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10 鉱山


 スズの家族と町へと入ると至るところから湯気が出ていて暖かい。

 卵の匂いもする。鍛冶屋からガンガン叩いている音もする。

 奥に行くとさっきより湯気も少なく静かな場所に着いた。


「ここが私達の家だよ」

 スズのお母さんが立ち止まって見せたのは2階建ての石で作られた家だった。今まで森の近くで木の家だったけど……石でも家になるんだね。

「石で出来てる」

「木材はここでは貴重だからね。石なら捨てる程出るし」


 石のテーブルに着いて渋い熱々のお茶をすする。

「紹介がまだだったね。私はドウコ、こっちがギンジ」

「おう! ギンジだ! よろしくな、坊主!」

「クーです。ギンジはゴンザエモンみたい」

「ハハハッ! 勇者みたいか、嬉しいね!」

 筋肉が凄いし、手が大きい。本と違うのは背の高さと声が大きいことだろう。


「さて、スズ」

 ギンジの発言に、隣のスズはうつむいていたが名前を呼ばれてビクッと反応した。

「何で町を出たのか説明しろ」

「うっ……それは、他の町のアクセサリーを見たかったの!でも、反対されると思ったから……」徐々に声が小さくなる。


 何も食べ物持たずに町から2日の距離で倒れてたのか。流石のクーでも驚いた。

「いや、別に反対はせんが、近くでぶっ倒れるような思いつきで行くんじゃねぇよ!」

「まずは隣町へどうやったら行けるか調べましょうね?」

 ギンジは呆れ顔、ドウコは笑顔だが不穏な気配だ。


「アクセサリーって何?」

「ネックレスとかイヤリングとか、身に付ける綺麗な物よ。鉱山から出る小さな宝石で作ってるの」

 スズが綺麗な色の石を見せる。何だか治癒の雫の瓶に光を当てたみたいにキラキラしている。

 こちらも負けじと拾った石を見せる。

「あんたどこから……んー綺麗な石だけど表面だけね。残念だけどアクセサリーにはならないわ」

 ガーン!どうやら拾った石はアクセサリーより下な様だ。しょんぼりと収納する。

「鉱石欲しけりゃ、掘らないとな!」

「掘る!」

「よし! 明日現場の知り合いに会ってくるか」


 こうして当初の目的とズレてアクセサリー用の鉱石探しが始まる。

 夕飯はドウコ師匠の蒸かし芋とベーコン入りの野菜炒めである。味は野菜炒めが塩が多めで芋が進む。芋はふかふかで温泉水で蒸かすのがポイントらしい。

 ギンジは酒がメインだ。飲み過ぎてドウコに起こられる。



 ―――


 ギンジの知り合いドワーフに頼んでもらって、鉱山の浅い場所の採掘を始めた。

 ツルハシは重いので、変わりに小さなピッケルの反対側が平らなやつで、ハンマーで叩いて石を削っている。

 精霊に頼んで打撃部分を柔らかくしてもらってガンガン掘っていくけど見当たらない。


 小一時間で飽きた時に下に落ちてる岩を収納して気付いた。そうだ、収納で掘れるじゃないか。

 手をポンッと叩いて壁に手を当てると、両手で抱える量の岩が消え去った。

 ……これは収納した中に宝石あるか分からないね。


 結局地道に掘っていたけれど、メインの坑道が騒がしいので戻ることにした。ギンジ知り合いのドワーフ、ギン友に何事か聞いてみると。

「怪我人だ、最深部のゴーレムにやられた」

 ゴーレムは鉱石の塊で深い所に発生する、強いやつほど質も良いので腕っぷしの良いドワーフは狙ってゴーレムを狩るらしい。

 鉄パイプ二本に金網を使ったタンカーで運ばれていくドワーフの前腕部は解放骨折して顔面は凄く腫れている。

「ツルハシで殴ったら腕が逆に折れて右ストレートを貰って10メートルはぶっ飛んだってよ!」

「マジかよ! アイツがやられるなんて勝てるやついるのか?」



 どうやら相当に強いゴーレムが出たみたいだ、しかし自分の腕を破壊する腕力って凄いなー。

 はっ!治してあげたら宝石貰えるかも。それなら自分で取ったのと変わりないはず!


「怪我人を治す薬持ってる」ギン友に治癒の雫を見せる

「それで治るのか? まぁ、救護室に連れてってやるが、先生が許可しないと使えないと思うぞ」



 鉱山入口近くの小屋に着いてドアを開けるギン友。ここが救護室だろうか。

「先生、入るぞー」

 奥でドタバタ聞こえる

「おう! 入って押さえるの手伝え!」

 立ててある仕切りの上からドワーフが吹き飛ぶ姿が見えた。

 奥ではベッドに肩と足を押さえられた怪我人と、彼が暴れて被害にあった怪我人が床に倒れていた。


「この坊主が薬持ってきたぞ」

 白衣の腕周りがはち切れそうな眼鏡のドワーフが怪我人をワイヤーロープで縛りながらこちらを見た。

「治癒の雫です」瓶を取り出して先生に差し出すと、それを手に取り、光にかざした。眼鏡がチカッと光るとギョロリとこちらを見た。

「坊主、これはヒール草の成分と魔法だな? 効果と使用法は?」

「治癒の魔法が掛かってます。1滴で結構治るけど苦いし、健康だと毒だって。軽い怪我なら薄める。怪我に振りかけるか、飲む」


「ふーむ」容赦なく原液を1滴、足をギン友に縛られた怪我人の口に垂らす。

 一度ベッドが浮き上がって静かになった。

 勇者の仲間の方が上だな。

 シンとした中に鉄板を持った人と先生が怪我人の腕を引っ張り、鉄板で固定していく。

 骨が出ていた所に雫を薄めて浸したガーゼを貼って包帯を巻いていく。流れる様に対処する二人は相当慣れているのだろう。


 雫を飲んだ彼の顔の腫れは既に引いてきている。

「うん、いい薬だ。少年、これを買い取りたいのだが譲ってくれないかな?」

「あげます。変わりに治癒の雫みたいな綺麗な宝石が欲しいです」

「宝石か……安いもんだ! 後で幾つか候補を見せよう。どこに泊まっているのかな?」

「坊主はギンジの家にいるぞ。しかし、凄い薬だな……飲みたくはないがな! ハハハッ!」


 予定と違うが宝石が手に入ると、涙を流して気絶している怪我人のそばで笑顔のクーであった。



 本来の目的を忘れ去って……



その頃、リーシャは通信の魔道具でカナリアからクーの行動を聞いて微笑んでます。

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