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4 何だかレベルアップな予感 前半

 勇者の武器とは何か。それはきっと人によっては、他者を魅了するカリスマ性だったり、圧倒的な武力だったり、あるいは特別な体質や出自だったりするのだと思う。

 では私を勇者たり得ているのは、一体なんだろうか?それを考えると、悲しいことに何もないと答えるしかない。

 ああ、別に本当に悲しいと思ってはいない。なんとなく付けてみただけだから。悲しいと言うよりむしろ嬉しいことなはずなのだが。だってそうだろう。勇者の証がなければ、こんな小娘を勇者と呼べるわけがないのだから。

 しかし現に私は勇者などと呼ばれ続けている。いくら女神様に指名されたからって、これはない。そこで私は考えたのだ。私が勇者っぽく見えるところを一つ一つ潰していけば、いつか普通の女の子に戻れるんじゃなかろうかと。


 と言うことで、最近の私は剣の修行と称して皆から離れ、裏でこそこそ聖剣を叩き折る算段を立てていた。が、流石聖剣。一筋縄ではいかない。

 今まで、岩に打ちつけてみたり、地面をほじくり返してみたり、塩水に漬けて一晩放置したり、いろいろ試してみた。しかしどれも、刃こぼれ一つ生じさせることすらできなかった。

 聖剣、恐るべし。だが私は負けない。一般人に戻れるその日まで、私は闘い続ける。いつの日か、この聖剣を叩き折ってやる!

 肩で息をしながら、改めて決意を固めた。



 魔王の幹部を倒すため、一路戦場に向かう私達。緊迫した旅路になるかと思いきや・・・そんなことは全くなかった。

 まだ敵は遠く、私たち(特に私が)も力不足ということで、慌てず騒がず無理のない速度で進んでいるのだ。

 おかげで聖剣ぶっ壊し計画は着々と進んでいる。・・・成果はまだ全然だけど。



 宿へ戻る。

 汗をかいたので、お風呂に直行。労働の後のお風呂は最高だね。鼻歌とか出ちゃうよ。

 気分良く入浴した私は、部屋に戻る前にロビーを覗いてみた。この宿は宿泊客以外に食事を提供していない。よって、ロビーにはそれほど多くの人は居なかった。

 仲間の姿もない。彼らは時々、ロビーや食堂に集まって話をしているのだ。内容は、今後の話や本人たちのことなどその時々によって変わる。

 ぶっちゃけ今後の話なんて聞く気もない。だけど、旅路を同じくしているのに仲良くしないのもあれなので、私は彼ら自身の話を聞くために参加することが多い。とは言え、何故か彼らは私の話を聞きたがる。なので彼らについて分かったことは、実はそんなに多くなかったりするのだが。

 まあ、それで何が困ると言うわけでもないので、良いのだけれどね。


 とにかく今日は誰も居ない。わざわざ部屋に行ってまで話したかったわけでもないので、そのまま部屋に戻ることにする。

 そうしてきびすを返したとき、宿のドアベルが鳴った。なんとなく振り返ると、見知った顔の2人が入って来るのを見つけた。

 ダークとミネだ。どうやら2人で出掛けていたらしい。手に荷物を持っているし、買い物にでも行っていたのだろう。


 最近、2人はよく一緒に居るような気がする。最初は、仲間とも話したがらなかったダークだが、今はミネと仲良さそうに話している。

 うんうん、仲良きことは美しきかな。仲間同士がギスギスしていなくて良かった。声を掛けようかとも思ったけれど、距離もあったし2人は私に気付いていないようだった。仕方ない、部屋に戻ろう。



 安宿にしては上等なベッドへダ―イブ。

 聖剣との格闘は思いのほか大変だったようだ。疲れで体が重い。少し寝ようと目を閉じたと同時に、ノックが聞こえた。

 誰だ、こんな時に・・・。立ち上がるのが億劫おっくうだ。居留守使っちゃおうかな?

