7 特訓
字下げ編集をタヌキは覚えた、ので修正。
枯れ木エルフと共鳴した世界樹の魔力がクーに降り注ぐ。
目を閉じて待っているが、特に何も変化が無くてパチクリする。
「ふぅ、分かったぞ。治癒の力が治癒の魔女から与えられておる。他の力はその者本来の力だが、世界樹の力が濃く出ておるな」
「クーに世界樹の力があるのはなぜでしょうか?」カナリアが興味深げに聞いている。
「うむ、ヒール草の影響だの、あれは世界樹の力を微かに宿しておる。薬は過ぎれば毒ともなる、治癒の為に食すならばよい。死ぬであろう量を普段食して生きていることこそ特異性よ」
カナリア達三人の視線が自分に集まる。何なの?
「ではクーはヒール草のおかげで力のあるタヌキになっただけ?」
「そう言う訳じゃの」
ガックリと肩を降ろす三人。
「質問!ヒール草食べても大丈夫?」大事なことだよね。
「普通なら苦しむのだが、それが無いなら大丈夫じゃろ」
他の人は食べられない物を食べられる自分は幸せだなーと思った。
「長老様、ありがとうございました」
カナリア達が頭を下げるのを真似する。
人間のしきたりと言うやつだろう。
外に出ると向こうから少年3人とおっさんがこちらに来る。剣を背負った人と弓を背負ったエルフ、盾を持っているちっこいのを怒っているおっさん。
世界樹へと向かって行った。あ、剣の少年がげんこつされた。
「そう言えば勇者が来ていたわね」
「勇者?」
「人間の中でも抜きん出て強くなる素質があるのよ」
「まだ弱い?」
「そうね、少年だし。魔王討伐に向けて特訓の最中ね」
「魔王」
「熊と同じで暴れる悪いやつよ」
「クー、熊倒す技、覚える」
「倒せる様になりたいってこと?」
「うん」リーシャを守れないとね。
カナリアは少し笑いながら言った。
「ナルバに教えて貰うといいわ。なんたって隊長だもの」
「知識が要るなら私の書庫を見てみるのもよいでしょう」
▽▽▽
イースリーフへ来て1週間経った。
自分は必死の特訓により料理を覚えた。辛かったが食事の為である、基本的な調理は出来るようになった。食材は……人が食べられない物を教え込まれた。
リーシャが第一の師匠なら、第二はチヨであろう。
ナルバに木剣を貰って朝の鍛練もそこそこやっているが、人化で動くのは自分の体を動かす以上に大変なのだ。
ナルバの家の裏ではカンカンと高い音が響いている。ピョンピョンと左右に跳びながら素早く木剣を振るが、ナルバに防がれている。全く当たる気配がない。
当たる前に魔法で収納して逆から当てる霞斬りも避けられた。
精霊魔法で風の目潰しも効かない、風を使って振りを速くする、疾風斬りも防がれる。
力任せに振り下ろすとちょっと低い音がして手の中から剣が消えた。いや、後ろに落ちた。
「参ったよ」
「参りました、だ」
「参りました」
木剣を拾って収納し、元の姿に戻って家に入る。
ヨードが持ってる本の中から勇者の技をパクったのに勝てない。ヨシヒコは歴代の勇者の中でもトップクラスの強さらしいのだが、自分の力では使いこなせないのだろうか?
アカリの所に行こうとするとナルバにしっぽを持ち上げられた。いやん。
「きゅーん」何をする。
「汗かいたら拭く必要があるんだよ。クーはそろそろ洗濯だな」
毛皮乾かすの大変なんだよ。じたばたしてみるけど意味無いね。
桶に水を出してスポンジ草でゴシゴシされる。スポンジ草は擦ると汚れを落とす泡が出る、厚めの草で味はしない、と言うか舌が働かなくなるので自分も食べない。
結局精霊に高速乾燥をお願いしてモコモコになるまで横になっていると、表通りが騒がしい。
まだ昼まで時間はあるし……寝るか。
しっぽを丸めて、うとうとしてると首の皮を持ち上げられる。またナルバか。
分かっているよ、表通りの何かでしょ?
でも、タヌキの手を借りるほど忙しいのかね。
ぶらぶらしながら人化する。
襟を摘ままれて足をズルズル引き摺る状態に変わった。
ドアを開けるナルバが手を離したので立ち上がる。日に日に扱いがカナリアと同じになってきた。信頼の証なのだろうか。
どうやらカナリアのお屋敷近くで勇者達が倒れているみたいだ。
あー、食べ過ぎかな?あれは辛い。二度となりたくないのに、でも食べちゃう。
「何にやられた?」ナルバがおっさんに聞いている。
ちっこいドワーフの少年とエルフの少年、血だらけじゃないの。勇者の少年は疲れてるだけだね、運んできたのかな?
「二体の狼の魔石持ちだ。一体だけかと思ったら裏をかかれて、倒したがこのざまだ」
傷には軟膏を塗ってあるけど治癒の魔法がかかって無いやつだ。
大きな傷は布で縛ってあるけど血が流れている。
「口開けて」
収納からヒール草を両手にごっそり掴んで二人の口の側にもっていく。治癒の魔力を手に込めてると淡いグリーンの雫が二人の口へと落ちていく。
大きな縛っている傷に水で薄めたエキスをかけて、治癒の魔法を込めると、口にしたエキスの苦味に悶絶しだす少年達。ヒール草の美味しさが分からないとは、お子ちゃまだね。
布を取ると傷はなんとかくっついてる。置いてある軟膏に魔法を込めて塗ってあげる。
「ナルバ、終わった」
「あぁ、助かった」
おっさんと勇者の少年はこっちを見て驚いている。
驚く二人を無視して、お昼の料理にヒール草入れたらチヨは怒るかなー、と考えながらクーは家に戻るのだった。
何で自分の作品のポーションは苦いんだろ?
あれか?お腹痛いとセンブリ飲まされたからか。