ストレス対処ロボット
俺はこの現代社会に向けて、素晴らしいロボットを作成していた。
そのロボットは人のストレスを解消する機能があり、前に俺の友人がストレスで自殺したため、少しでもストレスで苦しむ人を無くしたいと思ったのが発明のきっかけであった。
「あら、まだそんなロボットを作っていたの?」
旅行から帰って来た妻が、俺の研究室に入ってきて言った。
「ああ。もうすぐ完成するから、後で見せてやるよ。」
「そう言って、前みたいに爆発させたりしないでよね。」
妻はそう言って、奥の部屋へと消えた。
まったく、旅行から帰ってそうそうにうるさい奴だ。
このロボットが完成すれば、あんな妻とは離婚してやるからな。
俺はそう心に思いながら、ロボットをじっくりと眺めた。
デザインは人間と同じ形をしており、まだ外側の人工皮膚は未完成であるため、顔の部分は何もないのっぺらぼうであった。
パワーの方は、何でも出来るように、人間の10倍の力を発揮出来るようにしてある。
それから10分後、ロボットは未完成の人工皮膚を残しながらも、何とか完成した。
バッテリーを入れ、ロボットは起動した。
「誰を幸せにしますか?」
それがロボットの最初に発した言葉であった。
ここで、ロボットの胸に利用する人の手を合わせると、自動的にその人の心の状態や体調を読み取り、その人のストレスとなっている物を判断して、適切な対処をしてくれるのだ。
そして、その対処方法は、このロボットにしか出来ないオリジナル機能でもある。
普通にカウンセリンなどの対処をしていては、そこらのカウンセラーとはまったく変わらないため、ロボットだからこそ出来るというようにしたかったからだ。
まず、このロボットの頭脳に最近のネットの情報のすべてを受信出来るようにした。
その場で知識を取り入れるのはロボットだからこそ出来るものでもあり、その見つけた情報の中から一番早くその人のストレスを対処できる方法を探すのだ。
「よし、俺のストレスを消してみろ。」
俺はロボットの胸に手を当てた。
「あなたのストレス指数は78。ストレスの原因は、妻と仕事によるものです。」
診断結果は意外と早かった。
「妻がストレスの原因ね。中々当たっているんじゃないの。」
さて、問題はここからロボットがどう対処するかであった。
「対処方法を確認しました。実行をしますか?」
「おう。やってみてくれ。」
すると、2足歩行で歩き、妻の所へと移動した。
「あら、これが完成したロボット?」
すると、ロボットはソファーでくつろいでいる妻の首を絞めだした。
「おい、何をしているんだ‼」
ロボットの力はとても強かったらしく、妻は一瞬にして動かなくなった。
「これでストレスの原因がなくなりました。」
ロボットは無機質な顔で俺にそう話しかけた。
そこには絶望と妻の死体があるだけであった。
俺はショックのあまり、その場で膝をついた。
どんなに嫌いで離婚したかった妻でも、さすがに殺したいという程では無かった。
「チェックします。」
ロボットは俺に近づき、右の手のひらに触れた。
これは、ストレスが減ったか確認する最終チェックのためだ。
「ストレス指数90。原因は、ロボット。」
「対処方法を確認しました。実行をしますか?」
「勝手にやってくれ。」
俺はそう言った。
今はロボットどころではないからだ。
その瞬間、ロボットは自分の体を思いっきり殴り、動かなくなった。
そこには無音の世界が広がった。
目の前にあるのは妻の遺体と壊れたロボット。
ロボットは俺からストレスの原因である妻を消してくれた。
俺は殺人ロボットを作った自分を悔やんで胸が苦しくなった。
残された俺に出来る事。
それは、
自分自身というストレスを消す事だけだ。