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あの乙女ゲームの攻略対象“悲劇過ぎる英雄”に転生した?!  作者: 猫屋敷みい子
序章 本気でこのキャラには転生したくなかった
6/6

天敵の存在




頭が、ずっと岩で叩かれ続けているように痛く、呼吸も苦しい。


息を吸おうとしても、肺が弱っていて空気をあまり取り込めない。


私は半分眠ったままだが、働かない頭を必死に動かした。


(あの夢で見る少女ゆとりは、私の前世?!)


と、ティエンである私が心の中で叫ぶ。


(いや待って、もしや、私、ゲームのキャラ“ティエン”に転成してる?!)


対して、ゆとりとしての私も悲鳴を上げる。


そう、夜毎に夢で見た少女、ゆとりは私だった。


まとめるとこうだ。


まず、私、ゆとりはベランダから落ちたあの日に死んだ。(享年十八歳)


その後、『王女さまと五神の伝説』の登場人物“ティエン”に転成した。


そして、私は“ティエン”として今、新しい人生を歩んでいる。(現在十五歳)


その上で、ティエンとして攻略対象の一人“白虎王子”と婚約した。


そして、白虎王子の謀反計画を知ってしまい、ライとともに逃げる途中で崖から落ちた。


崖から落ちる衝撃が、マンションの48階から落ちる衝撃に酷似していたため、


ゆとりの記憶ごと思い出してしまった、ということだろうか。




そうだ、困ったことになった。


ティエンというキャラ、つまり現在の私なのだが………


(唯一ハッピーエンドが用意されていないキャラに転成してしまった!!!)


そう、私はあの日、マヌケにもゲームを追いかけてベランダから転落死する。


だがその前に、ティエン含めた五人の全攻略対象をクリアしている。


15年以上も前のことで正直うろ覚えだが、ヒロインが誰を攻略してもティエンには悲惨な結末しか訪れなかった。



中でも、一番に悲惨なのが、“ヒロインと結ばれたとき”だ。


ヒロインと愛し合いながらも心中するまで追い詰められる。白虎王子達に自殺させられるのだ。


それだけは避けねばなるまい。


でも、幸いにもゆとりの記憶を思い出した私は今、半分はゆとりなのだ。


前世のゲームでの記憶さえあれば、王女との恋愛フラグを回避出来るだろう。


何より、女の子に恋するなんてありえない。


ところが、ティエンには絶対的な天敵がいる。


彼がいるために、ティエンはヒロインと結ばれなくとも、どちらにしろ非業の死を遂げる。


その天敵とはティエンの婚約者“白虎王子”に他ならない。


もう一つの悲惨な末路が、“ヒロインが白虎王子と結ばれなかった場合”に起きるからだ。


(というか、ヒロインが白虎王子以外と恋愛するか、白虎王子ルートを攻略しようとして失敗した場合も含まれるので、ほとんど全ての場合になり、かなりの確率だ)


ヒロインが白虎王子と恋愛してその心の闇を救わない限り、


ほぼ全てのルートで、白虎王子は秦国・大王様に対して謀反を起こす。


敵国から送られた人質王子という設定上の立場もあるのだろう。


ティエンは、婚約者である白虎王子の謀反イベントが起きると、これを止めるために立ちはだかり、ヒロインである王女や、他の攻略対象の力を借り奔走する。


ここで二通りの結末が待っている。(いずれにしろティエンにとっては、バッドエンドだ)


第一が、ティエンの作戦が失敗して、王女であるヒロイン含む、全員白虎王子率いる楚国兵に暗殺される場合。


第二は、ティエンの作戦が成功して、王女含む秦国側のキャラクターは助かる場合。


ヒロイン達は助かり、白虎王子は謀反失敗して楚国へ帰っていくのでゲーム的には良い結果だ。


ところが、ティエンは白虎王子の謀反を止めるために、ここで必ず自らが犠牲になる。


まずティエン自らが軍を率いて王子の用意した楚国兵と戦い、撃退する。


もちろん、計画を邪魔された白虎王子は激しく恨みに思い、楚国へ帰る前にティエンを自ら殺害する。


ティエンの寝所にやって来て、片手で首を掴んで絞め殺すのだ。


ヒロインや他の攻略対象キャラ達も、軍を率いて助けへ向かうが間に合わず、ティエンはヒロインに対し友人として言葉を残して死んでいく。


と、何とかここまでを思い出すことが出来た。


まあ、細かいことは考えても仕方ない。


とりあえず。基本的にティエンを殺すのは白虎王子だ。


というか、今だって殺されかけている。崖から足を滑らせて落ちたのだって、半分は自業自得だが、元はと言えば白虎王子の謀反計画が原因なのだから。


私はティエンでもあり、ゆとりでもある。


勇敢なティエンは、武力でゆとりを守り、前世の記憶のあるゆとりは、情報でティエンを守る。


これで行こう。



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