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地獄の出入口 ①

「私の指導は厳しい…… だが、必ずお前を一人前の戦士にしてやる。辛くても挫けずに頑張れるか?」


「勿論です。絶対に諦めたりしない……」


 先程の『臭かった思い』を嘘にするつもりはない。

 根性と忍耐だけは自信がある。


「勿論死なない様に手加減はするが、私の訓練にかつて誰一人として耐えきれた者はいない……のだ。弱音など吐かないと誓えるか?」


「え…… うん。頑張ります」


 少しだけ想像してたのと違うが、頑張ると決めたのだ。


「わかった。そこまで言うのならば。佑弥は基本的にまず体力が少な過ぎる。まずは訓練の基本"基礎体力作り"から始めよう」


「はい!」


「よし!じゃあまずはあの岩の横に立ってくれ」


「は、はい!って今から!?」


「強くなりたいのではないのか?」


 早速訓練を始める事になった。

 教えて貰うのは有難いが、急過ぎる。

 この人には"心の準備"とかそーいうのは無いのだろうか?

 あれ程大量の怪物肉を食べた直後で、まだお腹はパンパンで動くのもキツいと言うのに……


 急過ぎる展開に戸惑ったが、自分で頼んだ以上、やらない訳にはいかない。

 それに、俺は地球のレベルでは最高級に鍛えこんでいる。

 先程は"不覚"をとったが、少しは自信もあった。

 そもそも、竜であるマテラと比較する事がおかし過ぎるのだ。

 にもかかわらず"貧弱"扱いされる事はかなり不本意だったが、まずは言われるがままに"基礎体力作り"をする事にした。

 どんな過酷な訓練だろうが乗り越えて、彼女を見返してやるのだ。


 俺は誓ったばかりだ。

 強くなれるならば何だって良いのだ。


「分かった!基礎訓練っていったい何をするの?」

 

 これから行われる"地獄"の事を分かってなかった俺は、まるで子供のように期待に胸を膨らませていた。

 地球では、俺はわざわざ特殊能力を必死で隠していた訳だったが、実は幼い頃からスーパーヒーローと言うものに憧れていたのだ。

 未熟なヒーロー達が"師"の訓練によってメキメキと実力をあげていく過程は痛快その物だった。

 本気を出せばもしかして俺も?などという期待もあった。


「肉体作りを始める前に、先ずは佑弥にどのぐらいの力があるか確認してみよう」


「なんだ。そんな事か!これでも体力だったら少しは自信あるよ。一人で何年も訓練していたからね!」


 俺は鍛えられた握り拳を胸の前で掲げた。

 か弱な人間扱いをされては困る。

 見た目は普通の人間でも、中身は違うのだ。

 一人の間、ひたすら何年も腕立て伏せにスクワット、ランニング、『力』で体重を増加させて考えつく限りの筋トレをしていたのだ。

 恥をかかない程度に腕力はある。


「そうか…… ふむ、じゃあこのぐらいかな?」


 マテラはおもむろに近くに転がっていた岩を持ち上げた。

 瞬時に俺の血の気が凍る。

 持ち上げられた岩は人間と同じぐらいのサイズがあった。

 それをマテラは軽々と片手の掌に乗せていたのだ。


「ちょ、ちょっと待て! それをいったいどうするつもりなの!?」


「これは私の国【スメーラ】に古くから伝わる"岩潰れ"と言う身体能力を図る為の競技なんだ。佑弥は全身を使ってこれを支えてみてくれ。さて何秒持ちこたえられるか?」


 俺は真剣に我が耳を疑った。

 目の前の女性は、気でも狂っているのか?

 だが、彼女は至極真面目な顔で話している。

 いくら自信があるとは言え、そんなもん常識の範囲を超えてるぞ!と思っている間も無く、マテラはその巨岩を俺に向かって放り投げて来たのだ。


「いや!流石にそれは無理だって!! ちょ!待っぐぅわいあぁぁ!……」


 ズシーン!と、正気を疑う程の重さが俺の両腕にのしかかる。

 何とか圧死する事だけは免れたが、余りの重さに声を出す事すら出来なかった。

 無理だ。

 身体中がミシミシと音を立てている。

 筋肉や関節が悲鳴を上げている。

 これ以上、この岩を支える事は出来ない。


「ぬぁああ!」


 気が狂うほどの超重量の岩に潰されないように、咄嗟に巨岩を《減重》した。

 思わずズルしてしまったが、こんなの訓練でも何でも無い。

 ただの拷問としか思えない。

 想定外過ぎた。

 いくら強くなる為とはいえ、死んでしまっては意味が無いのだ。


「はぁ……はぁ……」


『力』のおかげで少しはマシになったが、それでもなお、岩は凄まじい重さだった。

 だがこれなら、今の俺なら耐えられる。と思った。


「よし!じゃあ"岩潰れ"を始めるぞ!」


「え?」


 今度こそ本気で彼女の頭を疑った。

 今の俺のこの決死の状況が見えないとでも言うのか?


「少しずつ《魔法》で岩を重くしていくからな、もう無理だと判断したらすぐに言ってくれよ」


「無理!もう限界です!ぐわぁ!」


 ズシン…… どんなカラクリなのかは分からないが、《魔法》によって比重を変えられた岩が、突然重さを増した。

 関節が悲鳴を上げていた。


 ズシン……

 更に重さが追加される。

 痛い。痛すぎた。

『重い』という感覚を通り越して身体のあちこちから『ブチブチ』と何かが切れていく激しい痛みを感じた。


「何だ?何だか不思議な"違和感"があるな……」


 俺のイカサマがバレかけていた。

 とっくに俺の筋力は限界を超えている。

 今はありったけの『力』で必死に耐えているだけなのだ。


 ズシン……

 また更に比重が追加された。

 ついに、俺の『力』の限界も超えた。

 腕の骨がボキンと折れ曲がり、俺の身体中からプチっという物が潰れる音が出た。








 


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