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金髪ツインテor銀髪ロング

今回、長いです…多分

圧倒的だった。


"魔皇"の称号は伊達ではなく、〚漆黒竜:ノワール〛を軽くあしらう。


「…すごいな」

「...うん...」



俺とネリネはそれしか言えなかった。


〚漆黒竜:ノワール〛はブレスを吐き、尻尾を打ちつけ、翼で風を起こす。

それらはここに村があったことなどわからないくらいに、破壊する。

俺たちは魔皇によって守護されているが、魔皇は魔法無しでも一切効いていなかった


と、そこで攻撃が止む。

それと同時に〚漆黒竜:ノワール〛はこちらを一瞥してから、飛び去って行った。


「やれやれ、ノワールも大変じゃのう。」


魔皇はそう言って、こちらを振り向く。


「ムスカリ君と…そこのお嬢さん、大丈夫かい?」

「俺は大丈夫だけど、ネリネは?」

「...大...丈夫...」

「ほっほっほ、それはよかった。」


魔皇らしくない、孫を見るような目で笑っていた。


「それで、なんで俺の名前は知っていたんだ?」

「儂は娘にせかされてのう、娘の願いは叶えんとな。」


娘…ああ、なるほど。


「その娘って…名前は?」


まず、俺はβテストでは"ムスカリ"ではない。

だから俺の名前を知るはずは無い。

だが実際知っていた。


「娘の名?ローズじゃが、それがどうかしたかの?」


ローズ。

それはβテストにおいてあいつが使っていた名前だ。


「それよりも、少し急がんとな。」

「急ぐ?」

「娘がおまえさんを連れてこいと言うので来てみたわけなんじゃが…まさかこんなことになっているとはのう。」


その視線は無くなった村、そして俺の足へと移る。


「仕方ない、じゃが、恨まんといてくれ。」


魔皇はそういうと、俺の目の前でしゃがみ込み、自分の手首を切った。


「ちょ、大丈夫なのかそれ」

「安心せい、この程度じゃ死なんよ。」


ネリネが不安そうに見つめる中、俺の脛の千切れた部分にその手首を触れる。

すると、その血を喰らうかの如く俺の血が魔皇の手首を纏った。


めちゃくちゃ痛い。


「ふむ、これは…」


興味深そうに魔皇が呟くが、俺には何を言っているか聞こえない。

と、その時痛みが一瞬にして消え去った。


「これで大丈夫じゃろう。立てるかの?」


そこには千切れたはずの足があった。



ただし、真っ黒だが。



普通に立つように力を込めると、ネリネが肩を貸してくれる。


「おっ…と、ありがとうなネリネ」

「...気に...しないで...」


その様子を見ていた魔皇は満足そうに頷く。


「それでは帰るとするかの。何、すぐに着く。」


その言葉が終わるかどうか、という所で俺たちは足元に現れた転移の魔法陣で移動した。


 ……

   ………



次の瞬間には、俺たちは城の廊下にいた。

天上にはシャンデリア、窓はステンドグラス、床は真紅のカーペットが敷いてあり、そのどれもが職人の作った一級品だった。



「転移の感覚はどうじゃ?」

「何も感じなかったな。」

「...ちょっと...気分...悪い...」


どうやらネリネは車酔いのような状態の様で、俺にもたれかかる。


すると、魔皇は一番近くの部屋を指さして


「そこの部屋は誰もつかっとらん。自由にするといい。」


そう言うなりいつの間にか姿を消した。


俺は言われた通りにそこに入り、ネリネはベッドに横になる。

部屋は広かったが幸いベッドが近かったので助かった。


俺は部屋の把握でもしようと思ったのだが、ふと重みを感じる。


後ろを見ると、ネリネが俺の服を引っ張っていた。


「...ムスカリ...行かないで...」


涙を浮かべながらそういう彼女の言うことを、無下には出来なかった。


「…わかったよ」


俺はベッドに腰掛け、ゆっくりと息を吐く。


生きてるんだな、俺。


これがリアルなゲームかそれとも現実(リアル)なのかはわからない。

だが、死ななかったことはいいことだろう。

安心したからか、急に視界がぐらつく。


実際はネリネが引っ張ったのだが、俺は気づいていない。


結果俺もベッドに横たわることになった。


すぐに起き上がろうとするが、しっかりと抱きつかれ(つかまって)、俺は動けなくなる。


…そっか、ネリネも怖かったんだよな。


元々NPCが人間より人間的なのがあのゲームだ。

恐怖も不安もあったのだろう。


俺はなんとか体を動かしてネリネと向かい合わせになると、頭を撫でる。


「今はゆっくり休め、ネリネ。」


寝ているネリネがそれを聞いていたのかはわからないが、わずかに微笑む。


村は結局救えなかった。


俺は何もできなかった。


でも


ネリネは助けられた。


その幸せを噛み締めながら、俺もゆっくりと瞼を閉じた。






バタアァァン‼



唐突にドアが勢いよく開き、俺は後ろを見る。

そこにいたのは、俺と同じくらいの年の少女だった。

紅でフリフリの沢山ついたドレスを着た金髪ツインテールの少女が部屋に入ってくる。

額には角が、顔の右半分は刺青がある。

背中には申し訳程度の小さな羽があり、パタパタと忙しそうに動いている。


「アルさん!やっとみつけまし…た……え?」


勢いよく話し始めたものの、近づくにつれてその声は小さくなった。


「そ、その少女は一体…いえ、(わたくし)の邪魔をするのなら、消し去るまでですわ…」



その少女は手の平に魔力を集め、今にも打ち出そうとしている。

と、そこで目が覚めたネリネは俺の顔を見る。

寝起きだからか、この状況だからか頬は赤く染まり、庇護欲を掻き立てる。



「...貴方...誰...?」


不機嫌そうに、しかし俺のことは離さずネリネはドレスの少女に問う。


わたくしはローズ、魔皇の娘であり、アルさん…いえ、今はムスカリさんでしたね。…の、妻になる人ですわ!」


それを聞いたネリネはさらに不機嫌なオーラを出す。

だが、急にそれを引っ込め、俺を見つめる。


ネリネは、俺に問う。


「...本当...?」


それに対し俺は


「そんなわけないだろ、あいつがいってるだkー」



そのとき、俺の口をネリネの口がふさぐ。

一瞬ではあったが、俺はその後の記憶があまりない。

ただ覚えているのは、そのときの満足気なネリネの顔と、それを見たローズの驚く顔だった。

今回でちゅーとりある終了、次回からはもう少し後の話になります

…なります!(多分)

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