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賢者は書物を携える  作者: 安井隆弘
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01 賢者の置き手紙

01賢者の置き手紙 1


「賢者」


それは智を究めし者と言われている。


古今東西の魔王に関する物語や建国史において必ず主人公のそばにおり、冒険においては勇者をあらゆる面からサポートし、建国においては民を思う指導者の理想に近づけるための手段を提示していることから、それは明らかであろう。


どこぞの死の呪文ばかり唱える緑の神官や唯一の回復手段を持つのにレーザーばかり放つヒロインに見習わせたいものである。


だが、諸君らは考えたことはないか?


賢者ってどうなってなるの?・・・・・・と。


一子相伝?


いやいや、ありえないだろう。一子相伝による利点自体は確かにあるもののそれはいわば「ひと世代前の智」である。


仮に諸君らのいる世界において例えるならば、梨のようなマークの会社の出す商品で考えてみれば良い。わずか数年で明らかに進みすぎた発展をしているではないか。


わずか数年で劣化する知識であるにもかかわらず一子相伝を行おうとすれば、少なくとも賢者は一生をかけて蓄えた知識をわずか数年で与えつつ、新たな知識を吸収し、それを後継に伝える必要があろう。


そんなものは無理だ。一生勉強しろと言われるようなものである。


そして、よく考えて欲しい。諸君らが知っている賢者はたいていの場合、主人公ともいうべき勇者やらの隣に常にいるのである。


常に!


つまり、勇者についていけるだけのスペックを有しているのである。


ここで諸君らはどこかのドラゴンを倒す物語だと、馬車に乗ってるじゃんとかいいだすのではないだろうか?


諸君らは馬車に乗ったことはあるのかと問おう。


あれは決して快適ではない。私個人として言うのであれば、明らかに刑罰の一つである。


隣の町に行くのに軽く10日はかかるのだ。


そして、当然のことながら、道なんてものは舗装されていない。舗装なんてものをしようとすれば、それだけで国家プロジェクトになり、中世のような社会でそれを行おうとすれば、即座に宣戦布告されることは間違いないだろう。


まあ、要するに舗装すらされていない道(道と言えるのかはともかく)を10日ほどかけて隣の町に行くのである。


いくら体力があろうとも諸君らに耐えられるものではないと断言しよう。


少なくとも、魔王やら何やらを倒すときに賢者はその場にいるのである。


つまり、その時点で諸君らから見れば、賢者という存在は体力のみならず様々な面で勇者に次ぐポテンシャルを持っているのだ。つまり、化け物みたいなものであろう。


じゃあ、どうやって賢者になっているのか。


一子相伝よりも確実なものは書物を読むことであろう。


書物というものは合理的であると私は考えている。


なぜなら、良き書物は後の世まで残り、誤りを明らかにしつつも、より良き形となり、新たに作られていくのである。


ただ、とてもかさばる。


そして、非常に金がかかる。


書物を持つことは、裕福な証となるのだ。


しかし、私にそんな余裕なんてない。


少しの暇を作れば、あの愚か者どもは私に仕事を押し付けてくる。


おかげでここ2年ほどの私は書物を選ぶ時間すら確保できていない。


ゆえに、私は、しばらく身を隠すことにする。


達者であれ、勇者よ。


くたば・・・一度身を崩せば良いのだ、国王。


賢者

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