 なんて駄目な考えを、うつらうつらしながら展開していたら、部屋の外から声が届いた。


「おい、あと1秒で開けなければ目玉をえぐるぞ」


 急いで開けた。

 その際にいろいろな物が落ちたり吹っ飛んだりしたけど気にしては居られない。ヤツはやると言ったらやる男だからだ。


「遅い。抉る」

「怖い!!」


 とっさに目を押さえて飛びずさる。しかし今のは本気ではなかったようだ。何もされなかったことを確認して、手を退ける。

 無表情の彼は、私の反応など意に介さずに居た。分かり切ったことではあるが、ちょっと理不尽に感じてしまった。


「何をしている」

「・・・抉らない?」

「今はそんな気分じゃないが・・・、抉ってほしいのか?」

「いいえ!」


 全力で首を振る。「と言うか、抉るって言ったのはそっちじゃんか!」とか「じゃあそんな気分になったらやるのか」とか疑問は浮かぶが、口には出さない。

 もしそんなことをしたら・・・。きっと恐ろしいことが起こるに違いない。

 想像してガクブルする私。が、こんな恐怖の権化ごんげにはさっさと退去してもらうのが一番だと気付いた。話を聞くまで居座りそうで怖い、というのもある。

 だがこいつ、またしても無理難題を押し付けてくるのではないだろうか?嫌な予感を抑え込んで視線を合わせる。

 そうすることで、ようやく彼は口を開いてくれた。


「『ディオスアルマ』を破壊することなど不可能だぞ」

「・・・?『ディオスアルマ』?」


 一体それは何だ?

 聞いたこともない単語に首を捻る。しかも破壊とは・・・、穏やかじゃないな。何処どこの悪者が、そんな恐ろしいことをしようとしているのだろうか。てかそれ、私には関係ない話じゃないか?

 きょとんとする私に、レクトルは冷めた視線を向けてきた。意訳するなら「そんなことも分からないのか、この愚図が」みたいな視線だ。

 軽く心が抉られた。が、奴が私の様子に気を使うはずがない。さっきの私の疑問に端的に答える。


「聖剣のことだ」


 一瞬、言われたことが繋がらなかった。「聖剣?何故ここで?」って感じだ。

 え、て言うか、え?聖剣に名前なんて付いてたの?

 理解が追い付いた時の私は、相当変な顔をしていただろう。それでもにこりともしないレクトルを前に、頭が徐々に冷静になっていく。

 そして気付いた。私の行動が筒抜けになっとるー!!ということに。

 恐れおののく私に声を掛ける者は居ない。いや、1人居た。が、それは期待するような内容ではなかった。しれっと話題を進ませたのだ。


「そんなことより、お前の武器を見直す案が出た。見直す、と言っても聖剣を元にするのは決定事項だがな」

「な、な・・?」

「俺もお前の剣術・・・いや、聖剣の振り回しっぷりは目に余ると思っていた。明日早速鍛冶屋へ行くぞ。準備しておけ」


 口をパクパクさせる私に構うことはなかった。言うだけ言って、レクトルは部屋を出て行く。呼びとめる隙すらない。しかし私は後を追いかける選択をした。

 何故かって?言われっぱなしじゃ腹の虫が収まらないから・・・ではなく、詳しい話を聞きたかったからだ。此処ここまで行き当たりばったりで来はしたけど、さすがに自分個人の話までそうでは居られない。


 幸い彼はまだ部屋には戻っていなかった。ドアノブに手が掛っていたが。その手がノブを回そうとしているのが見える。

 追って来ていることは分かっているだろうに、こっちを見ようともしないその態度!

 むかっときたが、怒鳴るよりも何よりも動きを止める方が先だ。見る気も聞く気もないようだから、ちょっとやそっとの対応では駄目だろう。

 出せる限りの速度で肉薄し、彼の腕を掴んだ。


「!?」


 掴んだと同時に、ぐるっと視界が回る。そして背中から床に叩きつけられた。

 何が起こったのか?

