葬儀
真っ白な空間に佇む人間。
彼らは皆同じ背格好で、同じ服を着ている。
違うのは彼らが被っている仮面。
笑っている者もいれば、怒っている者も、泣いている者もいる。
複雑な表情の仮面を被っている者もいる。
そんな彼らは一つの棺を囲んでいる。
『今日はこの人の最後の日なんです』
『貴方も葬儀に参加して下さいな』
『花を添えてやって下さい』
『いい死に顔だと思いません?』
彼らは立て続けに言ってきた。
声も皆同じだった。
私は花を貰って棺に近づいた。
そこには顔に布を被された死体が。
背格好は棺を囲む人間と同じだった。
『いい死に顔でしょう?』
その死体の胸には赤いハートマーク。
『この人は愛に生きて愛に死にました。だから心が残ったままに死んで行ったんです。綺麗な赤い心でしょう?』
『それにしても良い死に顔でしょう? 見てやって下さいよ』
私は布を取った。
横たわる死体の死に顔は、満面の笑みを浮かべた私の顔だった。
仮面をつけていた周りの人が皆一斉に仮面を外した。
皆、私の顔をしていた。
生気の無い私の顔だった。
『私達は貴方。貴方は私達』
『私達は貴方の被った仮面達』
『貴方が今までに被って過ごしてきた仮面自身』
『棺桶の中の貴方は死んでしまった貴方』
『貴方が殺してしまった貴方』
『貴方の心』
『私達は貴方。貴方は私達』
『だからほら、自分の胸を見て見てよ』
『私達と一緒』
私は自分の胸元を見た。
そこには、塞ぐことの出来ない大きな孔が空いていた。