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真実へ ⑥

「そんな!人間はそんな悪人ばかりではありません!俺を育ててくれた人達みたいな優しい人だっています!」


 あれだけ憎んでいた人間とその世界でも、他人に貶されると腹が立った。

 まるで自分の事を貶されてる様に感じてしまったのだ。

 いや、育ててくれた家族や自分に優しくしてくれた人達を悪く言われるのは、自分の事を言われる以上に腹が立った。

 この世界でも既にイワノス達の様な気の良い連中にも出会えている。

 人間がどうしようも無い存在なのは分かっていても、全てがそうでは無いのだ。


「おいおい、そんなに怒るな。お前も人間じゃあ無いやろ?だがすまんな、気を悪くさせてしまった。せやけど、それでもそれが儂らソルモン人全ての正直な真意なんや。勿論お前の言う通り、人間の中にも善人はおるんやろう。儂らソルモンの中にも悪い奴はおる。せやけどそれでも儂らソルモンと人間は決して相入れる事は無い。マテラ様との"約束"さえ無ければ今すぐにでも奴等を滅ぼしてこの星を取り戻したいぐらいなんや……」


「そんな!そこまで……一体貴方達と何があったと言うんですか……」


「ふむ…… 人間との事はもうええ。儂らにも理解できん事があるように、今のお前にも理解出来ん事があるんやと思うてくれ。それに、"約束"がある限り、心配せんでも儂らソルモンから"事"を起こす事は絶対に無い」


 アマダインの岩石そのままの顔の奥から覗いている瞳はとても強い物だった。

 何がそこまで彼らソルモンと人間を隔ててしまったのかは分からないが、それ以上の事をアマダインは一切語ろうとしなかった。

 幼いラーの態度を思い出して見ても、この確執は相当に根が深い。

 悔しいが、自身が人間ですら無い俺にも、これ以上人間の事を擁護する資格も無いように思った。


「分かりました。人間との事はこれ以上は言いません。こちらこそ、事情も知らずにすいませんでした。ですが、マテラは一体貴方達とどんな約束をしたのですか?」


 すぐには埋まりそうにない深い溝の事は取り敢えず置いておく。

 それよりもマテラと交わしたという約束について聞く事にした。


「ふむ...… 儂らは本来他の生命を無意味に殺す事は好まん。とはいえ、生命を全く殺さん訳では無い。モンスターや獣共とか、食う為には殺すしな」


「はい」


「そんな平和的な儂らやが、同時に肉体的な個体差が著しく、力比べが大好きな儂らは激しく戦闘を好む種族でもあった。いくら平和的言うてもそれはあくまで自分達に危害が及ばぬという前提合っての事や」


「はい、それは勿論……」


 マテラも何かを守る為には躊躇無く殺戮をする。

 幾度となくそれは見ていた。


「マテラ様はな、そんな肉体的に他の種族よりも遥かに優れた儂らソルモン人に突如"他の知的生命体への侵略、殺戮をやめろ"という要求を出したんや。当時、ゼジャートスには儂らの他に人間達はおろか、他の知的生命体などおらんかった。最初は何を言われとるか分からんかったし、そんな未来の可能性の事など微塵も知らんかった儂らはそれを快く承諾したんや。だが、マテラ様はまるで未来で人間共みたいな他の知的生命体が生まれてくる事を知ってはったんかもしれんな。元々他の生命を意味無く殺す事を好まんとはいえ、その約束が無ければ、無尽蔵に増え続け大地を我が物顔で踏み荒らす今の人間達を見過ごす事など出来んかったやろう……」


「そんな事が…… マテラはいずれ今の人間達の様な存在が現れる事を知っていたと言うのか…… あっ!」


「どうした?」


 話しながら頭を過った。

 マテラがソルモンが人間達を殺さぬ様にした裏の真意を。


「いや……」


 それは、俺が人間に育てられ、人間に似た容姿を持っていたからでは無いだろうか?

 いずれ辿り着く時代で、再び俺が孤独になってしまわない様に知的生命体である人間を殺す事を禁じたのでは無いだろうか?


 その気になれば今の俺ですら国の一つや二つ滅ぼせる事ぐらい出来る。

 アマダインや他のソルモンがどのぐらいの戦闘力を持っているのかは計り知れないが、垣間見えたラーママの力がソルモンの平均的な物だとしたら人間など造作も無く壊滅させる事が出来るだろう。

 そんな事が起これば、俺の行く全てのゼジャータ、ゼジャートスの時代には人間が居ない世界になってしまうのだ。


「まあ、それを差し引いてもマテラ様に受けたご恩は計り知れん。何があってもその約束を違える事など無い」


「わかりました……」


 だが、それをここで言う事は出来なかった。

 あくまでも俺一人の推測だし、アダマインは俺がかつてマテラと共に生きていた神話の時代の事を疑っている。

 それに、何だか俺一人の為にそこまでマテラが気を使ってくれたという事が、自分で考えてもおこがましい感じがした。


「あ、あと俺を襲ったあの姿を消す力のある不思議な敵は何だったのでしょうか?見た目は人間のようでしたが、それにしては余りにも強過ぎました。お母様の助けが無ければ、俺は確実に殺されていたと思います……」


 俺を襲った正体不明の敵。

 問答無用で確実に俺を殺しに来た。

 何とか生きのびて事なきを得たが、普通の人間なら何度も死ぬ程の大怪我を負わされている。

 バビロディアで圧倒的な力を持っていると自惚れていた俺を、あれだけ一方的にズタボロにする程の危険な力の持ち主がゴロゴロいると考えると恐ろしくなる。

 何故かソルモンである子供のラーは殺戮の対象外にされていたが……


「ふむ。あいつらの事は儂らも詳しくはわからん。お前の言う通り普通の人間とは違う。恐らく人間の中でも特別に悪い奴等が儂らソルモンの力をどうやってか手に入れたんやと思う。やから儂らはあいつらの事を『偽物』って呼んで見付けたら追い払っとるんや。世界中で人間を攫ったり襲ったりしとるクソみたいな奴等やけど、あんなんでも一応"知生体"やからな。約束に従ってこちらから殺す事は無い。今回みたいに儂らやその仲間に手を出してきた時は別やけどな……」


「奴らは人間を襲っているんですか?」


「そうや、数はそんなに多くないとは思うが、儂らも人間をずっと見守ってる訳や無いしな、奴等の規模や正確な被害まではわからん。どうやってか知らんけど儂らに似た力を使いよる。儂らの敵にはならんけど、人間には到底手が出んやろな」


 人間に似た、もしくは元人間でソルモンの力を持つ存在……

 何らかの理由で同種である筈の普通の人間達を襲っている。

 不気味だった。

 人間だけに肩入れするつもりも無いが、俺を人間だと思い込み襲ってきた以上、再び交戦する可能性もありそうだ。


 しかし、あの恐ろしい戦闘力。

 次襲われた時、今の俺で再び生き長らえる事が出来るのだろうか……











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