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裏購買部の日常は非日常茶飯事である  作者: やマシン?
生徒会と購買活動
2/19

裏購買部の説明

 「お探し物は何でしょうか。」

 初めてここを活用するらしい、履かれているサンダルの色から見て一年生か。


 「美術部なんですけども…」

 「ああ。納品の方ですね。こちらにお入りください。」


 そう言って横にある扉を開け一年生を中に入れた。

 わが購買部の活動は主に二つある。

 通常の休み時間や昼休みなどに、パンやおにぎり、お弁当、文房具などを販売する普通の購買活動。

 通称。表と言われている活動。

 先ほども言ったと思うが、表の活動目的は、販売活動を通じて商業的技能を高めることにある。そして、もう一つの活動が。


 「初めてですので、ここにお名前とクラス番号をお願いします。」

 「分かりました。」


 この裏と呼ばれる活動である。

 表の目的は前記の通りであるが、裏は違う。

 曰く。

 部活動の活性化。および、生徒諸君の自己主張できる場所の提供。

 その事にある。


 「新しく入部された方ですか。いろいろと大変でしょう。」

 「はい。でも部活は楽しいですし。」

 「それはよかった。ご記入ありがとうございます。佐々木恵さんですね。もし作品をお売りになるのでしたら、ここに作品名と、印刷部数。希望お値段をお書きください。」

 「私程度では少し早いと思うので、今日は。」

 「そうですか。では、納得がいく作品が出来。なおかつここで売ってみたいと思った時。」


 またいらして下さい。

 窓口には、昼とは違う賑やかさが作られた。


 「北道先生の新刊はまだですか!」

 「ドラさんのアタッチメントは!?」

 「ブロイトTVは売り切れですか!」

 

 高校生活が進行される中。

 生徒諸君の規律はどんどん整備され、代わりに青春と呼ばれる特別な時間は無駄に消費されていく。学ぶことが青春だと。それもまた青春だろう。しかし、勉強よりも、自分を知ってほしい。分かってほしい。そういう生徒諸君はたくさんいるはずだ。それが満たされるのが部活動でなければならない。そしてその部活動は…。

 価値あるものは、それなりの評価をしてもらわなければならない。

 




 と達筆な字で書かれた俺たち購買部の古臭い旗のもと。購買部部長と副部長。そして新人たちは汗水をたらしながらどんどん商品を売っていく。それは、生徒特製の同人誌であったり、裁縫部特製のオリジナルキャラデザが入ったハンカチであったり、とにかくいろいろな物であった。


 「すいません!ガッチさんのノウミスは売り切れました!!」

 「はあ!!」

 「なんで!!」


 裏の活動から一時間半。ちょっと忙しくてキレた。


 「部数が足りねえんだよ!!こんにゃろう!!

  あのやろうこれっくらいで足りるっでしょ♡とか言って五十部しか持ってこなかったんだよ!!文句なら輝夜に言えよ!!」

 「おちついてよ先輩!」

 「これが落ちついていられるか!」

 どんどんなくなる商品を言ったりきたり、補充している凛空が俺の代わりに謝る。大切なお客様に。

 「というわけ。ごめんね。」


 俺が切れたおかげか。一年生も三年生も、もちろん二年生もそれぞれ帰っていった。


 「何だよ。」

 「ガッチさん。くそっ。」


 そんな言葉を残しながら、あれだけいた生徒の大半がぞろぞろと消えていく。


 「さすがガッチさん効果。今年の漫画愛好会売上トップ10はあの人が独占するかもね。」

 「他とはずいぶん差をつかせているからな。」


 椅子に座り、カキカキと売り切れ分の記載をしている凛空がその様な事を言ったので、俺もそのようなことを言って合わせた。


 「お疲れ様。」

 「腹減った。」

 「おつかれさまです!」

 「お疲れです。」

 「ほんと疲れた。誰かこれで飲み物買ってきて。」

 

 財布から取り出したノグッチをひらひら動かす。

 さて、予想では林さんだが…


 「じゃあ僕行くよ。」

 「ほんとか!」

 「何驚いてんだよ。もちろんお釣りはいただくさ。」

 「…やっぱ。お前以外で。」

 「冗談だよ。いつものメロン?」

 「その隣のグレープ。」

 「了解。」

  

 そう言いながら、わが副部長は購買部を後にした。

 その少し後の事だ。

 

 「先輩。今日は早めに終わってもいいですか?」 


 後輩である林塚のうち。塚の方である塚川文也が帳簿と睨めっこをしながら声をかけてきた。

 対する俺は、損益集計表をちらりらと書きながら、今週はだいぶ売れたな、もう少し仕入数を増やす相談しなきゃいけないけど、いろんな先生の許可めんどくせーなとか思っていたのだ。


 「なんかあるのか?」

 「今度の生徒予算。先輩が資料をまとめろって言っていたじゃないですか。」


 あれ?俺一年にそんな大切なこと任せたっけ?


