第三十二話 時間の花
内容が難しすぎて完全にAI任せです。自分の色を出す隙は1ミリもありませんでした
研究所の実験室に、いつもと違う空気が漂っていた。
普段は各自の作業場で黙々と研究する直人が、珍しく研究員たちと肩を並べて何かの実験をしている。テーブルの中央に、見慣れない装置が置かれていた。金属製の箱で、内部が透明なガラスで覆われている。配線が複雑に絡み合い、計器盤が並んでいる。
「もう少し出力を上げてみてください」直人は研究員に言った。「慎重にお願いします」
研究員がゆっくりとダイヤルを回した。装置が低い唸りを上げ、内部のガラスが微かに光り始めた。
直人は計器盤を見つめた。数値が変化していく。
「止めてください」
研究員がダイヤルを戻した。装置の唸りが消えた。
直人はメモを取りながら「もう少しだ」と呟いた。
扉が開いた。
美代とララが入ってきた。
「何してるの?」美代は装置を見て言った。「また新しい発明?」
「実験中」直人は振り返った。「ちょうどよかった、見てて」
「何を?」
直人は研究員に目を向けた。「花を持ってきてもらえますか?」
しばらくして研究員が戻ってきた。手に、白い花が一輪ある。摘み取られたばかりの、みずみずしい花だった。
直人はその花を装置の中に入れた。もう一輪、同じ花を装置の外のテーブルに置いた。
「同じ花だ」直人は言った。「摘み取った時間も同じ。このまま放っておけば、同じ速さで枯れていく」
「それが?」美代は首を傾けた。
「装置を動かしたら変わる」直人はダイヤルに手をかけた。「行くよ」
装置が唸りを上げた。内部のガラスが光る。
全員が装置の中を見た。
一分が過ぎた。
テーブルの上の花が、ほんの少し萎れ始めた。
装置の中の花は、さっきと変わらない。
五分が過ぎた。
テーブルの上の花は、明らかに萎れていた。花びらの端が茶色くなり始めている。
装置の中の花は、まだ白いままだった。
美代が息を呑んだ。「直人くん、これって」
「装置の中の時間の流れを遅くしている」直人は言った。「外では五分経ってるけど、中では一分しか経っていない」
「時間を遅くした?」
「局所的にだけど」直人はうなずいた。「この装置の中だけ、時間の流れが変わっている」
ララが装置に近づいた。計器盤を確認し、配線を眺め、静かに言った。「エネルギー消費量が膨大ですね。この大きさの装置でこの消費量ということは、船全体に応用するには」
「今の技術では無理だ」直人は正直に言った。「でも方向性は間違っていないと思う」
研究員の一人が言った。「理論的には、この技術を船全体に応用できれば、乗組員にとって50年の航行が数日に感じられることになります」
美代はしばらく装置の中の花を見ていた。白いまま、時間の外に置かれたような花。
「すごい」美代は呟いた。「でも怖い気もする」
「怖い?」直人が聞いた。
「だって」美代は言った。「船の中では数日でも、外では50年経ってる。地球に戻ってきたら、みんな50年分老いてるってこと?」
実験室が静まり返った。
直人は少し黙った。その問いは考えていなかった。いや、考えないようにしていたのかもしれない。
「そうなる」直人は正直に答えた。
「じゃあ」美代は直人を見た。「直人くんが華僑の人たちを新しい星に連れて行ったとして、地球に戻ってきたら」
「お母さんは」直人は言った。「50年分老いてる」
沈黙が続いた。
ララが静かに口を開いた。「だからこそ、時間圧縮だけが答えではないかもしれません。空間と時間、両方のアプローチが必要かもしれません」
「両方?」直人が聞いた。
「空間を縮めつつ、時間の流れも調整する。二つを組み合わせることで、乗組員にとっても地球にとっても、ロスが少ない航行が可能になるかもしれません」
直人はメモを取った。ザイロンに話したい、と思った。博士にも。
「ねえ直人くん」美代が言った。
「うん」
「これ、タイムトラベルにも使える?」
実験室の研究員たちが顔を上げた。直人は少し考えた。
「理論的には」直人は言った。「時間の流れを操作できるなら、可能性はゼロじゃない」
「じゃあ」美代は装置の中の花を見た。「未来も、過去も、行けるかもしれないってこと?」
「まだ全然そこまでは」直人は苦笑いした。「今は花一輪の時間を遅くするだけで精一杯だよ」
美代は笑った。「でも始まりはいつも花一輪からじゃない?」
直人は美代を見た。それから装置の中の花を見た。白いまま、時間の外で静かに咲いている花。
「そうだな」直人は言った。「始まりはいつも小さいところから」
ララが微笑んだ。「素敵な実験ですね」
研究員たちがまた作業に戻り始めた。装置の唸りが再び響いた。
実験室に、静かな熱気が戻ってきた。
窓の外に、青い空が広がっていた。




