめた真の化け物だ。

 こんなに弱々しいと見せかけて強いに決まっているのだ。

 念には念を押し過ぎるぐらいで丁度良いだろう……


「はぁぁ~!」


 俺は自分の体重を限界まで《加重》し、逆にマテラを限界まで《減重》させた。

 腕相撲は基本的には体重の重い方が圧倒的に有利なスポーツだ。

 この体格差と体重差は、マテラと言えども簡単に覆せるようなものとは思えない。


「よし…… 行くぞ!」


「来い!」


 勝つ為の戦略は全て整っている。

 俺の気合いも全開だ。


「レディー……GO!!」


 合図と共に瞬間的に力を爆発させ、全体重をテコの原理で腕に乗せ、一気に自分の方向へ相手を引きずりこむ!

 腕相撲の必勝法だ! 必勝法の類は全て頭の中に入っている!


「ふん!」


 だが、やはりそこは流石のマテラ。

 こんなにか弱い細腕で見事に俺の引き付けを腕一本で静止させていた。

 信じられなかった。

 一体どんなカラクリなのか。

 力学的に有り得ない怪力だ。


 だが、未だに体制はコチラが若干ながら有利である。

 このまま一気に畳み掛ける!


「うおりゃああ!!」


「やあぁぁ!」


 大気が震える程の気合いを込めた俺の鍛え上げられた剛腕は、瞬間的に視界から消えさり、ポキリと見た事が無い変な方向に折れ曲がって相手側のテーブルにめり込んでいた……


「ぎゃあああ!」

 

「あっすまん!《回復》!」


 勝てないのは最初から分かっていた。

 なのに、僅かに感じてしまった勝機が、俺に僅かな期待を持たせてしまったのだ。


 腕が折れた事などどうでもいい。

 それよりも、元から崩壊寸前だった俺の男としての薄っぺらい"誇り"が完全に砕け散った事の方が痛かった。


「はぁ……」


 意味不明で理不尽な怪力に完敗し、俺の心はグッたりと消沈してしまった。

 これで基礎訓練の試験は"不合格"と言う事になる。

 折角楽しみにしていた冒険も、しばらくお預けになってしまうのだろうか……


 マテラも複雑な表情で、俺を悲しそうに見ていた。


「マテラ、もしかして『力比べ』の女子チャンピオンか何かだったとか?」


「何を言っているんだ。私は魔法師だと言っただろう?腕力に自信なんか無いよ」


 信じられない発言だった。

 これでは『合格』するのに一体何十年かかるか解らない。

 俺はまたずっと基礎訓練を続けて行かなければならないと言うのだろうか……


「でも、まああれだ。流石にこの時代でこれ以上の力は必要無いかも知れないな。私も世界の様子を調べないといけないし、佑弥も元いた世界に戻る方法を探さないといけないからな。少し譲歩しよう……」


 う~む。

 じゃあ一体何の為の試験だったのか?

 とは言えなかった。


 気を使って、必死で言い訳をしてくれているのが、痛いほどに理解出来たからだ。

 彼女の優しい気持ちを汲み取って、それ以上は声には出さなかった。


 まあでも、結果としてどうやら旅に出る事は出来そうだ。


 良しとしよう……


 _______________


 炉林佑弥 .... ??

 HP ... ほぼ永久機関

 MP ... 無し

 力 ... ベンチプレス5000kg(適当に推定)

 魔力 ... 無し

 耐久力 ... 厚み20cmの鉄板並

 敏捷 ... スポーツカー並

 属性 ... 健康

 特技 ... 【体重操作】【超記憶力】【不思議な体質】


【マテラの刀】マテラの髪や鱗を使って作られた刀。日本刀とほぼ同じ形状をしている。マテラ曰く、製作が大変過ぎて『二度と作りたくない程の最高傑作』切れ味、頑丈さ共に世界最高品質。


 特技【体重操作】全ての物の重さを増減する事が出来る。あくまでも特技なので、魔力は使用しない為、マテラですら技を使ったかどうかは判断出来ない。

 増減幅は自分の体重を減らす分には『ゼロ』まで、増やす分には3倍ぐらいまで。

 ただし自分以外の重さを操作する場合は増減幅が減る。


【超記憶】視覚、嗅覚以外にも"五感"で感じた事は全て完全に記憶出来るが、思い出す為に必要な速度はその記憶の強弱に左右される。


【不思議な体質】怪我を負った場所は黒く変色する。人間に比べて遥かに頑丈で"修復"が早い。その"修復"速度は低位回復魔法を超える。




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