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真実へ ④

 ラーの年齢の事も気になるが、それは取り敢えず後回しにする。

 まずはラーの両親に話を聞いてみよう。

 それで俺の悩みの大半は解決する筈だ。


「って、親父さん何処にいるんだ?家じゃないのか?」


「うん。父ちゃんはお仕事中やからな。働いてる所に来いって言うてたわ」


「まさか、またラーちゃんの親父さんは王様とかって言わないよね?」


「王様って何や?ようわからへんけど、父ちゃんはそんなんちゃうで?」


 ふむふむ。

 少し安心する。

 日本の一小市民だった俺には王族だとかその他の権力者には滅法弱いのだ。

 ラーの両親が何となくある程度の権力者であるのは予想が付くが、そこまで畏まる必要も無さそうだ。

 そんなに偉い人に拝謁させてもらったとしても、どう対応していいのか分からない。


「しかし、結構歩くな。まだ着かないのか?真っ白な風景ばかりで俺の距離感がおかしくなってるからかも知れないが……」


「そうか?そんなに遠くはないで。と言うかもうもう着いてるわ。あの扉の奥に父ちゃんが居るわ!」


「なっ!」


 ぼんやりと歩いてたから気が付かなかったのか。

 目の前には高さ20mはあろうかという巨大で真っ白な門が立ち塞がっていた。

 門だけでその大きさである。

 白くて全貌は計り知れないが、建物の大きさはその数倍はありそうだ。

 と言うより、間違いなくここの主はとんでもない権力者だと言う事になってしまう。

 緊張するなと言われても、嫌でも身体が硬直してしまう。


「ラテマ様!お父君がお待ちかねです!」


 扉の前で見た目イカつい悪魔の様な見た目の門番がラーに敬礼している。

 やはり見た目に反して表情だけは柔らかい。

 だが、余りにも怖過ぎてとてもフレンドリーに出来そうには無い。


「ありがとうっ!ほらっ兄ちゃん早行こう!多分美味いもんが沢山食えるで!」


「ああ……」


 普段なら喜んでいたかもしれないが、今の俺にはご馳走を喜ぶ程の心の余裕は無かった。

 まるで王宮の様な建物に案内され、内心それどころでは無い心境だったのだ。

 この緊張感は校長室に呼び出される10倍は緊張感があった。


「おい、俺なんかがこんな場所に来て本当に大丈夫か?」


「何言うてんのや伝説のユウヤ様ともあろうもんが!何にも怖い事なんか無いで!心配せんでもママと違って父ちゃんは優しいから大丈夫や!」


「それ、絶対に勘違いしてるよ……まあ、ママより優しいってのは嬉しいけど」


「ママはめちゃくちゃ怖いからなぁ。ウチも兄ちゃんが寝てる間散々怒られたわ……」


 頭をスリスリするラーの仕草の元には、幼女に似つかわしくないタンコブが出来ていた。

 きっとママにお仕置をされてしまったのだろう。

 微笑ましい光景にほんの少しだけ緊張が解かれながら、ラーに先導され巨大で立派な通路を進んでゆく。

 驚いたのは、想像してた様な守衛や近衛兵的な戦士風の人達が全く居ない事だった。

 建物の規模は巨大だが、中で見掛けたのは数名のお手伝いさん的な女性悪魔だけで、『城』と言うよりはただの超『豪邸』と言う感じ。

 町人も見た目はイカついが、目や態度は温厚そのものだし、敵に襲われたりとかそういう好戦的な環境では無く、とても平和な町だと言う事が伺える。


「父ちゃん!ただいま!連れて来たで!」


 またもや白過ぎてわからないが、いつの間にか目的の部屋に着いていたようだ。

 ラーがノックもせずに豪快に扉を開いた。

 扉の奥には高さ5mはある巨大な岩の塊が有った。


「おおっ!よう来てくれはった!貴方がウチの可愛いラテマを助けてくれはったユウヤさんか!呼び付けて申し訳無い。儂はこの身体やから狭い家には入れへんくてな!」


「っ!!は、はい!とんでも無いです!娘さんにはこちらこそお世話になっております!」


 そして、その岩が動いて喋りかけて来たのだ。

 取り敢えずその岩に返答したものの、今でもその岩が本当にラーの父親なのか判断出来ない。


「ようこそ我が空中都市『セミラモス』へ!儂が"町長"のアマダインや。ほうほう、聞いてた通り中々珍しいお方やな。儂らソルモン人とも違うようだが、人間でも無いな?儂も1000年以上生きてはいるが、さっぱり理解出来ん。ユウヤさんは一体何者なのかな?」


「は、はい。私は……」


 目の前の岩パパ、アマダインが1000年以上の高齢だと言う事に驚く。

 そして彼らの正体も。

 バビロディアの神話や歴史書は片っ端から記録しているが、セミラモスやらソルモン人等という単語も初めて聞いた。


 そして、俺は自分の正体がわからない事や、生き別れた二人の仲間を探して旅をしている事。

 偶然にもラテマと知り合い、その故郷を探していた事。

 何故かこの人達には事実をありのままに伝えても良い気がして、異世界から飛ばされて来た事まで。

 自分の知りうる全ての事を話した。

 アマダインはウンウンと静かに頷いて俺の話を真剣に聞いてくれている様に感じた。


「そうやで父ちゃん!兄ちゃんはなっ!伝説のユウヤ様なんやっ!父ちゃんも知ってるやろ!?マテラ様の最大の親友のユウヤ様なんやで!」


「まあまあ、そう早るな。ラテマが『神の遺跡』で何かを見たのは本当なんやろう。やけどな、その《時間転移》ってのは流石ににわかには信じ難いな……」


 確かにいきなりこんな話を信じてくれと言う方が無茶な事だと思う。

 とは言え俺は嘘を付いてはいない。

 マテラの情報を少しでも知りうる為に、こちらもなるべく包み隠さずに言うべき必要があると思ったのだ。


「それにな、マテラ様の神話なんか一体いつの話だと思っとるんや?儂らや爺さん達が産まれるもっともっと前の、一体何時なんか分からんほど大昔の話やぞ?そんな大昔からユウヤ様だけ飛んで来たっちゅうのか?」


「そうや!そうマテラ様は言うてたわ!ウチはこの目でしっかりマテラ様を見たんやっ!」


「いや、え……?」


 ゾワッと背中に嫌な感じがした。

 確かに……

 今は…… 二人と強制的に引き離されてから、一体何年経っているのだろう?





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