 「そんなこと任せたか?」

 「確実に言いましたよ。それで、風紀委員の対抗策としての資料が少しあれなんで。時間をいただきたいと思うのですが。」

 「ほんとに?…というかあれっていうのは?やっぱり難しそうか?」

 「一応、伝統的であるっていうのと、学力は全国平均では低いほうではないという基本的な感じでやろうと思いますけど。風紀委員長があれで…。」

 「ミグルちゃんいい奴なんだがな。そんなにめんどくさいのか?」

 「ほとんどの生徒に支持されているこの部活に嚙みついているのに、なぜだか支持されて委員長になったような人ですからね。」

 「…ほんとアイツいい子なんだよ。」

 「お母さんですか。」

 

 ミグルちゃんとは、俺の同級生で友人で風紀委員の委員長をしている榊ミグルの事である。

  

 「まあ、よほどのことがない限りは大丈夫ですけど…やっぱり裏の活動は叩かれますね。」

 「厳しそうか。」

 「写真部の方々が余計なことをしてくれたおかげで。」

 「それも二年前の話なんだが、いまだに叩かれそうだな。」


 写真部の失態いや余計な事か。あれは今の俺達には関係ない事なんだがな。


 「胃が痛くなりますね。これから。」

 「今日が金曜日で…来週の月曜日だったな。生徒会総会は。という事はあと二日とちょっと。頑張ってもらえるか?」

 「まあ何とかしますよ。」

 「裏の事を言われたら、利用者数を掲示して、どれくらいの生徒に支持されているか提示すればいい。風紀の事を言われたら、お隣の学校よりは荒れてはいないと言ってやれ。あそこは算数で一年生を拷問するらしいからな。比較対象がいてよかったよ。」

 「二木柳高校に比べたら平和ですからね。」

 「まあそれでも、高校生が金銭がなんだかんだといってくるだろうが、それは部長である俺が何とかする。ウジ虫が少し湧くだろうが、それもある程度は抑えられるだろう。ここテストに出るからな。情報戦はとっても大事。」

 「分かりました。」

 「鍵は俺がかけとくから。」

 「ありがとうございます。お先に失礼します。」

 「乙。」


 購買唯一の出入りドアを開け、大切な後輩の一人が帰っていく。

 購買部の活動は、夏と冬で時間帯が違う。

 夏の場合。つまり六月から九月にかけての話だが、活動時間は六時までと決まっている。

 冬の場合。つまりそれ以外の季節は、活動時間が5時と決まっている。

 ただしこれらの時間は、購買活動の時間である。

 われわれの活動は、何も購買活動だけではない。それを帳簿に記載し、利益を換算したり…まあ早く言えば、商業的活動全般が俺たち購買部の活動だ。


 「さかにゃ~」


 隣でよだれをたらしているのを眺めるのは俺たちの仕事ではない。というか、寝るのは仕事ではない。


 「りんちゃ~ん。起きようね~。」

 「さかにゃジュ~ス!」

 「そんな悪魔が作ったような飲み物ないからね~。」


 ゆさゆさしても起きない。

 魚ジュ~スの夢というのはどんな夢なのか。多少の好奇心が出るが、それよりもよだれで汚れている帳簿をどうにかしていただきたい。

 サバイバル部と可愛く書かれているそれの上で寝ている。枕にするとちょうどいいようだ。ではない。


 「起きなさい!ご飯ですよ!」

 「はっ!ママ!!って部長?」

 「俺はお前のままじゃなくて部長だぞ。よかったな。」

 「なーんだ。ただの部長か。」

 「ただの部長ではない。誇り高き購買部の部長だ!」

 「部長ってゴミだったんですか!めちゃスゲーです!!」

 

