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【寄り道】竜の女王は思っていた

 しかし、佑弥が気絶した時は本当に焦ってしまった。


 私は、あの時の佑弥の姿を思い起こしていた。

 余りにも佑弥が優秀だったので、ついつい力加減を間違ってしまったのだ。


 今の私の力は、その他全ての"一切の追随"を許さない程に強大だ。

 それなのに、私は自分が"強者"であると言う事を忘れてしまっていたのだ。


 子供がうっかり小さなアリや小動物を傷つけてしまうように、思わず佑弥を必要以上に傷付けてしまった。

 その事を、私は深く深く反省した。


 佑弥が『彼』と同じ『異世界人』だったからだろうか……?


 記憶の中にある、圧倒的な力を持っていた異世界人の『彼』の姿が、佑弥と重なってしまう。

 あの目、身体に浮かび上がる痣、纏っていた雰囲気……

 間違い無く『彼』と佑弥は同じ種族だろう。


 最強だった『彼』の姿が佑弥に重なってしまって、いつもよりもほんの少しだけ、手加減を間違えてしまったのだ。


 しかし、あの漆黒の闇に似た"黒い目"と、肌の下に隠れている"黒いモノ"は一体なんだったのか?


 私の攻撃を受けて傷付いていく度、佑弥の白目の部分は漆黒に染まり、身体には不気味な"影"のような痣が浮かび上がってきた。


 訓練の後には直ぐに消えてしまったが、あれはむしろ"痣"というよりは、まるで何か得体の知れないモノが佑弥の中に潜んでいる様に見えた。


 佑弥はその事に気付いていないようだったが、

 異世界から来た『彼』にも同じ様な特徴があったらしい。

 父や姉によれば、戦闘中の『彼』の目は、まるで光の一切届かない"闇"の様であったと……


 種族特有の物なのか?

 だとしても、他の様々な不可思議な現象も、ただの"体質"などと言えるのだろうか?


 そもそも《魔法陣》も無しに、星が生む"重力"を操る事など、私でも不可能だ。

 そんなとんでもない現象を、佑弥は特に意識する事も無く自然に起こしているのだ。


 それに、あの成長速度にも驚かされた。

 今まであんな速度で成長する種族など見た事も無い。

 "真祖"である私が何年もかけて到達した領域に、佑弥はたった数日で到達してしまったのだ。


 有り得ない……

 だが、現実にソレは目の前に存在している。

 認めるしか無いのだ、佑弥は紛れもなく"天才"なのだと。


 間違いなく、佑弥はいずれ私と"並ぶ"程の『最強』の存在となる。


 それ程の可能性を、彼は感じさせてくれる。

 まあ、最低でも"何十年"いや"何百年"かぐらいはかかるかも知れないが……

   

 それだけの時間、佑弥が私の事を嫌いにならずに一緒に居てくれたら良いのにな……


 だがもし、佑弥が私を恐れて、私の前から去ってしまったなら……


 どんな者でも"孤独"という敵には敵わない。


 一人ぼっちで洞窟に篭っていた、あの『時間』という名の牢獄の事が頭に浮かび、また悲しくなった。


 全ては"使命"の為に。


 私は、信じられない程の『時間』をかけて、ありとあらゆる化学や魔法を研鑽し続け、必要とあらば他者の命までも吸収して生き長らえてきた。

 それ程の事までして"使命"を護って来たと言うのに、もう誰も、居なくなってしまった。


 生きてくれている……


 辛く長い孤独を味わった私は、たったそれだけの事で命を大切に思う事が出来た。

 自分が"強者で権力者"であったのは、生まれ持った生来の物であるし、更にそれを磨き続けた私は、長い間、"強さの頂点"に居座り続けている。

 強さから生まれる奢りや傲慢さなどは、とうの昔に消えて無くなっているし、今の私は決して力の弱い者を見下すような事はしない。


 だが……私は戦い続けなればならない……


 大切なモノを守る為に、力を求め続けてきた私だ。

 友や家族を守る為、そして"使命"の為になら、あらゆる手段を戸惑いなく非情に行使する。

 その結果、私は他の誰よりも他者を殺め、生命を吸収し続けて来た。

 だがそれ故に、生命の大切さ、尊さをとても大切に思っているつもりだ。

 この先も私は戦い続けるが、なるべくならば"無益な殺生"はしたくなかった。


 その為に誰もが恐れる邪悪な怪物の姿となって、誰も来ない洞穴の奥に潜んでいたのだ。


 それなのに、私を恐れずに興味を持って近づいて来た佑弥の事が、可愛くてたまらなかった。

 孤独から解放された私は、佑弥の事がまるで我が子や家族のように愛おしく、大切に感じたのだ。

 たとえ、佑弥と出会ったのがほんの数時間前で、ほんの短い間の付き合いだったとしても。


 全ての知的生命体が絶滅してしまったゼジャータを、たった一人で生き続け、莫大な時間をかけて自分を磨き続けた私は、今では過剰に強くなり過ぎてしまった。

 だから、もはや他者を吸収する意味も、これ以上強くなる必要も無い。


 今の私には恐らく"寿命"と言うものも無いのだろうし、この先"老い"もしなければ、永らく死を感じさせる様な強敵や事象にも出会っていない。

 それはきっと、これからも感じる事は無い。


 何故なら、私を殺せるような存在がこれから産まれてくる可能性など論外だから……


 絶対に、現れる訳が無い。


 きっと、私はこの先も永遠に近い"時"を生きてゆく。



 だが、佑弥ならもしくは……










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