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誰かのお話

作者: みち木遊

誰のお話なんでしょうか。

でも、しらない人の話ではない気がするんです。

 今日も朝早くから出勤して、内容を確認したら、取り敢えず予定通りに動くことにする。

 上司の顔をうかがってはペコペコ。

 取引先の顔をうかがってはペコペコ。

 ママの味かっていうくらいにペコペコ。

 やってらんないと車で軽く切れながらもペコペコペコペコ。

 そして、気付けば夜になる。

 タイムカードを切って、終電一本前の電車に乗って帰宅する。

 自宅のパソコンを夕飯の傍らに開けば、だれにも評価されない何時しか現実と周囲の期待に絶たれた夢の残骸を未練がましく続ける。

 感想だって、評価だって、ハートだって、フォロワーさんだって大して増えないし、むしろ数値は丸だけを示す。

 仕方ないから鳥マークのSNSを開くと、『最底辺の私がー』とか、『下手なものですが―』なんて、自分より輝かしいものが検挙を装った自尊心と自身の言葉が飛び交っていた。

 やってられない。

 またそんな言葉を心でつぶやきながら、未練を連ねる。

 脳内には完璧な形。

 手元には不揃いな異物。

 拙いなんてもんじゃない。

 でも、それでも、未練のために未練を連ねる。

 完成の見えない理想郷を不揃いの異物をかき集めて、積み重ねて、組み立てていく。

 そして気付けば、寝る時間になって、寝ることにした。

 明日も頭からこれだ。

 また明日。

 また、かしらから。

誰かは言いません。

誰かは知りません。

でも、今日もそれを繰り返しているのは確かなんです。

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