 ホコリって…そっちのホコリでは決してないんだが…。確かにそっちだったらめちゃスゲーなんだけどよ。そんな事よりだ。


 「林さん?今何していたかわかる?」

 「熟睡していました!!」

 「よろしい正解だ。だが正確には、仕事もせずに熟睡してサバイ部の仕入帳を汚した。ここまで言っておこうか。」

 「はい!私は、仕事をしないで熟睡し、サバイ部の仕入帳を汚しました!!」


 びしっと、手の平を見せないように敬礼する。

 それに対し、こちらも敬礼を返して


 「そうだ。よく言えたな。」


 えらいえらい。

 と頭をなでる。


 「最近ではそれもパワハラに入るらしいよ。気を付けてね。」


 本当に真後ろ。

 そこからの声で、肩が震え寒気がした。


 「いたのかよ!」

 「君がおかーさんプレイをしてる時にはこの部屋にいたよ。」

 「林。気づいていたか?」

 「全くです!」


 敬礼である。

 その敬礼を一瞥した凛空は俺の方を向き、炭酸入りではない果汁百パーセントのグレープジュースを俺に渡す。そしてもう一本を林に…おい。


 「塚の方は帰ったのかい?」

 「帰った。っておい!!まさかとは思うがそのグレ「僕のお金だよ。はいお釣り。」」

 

 パアッと輝く笑顔。

 

 「凛空さん!!ありがとうございます!!」

 「がんばって作業しているからね。差し入れって感じかな?」

 「ほとんど寝ていたけどな。」

 「いいじゃん。かわいいは正義。」

 「結局はそれかよ。」


 変わらない価値観もあるようだ。


 「それで、何で早く帰ったの?」

 「資料まとめに必要なパソコン室が使えないからだ。」

 「何の?」

 「生徒会総会。」

 「…今年も罵倒の季節がやってきました。」

 「主に受けるのは俺なんだがな。それに罵倒っていうより罵りだろ。」

 「どっちも同じような気もするけど。」

 「去年よりは少ないだろうな、生徒会本体は抑えているわけだし。先生方の眉間にはスナイパーライフルで狙いつけているし。」

 「即効性のある脅しね。怖い怖い。」

 「よほどのことがない限り使えないけどな。」

 

 弾は一発だけだしな。


 「それで、今日はもう終わりそう?」

 「決算は木曜日やるとして、あとはもう終わりだな。今週ごとの損益も書き終わったし。」

 「見せて…うわっ。これ全部生徒予算の方に回るんでしょ?」

 「その代わり、生徒が学校に払う金額を抑えてうまく回しているあたり校長先生はすごいよな。」

 「ほとんど教頭先生がやっているって聞いたけど?」

 「そうなのか?」

 「部長!何の話ですか!?」


 中身は5歳ぐらいだろうな。

 母さん将来が心配。母親じゃないけど。


 「何でもないよ。それよりそれ終わらせようか。」

 「分かりました!」

 

 そういうと、熱心に書き始めて…数分後。


 「終わりです!!」

 

 元気の良いあいさつで終わらせる。

 

 「これで仕事は終わり?」

 

 自分で買ってきたのであろう。82%オレンジジュースと書かれている飲み物をぐびぐびと飲みながら、そんなことを聞いてきた。

 それに対し。

 

 「ああ。今日は終わり。やったな。これから妹の世話だぞ?」

 「お疲れ。林ちゃん。終わりだから帰っていいよ。」

 「いいんですか!!」

 「いいよ。どんどん帰りなさい!」

 「ありがとうございます!」


 そう言って鞄に筆記用具を素早く詰め、かけ足といった調子で帰っていった。途中先生に怒られすいませんと元気な声で謝るのも、俺たちの日常のセットだ。


 「じゃあ、僕たちも行こうか。ってその前にこの資料どうにかしなきゃね。」


 目の前には、戸棚に入りきっていない紙の束。

 もちろんファイルで閉じているので、纏まりはあるのだが全量が量である。

 

 


 「そろそろ古い帳簿は捨てようぜ?どうせパソコン室のデータに入ってんだからな。」

 「でも、十一月に捨てたばかりだし。」

 「めんどくせえな。」

 「倉庫に入れとこうよ。あそこなら空きがあるし。」

 「そうだな。じゃあ古い奴は倉庫に。目新しいのはここに置いておく。それでいいな副部長。」

 「了解部長。」

 

 俺たちが帰るのはもう少し後になりそうだ。



 

 

 


 




 

 


 


 



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