 すぐには理解できなかった。それどころではなかったのだ。痛みが凄過ぎて。のた打ち回ることすら困難だった。しばらくうずくまり、痛みが退くのをひたすら耐える。


「何の用だ」


 冷静に、何事もなかったかのような声。見上げることは出来なかったが、今ヤツがどういう顔をしているのかは分かる。きっと表情一つ変わっていないのだろう。

 腹立たしいが、痛みが収まるまでの我慢だ。床と仲良くしながら、動き始めた脳を意識する。



 合気道。

 ぱっと頭に浮かんだのは、そんな言葉だった。

 相手の力を利用して、投げ飛ばしたりいなしたりする格闘技・・・だった気がする。記憶は曖昧だが、多分そんな認識で間違いないはずだ。そんなような技であることには変わりないだろう。

 つまり、今私が痛みにのた打ち回っているのは、ある意味自業自得である、と言うことだ。あんなに勢いよく掴み掛らなければ良かった・・・。そう思っても後の祭りだ。


 痛む体をゆっくりと動かし立ち上がる。レクトルは感情の読めない目で私を見ていた。


「・・・・」


 いろいろと言ってやりたいことがあったはずだ。が、何故か出てこない。彼の冷たい視線に気圧されたわけではない。決してない。結果的に負けてしまっただけだ。

 まあ、仕方がないことだ。こいつと出会ってから今まで、彼に勝てたことなんて一度もないのだから。勝てる気がしない、とも言う。

 兎にも角にも、特に異論を挟むことも出来ぬまま、私は武器を見直すため鍛冶屋へ赴くことになったのだった。



 次の日。私は左右をレクトルとアーノルドさんに挟まれ、売られていく子牛のような気分で鍛冶屋の店先に立っていた。

 憂鬱ゆううつだ。暗い顔の私の左隣で、アーノルドさんもやや不安な面持ちをしていた。彼は彼で緊張しているらしい。

 何故かと言うと、これから会う鍛冶屋はただの鍛冶屋ではないからだ。女神の力で作られた聖剣ですら鍛え直すことができる、伝説の鍛冶屋。

 緊張するのも致し方ない。

 普段通りの顔色なのは、レクトルだけだ。あいつに緊張する、なんて繊細な神経は存在しないに違いない。


「何か不愉快なことを考えているな」

「断定した?!」


 本当に訊くべきは「何故分かったか」ということだが、思わずツッコミが先に出てしまった。まあもし訊いたとしても、きっと心を抉るような物言いをするに決まっているので、訊かない方が良いだろう。触らぬ神に祟りなし。そして、墓穴は掘らないことが長生きの秘訣だと私は知っている。

 つまり正しい選択は沈黙である。それは確かに正解だった。正解だったけど・・、「ふん」と鼻で笑われた辺り目論見は筒抜けだったようだ。ちょっと悔しい。


 密かに悔しがる私には構わず、レクトルが店の扉を引き開けた。その後ろから店内に入る私。最後に、神妙な顔をしたアーノルドさんが入り、扉を閉める。

 そうすることによって、幾らか余裕を取り戻した彼が店内をきょろきょろ見回し始めた。つられて私もきょろきょろしてみる。



 伝説級の鍛冶屋は、とても簡素だった。

 受付カウンターと順番待ちに使うと思わしきテーブルが2つ。そこに添えられた三つの椅子。あるのはそれだけ、である。

 壁に何処かの街の風景画が飾ってあるが、その他の装飾品はない。

 なんてシンプルな店だろうか。掃除は簡単そうだが、味気ないにも程があるだろう。此処の店員は、自分の仕事場を快適にしようという考えはないのかもしれない。

 まあ、本当にそうなのかどうなのかは分からないが。と言うか、肝心の店員は何処だ。


 もう一度店内を見渡すが、人が隠れられるところはない。誰も居ないことに間違いはなかった。

 しかし多分、奥には誰かいるだろう。店自体は開いているのだし、完全に無人と言うことはないはずだ。

 呼べば来るかもしれない。そう思ってカウンターの上を見るが、呼び鈴の類が見当たらない。え、恥ずかしさを飲んで大声を出せって?

