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11 地下の魔水晶

延々と降りていき、やっと着いたところは、暗い水が溜まった五十メートルほどの円形プールのような場所だった。


プールの中央には、にょっきりと三メートルくらいの魔水晶が突き出ていた。

「これはお前が作った物と同じような役目の魔水晶だ。私達の魔法陣と繋がっているのだ」

「!……僕が創ったものと同じ?」

「そうだ、過去からの知識の集積だ。日々更新しても居る」


目の周りに施した魔法陣はここから情報を得るためのものだったのか。

「この魔水晶はどれくらいの大きさなのですか?」

「聞いたところに寄れば二十メートル以上だそうだ。水深が三十メートル在るのだ。実際は三十メートル以上あると思われる。これは私達魔導師にとっては無くてはならないものだ。今までこれを新たに作ろうと思った者はいなかったが、お前はこれに挑戦したことになるな」

「とんでもありません。僕の創ったものなど児戯に等しい」

「いや、とても有益なものだ。魔導師にならずとも知識を鑑定に反影することが出来るのだ。だが、一般人には無理だろうな」

「え? それは何故ですか。僕は魔力を持たない者にも使える様にしたつもりでしたが」

「まずは、文字が読めまい」

「あ……」

「だが、お前が作った物は一般の魔法使いにとっては役立つものだ。それに、魔力の流れが見えるモノクルは貴族にも売れるぞ。どんどん作りなさい。その為の援助はする」

「始めに作ったモノクルは簡単ですが、知識の集積の魔水晶に知識を詰めるのが、とても大変です。それには僕一人では時間が掛かりすぎます」

「十二歳のお前に時間が無いというのか? 十五歳までじっくり仕上げれば良かろう。後は、植物の知識を入れれば良いだけなのだろう?」

「はい……」

「焦るな、ルシオ。お前が知識を埋め込めば、その過程でお前の知識は増えていくのだぞ。素晴らしいではないか」

「はい! そうでした。勉強のついで、と言うことですね」

「ふ、ふ、そう言うことだ」


その後、パブロはルシオに魔導師の秘密の一つを明かしてくれるという。

塔の一階のホールを抜け、今度は上に上っていく。

二階に着いたとき、大きな扉があり、パブロが魔力を流すと、扉は消えて、真っ黒な入り口が現れた。

「さあ、入ろう」

ルシオは恐る恐る、暗い穴に足を踏み入れた。

顔を上げて見ると、そこはまるで外に居るような錯覚を起こす場所だった。


――やっぱりここはダンジョンか! ここはフィールド型のダンジョンに違いない。


「ここも、かのグランデ大陸から来た魔導師が作った物だ。彼はこれを当時の魔導師達に見せ、耕作地の少ない我が国の助けになると、言葉巧みに魔導師達を唆し、誘導したのだ」

「耕作地……ですか? 確かに広大な土地ですが……でも、ここはただの草原に見えます」

「この土地に作物を植えたこともある。農民達を大勢ここに移住させ耕作させていたのだ。確かに土地は肥え、良く作物は実ったが、人が消えていくのだ。それは後から判明したことだ。ここを作ったのは、空間魔法を使ったのだと、かの魔導師は言っていたそうだ」

「空間魔法……それは、僕達にはない属性ですよね?」

「いや、多分空間魔法の理論を学べば可能なはずだが、かの魔導師は教えなかった。彼が作った魔法鞄は数十点残っている。我が国にはそれだけしか残っていないのだ」

「では、ここの錬金魔導師は作れないと言うことですか?」

「ああ、未だ作れた者はいない」

グランデから来た魔導師を殺さずに捉えたかったのは空間魔法の理論を聞き出したかった為なのか。


――空間魔法。それを極めれば、魔法鞄が作れる。もしかすれば、転移も出来るかもしれない。消えた人間は転移して別の場所へ送られてしまったのではないだろうか? かの魔導師も転移して逃れていったのでは無いのか?


「では、グランデ大陸には空間魔法を使う魔導師が沢山居ることになりませんか?」

「そうかもしれんが、私はグランデ大陸へは渡ったことが無いし、ロマゴ国はグランデ大陸にあるどの国とも交流はない」


ルシオは、自分には作れるのではないかと思い始めた。

――僕には創造魔法がある。前世で遊んだゲームそのままではないか。それを実現すればいいだけではないか?


