トト村
私たちはそれから1時間ほど歩いたところで、村が見えてきた。
「あれが、トト村?」
「そのはずですね」
村の入り口に近づくと、守衛のような男の人に声をかけられた。
「見ない顔だな。嬢ちゃんどこから来たんだ?」
「キリア村から来ました」
「キリア村!よく二人で来れたな。この村には何の用だ?」
「私たち、今旅をしているんです。泊めてもらえますか?」
「いいぜ、入りな。宿はこの道を真っ直ぐ進んで、酒のマークの看板が酒屋兼宿屋だぜ」
「ありがとうございます」
その後宿屋に向かって宿屋に入る。
「いらっしゃい。泊まりかい?」
恰幅のいい女性が声をかけて来た。
「はい」
「二人かい?」
「二人というか、一人というか。この子は私が作った機械人形なので」
「人形なのかい。まるで人間じゃないか。すごいもんだね」
宿屋の女性がそう答えた後に、リフィーが少し前に出る。
「はじめまして。私はリフィー。こちらのエフィア様に作っていただいた機械人形です」
そう言いながら、宿屋の女性にリフィーは手を見せる。
球体人形なので、体の関節を見れば人形だとわかるからだ。
「声も綺麗なもんだね。それじゃ、料金は一人分でいいよ」
「お世話になります」
案内された2階の部屋に入ると私はベッドにボフッと倒れ込んだ。
「疲れましたか?」
「こんなに歩いたのは久しぶりだったからね」
「運動不足ですよ」
「技術者なんだからこんなもんでしょ」
「そんなもんですかね」
そのまま私は寝てしまった。
気付くと窓の外が暗くなっていた。
「おはようございます」
ベッドの横の椅子に座っていたリフィーが語りかけてくる。
「今何時?」
「現在18時12分です。3時間ほど寝ていらっしゃいましたね」
「まじか」
ベッドの上でしばらくぼーっとしていた後に、一階に向かうことにした。
階段を降りていくと下から喧騒が聞こえてくる。
うるさ。
1階は人でごった返していた。さすがは酒場といった所。
私たちは、空いている席に座る。
すると若い女の子がやってきた。
「いらっしゃい。何食べる?」
その女の子におすすめのメニューを聞いて注文して、料理が来るのを待つ。
料理を待っていると近くに座っている、おじさんに話しかけられた。
「よう、嬢ちゃんたち。みねえ顔だな」
「キリア村から今日来たんですよ」
「連れはいるんだろ?」
「私たち二人だけです」
そう答えるとそのおじさんはかなり驚いたようだ。
「キリア村からここまでじゃ、魔獣とかうろうろしてんのによく来れたもんだな」
「それは、この子のおかげです」
リフィーを紹介して、自慢する。
「ってことは、この嬢ちゃんは人形なのかい。面白い。だったら、腕相撲してみないか」
何故かリフィーのこのおじさん、もといビルさんと腕相撲をすることになった。
私はそれをさっききたスープとパンをもぐもぐと食べながら見守る。
これ、おいしい。
「よろしくお願いします、ビル様」
「おう。よろしくな、リフィー」
近くの空いている机を挟んで、その上にお互い手を握りあう。
周りには外野が集まって来た。
「おい。負けんなよ、ビル」
「嬢ちゃんがんばれよ」
「リフィーちゃんに怪我させないでね」
近くにいた人が声をかける。
「よーい、始め!」
掛け声とともに、お互いに腕に力を込め始める。
最初は少し、ビルがリフィー側に倒すことができたが、じわじわとリフィーが優勢になってくる。
「うおー。まだまだ」
ビルがさらに力を入れるが、リフィーの腕はビクともしない。それから数十秒でリフィーが勝った。
「すごいな嬢ちゃん。完敗だ」
「ありがとうございます」
まあ、リフィーが勝つだろうね。
私はスープを飲みながらそれを眺めていた。
今のリフィーは通常モードではスターリングエンジンを、戦闘モードではピストンエンジンを稼働させるように設計されている。これは主に静音性のためだ。そして今の腕相撲では通常モードであったためエンジン出力は小さいが、ギア比を変えることにより動きは遅くても力を出すことができる。だからまあ、勝つのだ。
それからリフィーは何人もの男たちと腕相撲をしたが、全て完勝した。
「すげえな」
「こんな嬢ちゃんに負けるとは」
大の大人が何やってるんだか。
「ありがとうございます。ですが、すごいのは私を作り上げたマスターですよ」
それで私に振られた。
「どうも」
食べ終わったお皿を置いて私は答える。
「君があの子を作ったのか」
「はいそうですよ」
「すげえな」
それから、私とリフィーは色んな人に話しかけられることになった。
こういうのも悪くない。
そんなこんなで夜は更けていった。