 えー・・、アーノルドさんは・・・。と思って目を向けると、店内観察に夢中な姿を見つけた。この店内に何をそんなに見るところがあるんだって言いたいぐら夢中だ。

 レクトルは・・・、店の窓から外を見ている。我関せずの態度に見えて声を掛けづらい。

 と言うことで、店内は奇妙な沈黙に包まれることとなったわけである。


「・・・・・・」


 居心地悪っ!!

 帰りたい、今すぐ帰りたい。でも今更私が大声で店員呼ぶとか、ないわー。そもそも私乗り気じゃないわけだし。こんな空気の中目立つことしたくないし。

 そんな言い訳を胸中で繰り返し、最早自分から何かすることも出来ないまま沈黙を保つこと数秒。店内観察を終えたアーノルドさんが、ようやく現実世界に帰って来てくれた。改めて店内を見回し、店員がいないことにも気付いてくれたようだ。

 沈黙し続ける私とレクトルを交互に見て、首を傾げる。が、何も言わずにカウンター前へと移動し、大きく息を吸い込んだ。

 「すみません」の「す」と言う形に口が開く。


「喧しいです!!」


 そんな叫び声と共に、奥の扉を破壊するかの如く蹴り開けた女性が一人。


「今行きますから、そんな大声出さんといて下さい!」


 と喚きながら、表の扉を引きちぎるように開けた男性が一人。

 とりあえずツッコミ。

 まだ誰も何も言ってません。

 しかし心のツッコミの難点は、相手に届かないことである。彼らは私のツッコミを感知することもなく、カウンター前に並んで立った。


「すみませんね。ちょっと外に出ていたもんですから」


 変わったイントネーションだった。上がったり下がったりしていたのだ。具体的に言うと「すみま」で上がり「せん」で下がり、最後の「ね」でまたちょっと上がった。

 聞き取りにくいと言う以前に言い難そうだが、本人たちは居たって普通である。

 方言というヤツだろうか?共通語でも、変わった言い方をする地方があると聞いたことがある。それだろうか。根掘り葉掘り訊くようなことではないので確認はしないが。

 交渉役のアーノルドさんも、口調のあれこれには触れず、私の武器・聖剣『ディオスアルマ』の打ち直しを依頼する。


「はぁん、なるほど・・。分かりました。つまり今以上に勇者さんに使いやすいよう生成し直せば良いっちゅうことですね?」

「そうですね。お願いできますか?」

「もちろんや!とは言え相手は聖剣やから一筋縄ではいかんでしょうけど・・・。ま、とりあえず別仕様にしてみますわ。ちゅうことで・・、お値段の方ですけど」


 妙に波のある喋りで交渉に当たっているのは、女性の方だった。男性の方はただ聞いているだけだ。

 今の今まで、鍛冶屋と言えば屈強なおっさんが出てくるイメージだっただけに、この若い男女は受付係のようなものだと思っていた。が、こちらの要望にしっかり受け答えしている様子から、「ひょっとして・・・」と思い始めた。

 そんな私の考えは、すぐに裏付けが為された。粗方交渉を終えた彼女が改めて私に向き直り、自己紹介をしたのだ。


「申し遅れました。うちがこの鍛冶屋の主、ジュリアスです。よろしゅう、勇者さん」

「はあ、よろしくお願いします」


 若いうえに女性。私の鍛冶屋イメージがそれを否定しようと抵抗している。が、差し出された手を握った瞬間、そのイメージは敗北を認めた。

 握った彼女の手は、女性とは思えないほど硬かったのだ。恐らく、日常的につちを振るっているからだろう。その手は間違いなく鍛冶屋の手だった。

 もう一度「よろしくお願いします」と頭を下げて、店を出る。

 出来上がりは3日後の予定だ。


 さて、どうしようか?聖剣が帰って来ない事には、聖剣破壊・・・もとい、剣の修業は出来ないし。ああ、一応伝説の防具もあるから、先にそっちを壊す・・・えっと、鍛えてみようかな!

