02 賢者は逃げ出した!
02賢者は逃げ出した!
魔王が倒されてから2年がたったある日のことである。
世界で2番目に栄えていると言われている王国 レセリアの王城。
その王城の中にある多くの執務室の一つ。
王国を維持するにあたり国王、宰相の次に重視されている執務室の中に書類に囲まれている一人の少女がいた。
その少女はなにかぶつぶつとつぶやいていた。
だが、そのつぶやきですら、見るものが見れば別の見え方になる。
「ああ、あの方は実に思慮深く、自らの考えをまとめていらっしゃるのか。あのお方の邪魔はすまい」
実際、少女は美少女と言っても差し支えはなかった。
・・・・・・・「絶世の」という言葉はつかないのだが。10人いれば7人が振り返るという、絶妙といえば絶妙な具合の美少女である。
だが、そんな少女が口に出しているのは
「置き手紙、よし。装備・・・・・・・よし。必要なものは全部アイテム袋の中に入れたから、あとは逃げるだけ。」
逃げる算段であった。
「幼馴染・・・はいらないや。」
ちょっと薄情な気もするつぶやきも聞こえてきている。
「あいつに怪我させるわけにはいかないし・・・・・・・怪我したらうるさいし」
やっぱり薄情ではないのだろうか。
「うるさい、あんたは黙ってなさい!」
いや、お前の声の方がうるさいからな?
「なによ、ぶつぶつ喋るんじゃないわよ。あんた本でしょ!」
・・・・・・・いや、確かに本なんだけどね?もうちょっと丁寧に扱ってくれない?
コンコン
執務室のドアがノックされた。・・・が開かれることはなかった。
「賢者 レナ様、どうかなさいましたか?」
どうやら見回りの兵士のようである。
「ああ、ごめんね? 仕事してんのに相棒のバカが話しかけてくるのよ」
「あはは・・・相変わらずですな。相棒のユキ殿も」
「本当よね・・・。さ、見回りご苦労様、戻っていいわよ?」
「はい、それでは」
・・・どうやら、見回りの兵士は立ち去ったようだ。
「行った?」
・・・ああ、行ったさ。けど、いいのか?
「いいわよ、もうここにはうんざり。逃げるわよ?由紀?」
はいはい、賢者様。
「玲奈って呼びなさいよ!」
はぁい、わかったよ、玲奈。
執務室に夕日が差し込む頃、誰もいない執務室に訪問者が現れた。
「失礼します。レナ様、お仕事の方はいかが・・・レナ様?」
訪問者は部屋を見回し、執務机の上の置き手紙を見つけ、一通り読むと
「・・・・・・・ああ、大変だ、レナ様が」
と言って、気を失って倒れた。気を失った訪問者を見回りの兵士が見つけるのは日が沈んだ頃であった。
そして、賢者は執務室から逃げ出した。
・・・・・・・出来うる限り毎日更新を目指しますが、時折連投します。