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異世界都市 ①

 数日が経った。

 今もただひたすらにマテラとの訓練を続けている。


 まるで訓練する為に、この異世界に来てしまったのかと勘違いしてしまう程、訓練に明け暮れた。


 そのお陰かバラバラになっていた肉体の成長と感覚も大分安定してきたと思う。

 だが、それでもマテラには全く届かなかった。

 俺がどんな攻撃しようが全く効かないし、どれだけ強く防御しても、それ以上に強力な攻撃を繰り出してくるのだ。

 俺の身体は相変わらず、毎日ボロボロになっていた。

 身体だけでは無い。

 何度も心が折れそうになった。


 既に怪物達を超える力は手に入れている。

 なのに、やっている事と言えば、変わらず来る日も来る日も激しい訓練だけ……

 ここまで厳しい訓練を続けていく事に意味などあるのだろうか?

 何故そこまで強くなる必要があるのか?

 訓練が嫌な訳では無い。

 むしろ、際限なく強くなれる事には喜びすら感じる。

 だが、それ以上に、


 俺は、故郷に帰りたいのだ。

 訓練の他にもやるべき事や、探す事も有るのではないか?


 とマテラに疑問も抱いた時もあった。だが、


「今の佑弥の力では、この先、まだ一人で生き延びて行く事は出来ない……」


 という事を伝えられた。

 マテラに言わせれば、今はゼジャータの歴史の中ではもっとも"脅威の少ない時代"らしい。

 信じられなかった。

 こんなに獰猛な怪物達がウヨウヨと跋扈しているというのに、ここは一体どんな危険な星だと言うのか……


 なにやら過去のゼジャータには怪物など比較にもならない程に『凶悪で獰猛な生物』や、戦闘技術を昇華させて一人で何千人もの敵を相手取る『狂戦士』、夜が昼になるほどの火を噴く『魔法兵器』など、平和ボケした俺には想像もつかない程に恐ろしいものが、いくらでも存在していたらしい。


 通常の寿命を全う出来る者ならば、のんびりと限り有る人生を楽しめばいい。

 だが、何故か歳を取らなくなってしまった俺や、元来寿命と言うものが存在しないマテラは、出会いや別れを永久に繰り返していく事になる。

 その中には、自分や大切な仲間を守る為に戦わねばならない時も必ず来るだろう。

 だからこそ、理不尽に屈しない為の"力"は絶対に必要なのだと。そうマテラは教えてくれた。


 普段は優しくて、穏やかな彼女だったが、その事を語る時は真剣そのものだった。

 ならば、こちらも真剣に応えなければいけない。

 どちらにせよ『猛烈な下心』に燃えている俺は、訓練を続けていく事自体は文句など無かったのだが……


 そんな感じで過酷な訓練をやり続けた結果……


 俺の肉体は、推定数トンはあろうかと言う巨岩でも簡単に持ち上げる事が出来るようになっているし、《重量操作》の力もかなり成長した。

 小さな獣程度なら《加重》の力だけで押し潰す事も出来る様になった。


 マテラとの"組手"では、相変わらず気絶しないようにするだけで精一杯だったが、それでも、すぐに気絶させられていた最初の頃に比べれば、気絶する回数はかなり減っているし、"集中力"が続かずに短時間しか使えなかった《力》も、かなりの長時間持続出来るようになっている。


 今までは『逃げる』為に相手を《加重》する事が多かったが、いざ強敵との戦闘の際は相手を《減重》する事により、攻撃力と防御力を大幅に低下させた方が有利な事もある。と言う事にも気付いた。

 大型怪物を相手にしても《減重》で体重差のハンデを消す事が出来るので、一人でも撃破出来るようになったのだ。


 とにかく、訓練前と今とでは比べものにならない程に、大幅に戦闘能力が上がっていたのだ。


「成長したな。これで大抵の敵には苦戦する事は無いだろう。体力も大分ついたようにも思うし、後は旅をしながら訓練を続けて行けば大丈夫だと思う」


「やった!!」


 念願の旅が始まる。

 地球に帰る方法を探す旅が!


「うんうん。良く頑張った!」


 マテラは見ただけで分かる程に強くなった弟子の姿を満足そうに眺めていた。

 辛かったが、この笑顔を見るだけでも訓練を続けた意味があると言うものだ!


「今の佑弥なら、これを渡しても良いだろう……」


「ありがとう。これは……」


 基礎訓練を終えた証として、マテラの鱗と髪を使って作られたという刃渡り1m程の『刀』を与えられた。


 美しい……


 最初にその『刀』を見た時、それしか思い付かなかった。

 今迄、平和な日本に生きていた俺にとって、本物の『刀』など見た事も無かったのだが、手にした瞬間にこの刀がとてつもない代物だと言う事がわかった。


 これは、誰が見ても人や生き物を殺す為に造られた恐ろしい"殺人兵器"だ。

 にもかかわらず、この刀は息を飲む程に美しかった。

 まるで目の前にいる女性のように……


 それもそのはず、この刀はマテラの身体の一部を素材として造られていたのだ。


 刀の刀身はマテラの鱗のように鈍く銀色に発光しており、光の角度によっては僅かに偏光の緑色に見える時もある。

 柄の部分はマテラの力の源である翡翠色の髪を編み込んで作られていた。

 やや厚みのある刀だが、見た目の割にとても軽く、そして鋭く、マテラの強靭な鱗を練成して作られた刃は滅多な事では折れたり欠けたりする事も無いという。


 マテラが自ら製作し、未だに"銘"すら付けていない刀らしいが、この世に一振しか存在しない、とてつもない業物だと解る。


 本人曰く『二度と作りたくない程に苦労して作った最高傑作』らしく、これを超える武器は恐らく無いだろう……との事だ。

 そんな大切な刀を、俺はマテラに与えられたのだ。


 言葉が出ない程に嬉しかった。


 いつも自分から一時も目を離さずに、厳しく、そして優しく鍛えてくれるマテラ。

 柄を握るとマテラの髪に触れているようで、彼女が一緒に戦ってくれそうか安心感があった。


「気に入って貰えたかな?」


「こんなに大切な物を…… 宝物にして一生大切にするよ。ありがとう……」


 武器と言うものを手にしたのは、生まれて始めての事だったというのに、俺はこの武器こそが、自分にとって"生涯で唯一の最高の相棒"である事を確信した。


「良かった。私だと思って可愛がってやってくれよな」


「勿論さ!毎日抱いて寝るよ!」


 本当は刀だけではなく"本物"も抱きたい!と言いたかったが、まだそれを叶えるには時間と勇気を持ち合わせていなかった。


 それにしても、この刀は以前マテラを救ってくれた『彼』が持っていた"黒刀"を真似て作った物らしいのだが、

 何故か日本刀に"とても良く似た形状"をしていたのだ。


 マテラの拳と《核熱魔法》で鍛造した刃は片刃で反りが入っており日本刀特有の"刃文"まである。

 滑り止めと魔力を伝導させる為に『髪』で作られた"柄巻き"など、完全に日本刀そのものなのだ。

 ここまでそっくりだと、ただの偶然とはとても思えなかった。


 もしかして…… その【異世界人】である『彼』も、日本人だったのでは無いだろうか……

 

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