 出来れば防具は後回しにしたいところだったのだが・・。何と言っても私の身を護ってくれる物だからね。しかしいずれは壊すか売り飛ばすかするつもりだったし、ちょうど良いかもしれない。



 思わぬ空白の時間をどう過ごすか。そんなことを考えていたら、レクトルと目が合った。

 外面そとづら用天使の笑顔が私に向けられている。が、私には見える。天使の面の裏面に、悪意に裏打ちされた邪神の顔が隠れているのが。


「では、次ですね、勇者


 わざとらしい様付けが、嫌な予感を拡大させていく。


「つ、次?」

「ええ。昨日言っていたではありませんか。聖剣が無い間は、代わりの武器を使ってレベルアップを図る、と」


 ええー、言ってない、言ってないよ!私はそんなこと!

 と言う反論を眼差し一つで押さえ、レクトルが先導を始める。慌ててアーノルドさんに助けを求めるが、彼は彼で「さすが勇者様。努力家ですね」と笑って付いて行くだけだった。

 呆然と彼らを見送る。・・・はっ、今なら逃げられる!?と思ったが、次の瞬間その考えを空の彼方へ投げ捨てた。

 肩越しにレクトルと目が合ったのだ。もちろん天使の顔のままの彼と。そして邪神は御怒りのようです。「さっさと来い」と言われているのが痛いほど伝わってきたのだ。


 気付かなければ良かった。まあ、気付かなかったらもっと酷い目にあっていただろうけどね。

 ええ、もちろん付いて行きますよ。付いて行くからそんな目で睨まないでほしい。

 諦めが肝心。そう言い聞かせてのろのろと後に続く。



 数時間後・・・・初心者勇者の装備は拡充された!

 具体的にお教えしよう。防御は基本的に勇者専用防具があるのだが、それではカバーしきれない時(主に入浴時)用に結界機能のあるアクセサリーを数点。簡易な攻撃魔法が封じられた魔法玉に、剣よりは扱えた短剣、少量で劇的な効果がある薬草などなど。

 使いこなせるか否かは分からないが、私の戦力はかなり強化された言っても良いだろう。投げれば確実に使える魔法玉はともかく、短剣とか振り回しても自分が怪我するだけなような気もするが・・・。

 疑惑は絶えない。がしかし、レクトルにそんな言い訳通じるはずがない。諦めスキルを最大限に発動して、言われるがまま装備を買い揃えたのだった。


 攻撃面はともかく防御面は完璧と言って良いだろう。

 ・・・・だから何だ。私は戦わないぞ!そんなのダークに任せておけば良いんだよ!彼なら嬉々として戦ってくれるからね。私の出番なんてないくらいに。と言うかそんな機会、未来永劫来なくて良いんだけど!

 なーんて、レクトルに言えたら良いんだけどねー。

 無理ですよ、そんなこと。むしろこの考えを気取られないようにするので手一杯ですよ。

 乾いた笑みを浮かべて、手にした短剣を懐深くしまい込む。


「準備は宜しいですか、勇者様?」

「あー、うん。・・一応、ね」

「では行きましょうか」

「うん。・・・うん?」


 今度は、笑顔のアーノルドさんが先頭を歩き始める。その後に無言のレクトルが続く。疑問をていさないところを見るに、どうやら目的地を知っている模様。

 って私は知らんがな。

 訳も分からないまま、私は再び彼らに付いて行くことしか出来なかった。



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