11 山探索
スズの家ではギン友がテーブルに鉱石を置いている。
石の一部は綺麗な色が覗いている。
「先生がこの中から選んでくれとさ」
うーむ、選べるのは悩ましい。赤もいいけど青も綺麗……
「迷ってるなら自分の魔力に引かれる石がいいわよ」
スズがドヤ顔で言っているけど鉱石に視線は釘付けだ。残念だけど貰えるの一個だけだからね、スズ。
いつもの治癒の魔法を掛ける手前を指先に留めて石に触れると、1つパチパチと緑の火花が散る石があった。何気に他よりも一回り大きい石だ。
「何なの! このあり得ない反応」
「この石はベネットだな、これにするのか?」
「うん」
「カットするなら宝石屋を紹介するけど、どうするよ?」
質問も聞こえない位集中して魔力を流していると、徐々に石が無くなって宝石部分が露出していく。
クーによって、反応の無い石部分だけを治癒の魔力を流しながら収納しているのだが、2つの魔法を同時に使っているので額から汗が流れる。
二人もその集中力に一言も発せず、作業が終わるのを見守っていた。
薄めな黄色の大きめな宝石がテーブルに残った。
「ふー、すげぇな。坊主の魔法か?」
「うん」
光にかざすと、曇った黄色いガラスみたいだ。
「キラキラしてない」ちょっとしょんぼり。
「綺麗に反射するようカットしてないからよ。もし、私にアクセサリー作らせてくれたらタダでやってあげるわよ」
お金無いし、タダならやって貰おうかなー。
「2つ、首にかけるのが欲しい」
「ネックレス2つね、このサイズなら大丈夫よ。二、三日掛かるから用事済ましたら?」
「用事?」
「温泉と調理器具って言ってたじゃない」
手をポンと叩いて思い出した。そうだ店を探そう。
「薬屋どこ?」
―――
「いらっしゃい」
三角帽子のドワーフ老婆が奥から出て来た。
「薬を売に来ました」
トントンと軟膏をカウンターに乗せていく。
「ふん、どれどれ?」
ブツブツと喋る老婆の魔力が目に集まり、瞳が赤く光る。
「あんた、あの鼻垂れに薬売った子だね?」
「薬……先生? 宝石と交換した」
「ふーん、薬を売ってアクセサリーでも作ってもらうのかい?」
「調理道具を買う」
「調理? 包丁とか鍋とかかい?」
「うん」
軟膏は引き取られ、カウンターに銀貨のタワーがひとつ乗せられる。
「けったいな子だね。まぁ、お金が足りなかったらまた売においで」
――
何人かに聞いてオススメの店で商品を見ている。
色んな包丁や鍋が置いてある。
「いらっしゃい、何をお探しで?」
「外で料理する道具一式」
「そうですねぇ、冒険者セットがありますよ」
袋には包丁、鍋、フライパン、ヘラ、オタマ、金属食器類が入っている。薬のお金を渡して他に欲しいものを言っていく。
「まな板と、金属コップ、小さい包丁」
どうやら足りたようで銅貨が帰って来た。
残りの銅貨は不思議なことに串焼きと温泉卵に変わった。
次は温泉探しだ。本によると山頂近くの温泉は効能が良いらしい。熊の傷を治すには入らざるをえない。
……うむ!そうだ、傷だ。
すっかり治って忘れていたけど、治さないと!
鉱山入口近くから更に登ってタヌキで1時間、地面が暖かい。
雲の上に出て山頂を見ると明るい赤の光が見える。温泉かもしれない。
……違った、温泉は燃えない。でも燃えるなら薪の変わりになるかもしれない。魔力を伸ばしてストローみたいに収納していく。
これ以上は足が熱いので下を探そう。付近を見渡すと光を反射している場所が見えた。水なら温泉かもしれない。
岩場に湯気の出ている水場に肉球で触ってみる。
うむ、いい温度加減だ。お湯を収納しつつ温泉に入る。
タヌキの周りに渦が出来てぐるぐる回る。ハッ!これは桶のぐるぐるの巨大版だ、と考えていると頭上が暗くなって上を見上げた。そこには大きなお口に大きな牙がズラリと揃っている姿が見えた後、真っ暗になった。
まさか、いきなり食べられるとは思わなかった。
浮遊感から空を移動しているのだろう。
「きゅーん!」
出せー!と言ってみたけど言葉通じないよね。
『すまないけど、私の子供を見てくれないかい? 世界樹の癒しの力を持つ者よ』
燃える液体を喉に流してみようかと思っていたら声が頭に響いてきた。まぁ、話せるなら何とかなるだろう。間違って食べられないように丸くなって大人しくしておく。
吐き出されてゴロゴロ転がった後、天井にぶら下がる大きなトカゲが……転がって逆さなのは自分みたいだ。
起き上がっても赤くて大きなトカゲ……ドラゴンだこれ。本で見た素手のリザードマンが最後に戦った相手、お互い認めて夫婦になった……あのドラゴンだ!
人化してドラゴンに話を聞くことにした。
「誰を癒す?」
『後ろの巣にいる白い子が弱っているんだ』
後ろには3匹の赤い鱗の自分より少し小さい元気なドラゴンと、汚れた白い? ドラゴンが横になっていた。
『燃えよリザドラゴン』より。予想外の結末に読者は驚愕する。
こいよ、ベネット。実在しないと思う宝石。
(10万ドル)ポンとくれたぜ。ポンポコ