『●●●●● が追加されました』
目を覚ますと、目前にネリネの顔があった。
「...ムスカリ...起きた...?」
「おはよう…じゃないか。というかこの状況は一体?」
俺が立ち上がろうとすると、ネリネに頭を押さえつけられる。
「…ネリネ?」
「...あと...5分...」
ネリネ、それは普通寝ている側の言葉だ。
あと、周りを確認してくれ。特にルリとかニヤニヤしてるし。
俺は横に転がり、ネリネから逃げ立ち上がる。
「...」
「そんな上目遣いでも流石にもう起きたからな?」
ネリネもようやく立ち上がるが、他の4人はひそひそ話をしていた。
「じゃんけんに負けていなければ私が…」
「えっと…わ、私はアルさんが大丈夫か不安だっただけなので。」
「スズラン、さっきの狂戦士化覚えてる?もう誤魔化せないじゃん?」
「流石アルファさん!この状況でもう落ち着いてます!」
4人の会話はほぼ聞こえなかったが、俺に関することを言っているのは何となくわかった。
とはいえやっと集まったんだからさっさと神殿行くか。
「お前ら、さっさと神殿いくぞ。」
「...遅い...」
「あ…待ってくださいアルさん」
「そうですわね、さっさと行きましょうか」
「アルさん?歩くの早いじゃん?」
「ルリが遅いだけだ!」
…
……
………
今来た道を引き返し、俺たちは神殿に入る。
ちなみにこのゲームの設定では宗教は主に2つある。
巫女であるスズランは本来神殿や教会とは違う宗教なのだが、お互いは別に対立しているわけではないという珍しい関係なので、問題ない。
主に信仰されているのが神殿や教会を通して教えを広げる唯一神≪persona≫を奉る【輪廻教】
それに対して宗教国家【キク】は和風の装いで、巫女等によって複数の神を信仰している【永劫教】。
こちらは≪アイティオピア≫≪アスク≫≪ラズ≫etc…と、数えられないくらいに多い。
お互い似通った内容な上に、それぞれの伝承にそれぞれの信仰する神が出てくるので実質同じ宗教なんだとか。
少なくとも俺には何故分けたのか分からない。
というわけで到着した神殿だが、特に≪persona≫を模した像は無い。
≪persona≫は姿を偽るとされており、その本来の形は信仰する人によって千差万別=自由の象徴らしい。
ちなみに【永劫教】は数多の神がいることから、これまた自由を象徴するのだとか。
まあそれぞれの形はあるけどね。
この神殿において祈る場所は、疑似太陽と呼ばれる道具によって照らされている。
これは神々の時代に作られたとされる宝物で、プレイヤーでも再現できないのだ。
そしてそれを反射する豪華絢爛な金銀ミスリルを使用したシャンデリアに、血のような鮮やかな紅のカーペット、そしてNPCが座る木製の長椅子がある。
そこにいる神官NPCはこちらを向き、話し始める。
「よく来た、迷える子羊よ。ここには祈りに来たのか?」
「ああ、祈りに来た。」
「そうか、では祈るといい。唯一神様がそれを見届けるだろう。」
俺たちにとってはここでキャラデータの保存が出来なければ積みだ。
巫女としてスズランはいつも祈っていたらしいが、ゲームシステム的に神殿か教会じゃないとセーブされないのでノーカン。
俺たちはそれぞれが願いを込めて祈る。
家に帰りたい。
いつもの生活をしたい。
その類のことを、二人を除いて思っていた。
二人というのは、ネリネと俺だ。
ネリネはそもそもNPCだからわからないが、俺はあちらに戻るのは不可能なので、戻りたいとは思っていない。
だが、みんなが戻れるといいなとは思っていた。
その時、世界の色が反転した。
今祈っている俺達6人以外の全てが、赤は青くなり、白は黒くなる。
そして俺達以外は微動だにしなかった。
いや、俺達は驚愕し動けなかったのだから、実際には誰も動いてはいない。
だが、その目の前で異変が起きた。
真っ黒な"何か"が集まり、人の形を取る。
ふと、その真っ黒な中からこれまた黒い腕が出てくる。
次に足が、体が、そして顔が出てくると真っ黒な"何か"は消失した。
出てきた"それ"は黒い服を着て黒い仮面を付けた白髪の男だった。
毛先が少し黒…赤?紫?のどれともいえない色に染まっており、その服は鎧では無いが布でもない。
正にこれは見る者によってその印象が違うということなのだろう。
その男は俺達に言った。
「"この世界に転生"した気分はどうだ?
死の恐怖はあるか?
生の渇望はあるか?
だが、どうでもいい。
我の最初の指示を下す。
貴様等には我が遣いとなってもらおうか。
我が名はpersona
まずは最初の遣いを頼もうか。
元の世界と此方を繋げ。
それが、貴様等の願いの形だ。」
そして、色が戻る。
それと同時にずっと音沙汰が無かった〚メール〛が届く。
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『Lost Paradise』の皆様へ
この度は唐突の転生、本当に申し訳ございません。
今回は開始時に使用したプログラムへと何者かが介入したことによる事故でしたので、皆様は神殿もしくは教会へと足を運んでいただければデータとして保存いたします。
その後は元と同じく24:1の時間割合、なおかつ安全性をより向上させた物として提供いたします。
皆様は何年もそちらで過ごすこととなられたのだと思いますが、是非その世界について教えていただけると幸いです。
最後になりましたが、運営一同皆様へと多大なる感謝をお送りします。
本当にありがとうございました。
今後はログアウトも可能とし、日常生活も送ることが可能となりますので、【After Ragnarøk】をよろしくお願いいたします。
運営より
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ピコンッ
『ログアウト が追加されました』
やっとゲームが始まる…
あ、アルさんとか呼ばれてるのは元の名前の「村人 A」の呼び方が本人曰く「パーソン アルファ」なのでアルさんやアルファさんと呼ばれています。