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翡翠/最善




「「「「「…………は?」」」」」


示し合わせたかのように、その場の全員の声が揃う

想定の斜め上の回答すぎたのだ


「お、終わってる?は?」

「まぁまぁシェアト、そう動揺しないの

 僕は別に嘘を吐いたわけじゃないんだからさ


 時空に干渉する魔法をそれぞれの属性の『最上位魔法』とするなら、『夜霧』は『身体強化の最上位魔法』の応用といえる

 そもそも、身体強化の最上位って何だと思う?」

「超高速での移動と体を固くすること?」

「違うよサルガス。身体強化の最上位は、肉体の変質だよ

 僕たち生物の体は、気体の一種を肺から取り込んだり、食べ物から『(エネルギー)』を摂取したりして維持されているんだ

 そして、身体強化魔法っていうのは細胞っていう体を作るものに『力』を与えて体の限界を超えた力を引き出す

 身体強化の最上位は細胞そのものに『力』を与えて体を作り替えたりすることができるんだよ

 『夜霧』っていうのは、本来血液とかが回らないとダメな細胞を魔力で保護して、その繋がりを一時的にバラバラにする魔法

 だから、僕が普段からやらせてる身体強化の練習が大事になる



 ああ、でも君たちが本当に『夜霧』を使おうとするなら覚悟をしなくてはいけないよ

 本来なら食べ物とかから『力』をもらっている細胞を変質させるんだから、その細胞は当然普通じゃなくなる

 具体的に言うと、常に最善の状態(・・・・・)を維持するようになるんだ」


メルはそう言うと、一度自分のクランのメンバーの顔をぐるりと見渡す


「最善の状態に保つ。それは『老化』を防ぐっていうことだね

 老化や病気は最善の状態の敵だから」

「それってつまり……」


ぽつりと漏れるエルナの呟き

メルはそれに返事をすることなく、ふっと笑うだけに留める


「まぁ、使う覚悟がある人は僕に言ってくれたらいいよ

 ただ、くれぐれも気を付けてね。自分で死を選ぶっていうのはなかなかしんどいから」


メルはいつも通りの口調でそう言うと、疲れた様子で話すのをやめる


「さて、そろそろ話すのも疲れてきたし、話す体力が尽きる前にやることやらなきゃ」


ぽつりと呟いたメルは土製の椅子から立ち上がると、魔族にかけた声を遮断する魔法を解除して話しかける


「さっきの話はためになったでしょ?

 だから、『エルナの情報を何処から手に入れたのか』を僕に教えてくれないかな?」


笑顔でそう言った言葉に、魔族は鳥肌が立った

自分たちはエルナをどうやって脅迫したかなんて一言も言っていないのに、メルは知っているそぶりを見せるのだ

いや、もしかしたらこれはただのブラフで、本当は脅迫されたということしか知らないのかもしれない。そう考えた魔族たちだったが、それは次の一言で可能性がなくなる


「ああ、こう言ったほうが分かりやすい?

 『エルナの親についてどこから情報を手に入れた?』」


後ろでエルナの肩がびくっと震えたのを感じたメルだったが、今はそれより優先順位が高いことがある

不安要素は取り除きたいのだ


「ああ、そうか。話すわけないか

 じゃあ仕方ないね

 【闇よ 我が望むことを与えよ この罪人より、知識を吸い出せ】」


メルとの付き合いが長いリギルでも聞いたことのなかったメルの詠唱

それは、流れるように美しく、怒りを孕んだものだった

聞き惚れるのと同時に、詠唱の内容から想像される効果に背筋が冷たくなる


「仕方ないから、僕が無理やり情報を吸収させてもらったよ

 ……なるほど、つまり君たちがたまたま気が付いただけで、誰かがそれを知っていたわけではないんだね

 いやー、よかったよ。だってさ――」


メルはそう言うと、ぱちんと指を鳴らす

刹那吹き荒れる大量の魔力に、魔族は反射的に防御魔法を使おうとするが、それは全く意味を成さない

突然ずれた空間そのものを防御できる魔法など、存在しなかったからだ


「――君たちを消せば終わるんだもん」


メルの微笑を見たのを最後に、魔族たちの意識は闇の中へ沈んでいった




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「絵が好きな君と絵を描かない僕」
面白いよ!(たぶん)

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