身体が成長すれば、魔力は使いたいだけ使えるようになる。そうなったら是非作ってみよう。挑戦してみたいと思った。

ここにはきっと転移陣が在るはずだ。それを何とかすれば、この広大な土地を生かすことが出来る。

ルシオの目が輝きだしたのを見て、パブロは釘を刺した。 

「ここは危険だから、閉鎖している。ここに来たくても、私と一緒でなければ来る事は適わないぞ。ルシオ」

「……はい」


それからは単調な毎日が続くことになった。

朝の魔力供給に始まり、剣術の鍛錬。魔水晶に知識の埋め込み、偶にあるパブロ魔導師による講義。その繰り返しだった。


ルシオが十四歳になる頃、アレハンドロが魔導師になるための儀式があった。

彼はミゲル魔導師に連れられて、神殿にやってきた。

数年ぶりに見るアレハンドロは、身体が更に大きくなっていた。ルシオも順調に大きく育ってはいたが、アレハンドロと比べると大人と子どもだ。


「ルシオ! 相変わらず小っこいな。本当に大きくなったのか?」

「酷いな、僕が大きくなるよりもアレハンドロが大きくなるのが早いだけだ。その内アレハンドロと同じくらい育つよ!」

「そうか? まあ、戦闘魔導師になる必要は無いから、これくらいでもいいのではないか」


そう言ってアレハンドロは、ルシオの頭をぽんぽんと叩いた。


「いや、僕はもっと大きくなる。今に見ていろよ」

他愛ない言い合いも久し振りだった。アレハンドロが居ないと寂しかったと、今更ながら感じたのだった。

「迷宮はどうだった?」

「ああ、総ての迷宮を制覇したぞ。ルシオにお土産だ」

そう言って魔水晶を取り出して見せた。十㎝から二十㎝くらいの魔水晶が五個だ。


「ありがとう。これでまた魔道具が作れるよ。何か欲しいものは無いか?」

「今のところは間に合っているな。ルシオが作ってくれた集音器も凄く役立った。でも、これはもう必要無くなる。返すよ」


――そうか、魔法陣を耳に刻むことが出来るようになったのか。魔導師の証のようなものだものな。


どうやら、アレハンドロは、あの塔の魔水晶の場所へ連れて行かれるようだ。ミゲル魔導師と二人で塔の方へ歩いて行くのが見えた。


「あの場所で、入れ墨を入れるのか?」

ルシオにとっては不思議だったが、皆魔導師になる者は、そこへ行くのだとパブロ魔導師に言われた。


「僕はまだ魔導師になれないのに見る事が出来たと言うことですか?」

「ああ、お前はあの魔道具を作った。ご褒美に見せてやろうと思ったのだ。特別だぞ」

「……そうでしたか。ありがとうございます」


特別扱いだとは考えていなかったルシオだ。今まで生きてきて、前世も含めてそんなことは初めてだった。それほど信頼と期待を寄せられていたとは。


「神官になると言うことは生半可なことでは出来無い。お前には最後までやり遂げて貰いたい」

「……はい、頑張ります」

それから数時間して塔からアレハンドロが戻ってきた。

アレハンドロの目に金色と赤の魔法陣が刻まれている。


「アレハンドロ! 耳に魔法陣を刻むのでは無かったのか?」

「……これは選ぶことは出来ないものなんだと。神からの恩恵なのだそうだ。悪いが、さっき返した集音器、もう一度俺にくれないか?」

「それは良いけど……」

どう言うことだ? 神からの恩恵とは……。


「アレハンドロ! それ以上は言ってはならん。分かったな」

ミゲルの右目に刻まれた魔法陣を今更ながらじっと見ると、金色と赤だ。

ミゲルが厳しい顔でアレハンドロを叱った。

アレハンドロは首をすくめ、ミゲル魔導師と一緒に帰っていった。


「パブロ魔導師、アレハンドロは?」

「あれは、ミゲルと同じ戦闘魔導師でもあり、神官魔導師でもあると言うことになりそうだな。魔法陣の色には意味がある。金色が出たということは神官でもあると言うことだ」


ルシオは、パブロの魔法陣を見て見る。確かにパブロ魔導師の魔法陣は金色一色だった。


「性格的にはどうかと思うが、才能があったのだろう。神の目にはアレハンドロは、神官の素質が十分あると判断されたと言うことだ」

「神……の? あの場所に神が居ると言う事ですか?」

「おい、ルシオ、まさかお前は神を信じていないとでも言うつもりか?」

「……いえ、そういう訳では無いのですが。僕は神の存在が感じられないので……」

「感じられ無いだと? 魔力がある者にはすべからく神が印を付けているのだ。皆少なくとも神の存在を感じるのだぞ。もしお前が感じられずとも神は御座す。お前はきちんと祈りを捧げているのだろうな」

「……はい、それは毎日きちんと熟しております」

無心になって魔力を捧げているが、祈りはまた別物だと言うことなのだろうか?


部屋で一人になり、ルシオは不安になった。

「地獄に落された僕に、神は恩恵を与えてくれるはずがない」


錬金魔導師には白、人によっては灰色が出るということだった。総て薄色だそうだ。

神官なら金色、戦闘魔導師なら赤だと言う。神が振り分けて仕舞うためそれまで学んでいたことが百八十度変わってしまう人も稀にいる。


神とは何だ? 

遠くの存在だとしか思えなかった。

見たことも言葉を交わしたことも無いのだ。それを何も考えずに信じることが出来ると言うのは、清い心が無くてはダメなのではないだろうか。

ルシオは、かつて廉であったときの悪行を思い出し、身体の芯が冷えるような気がした。


「パブロ魔導師の信頼には応えられないのではないか? 僕は罪深い過去を持っている。神の恩恵が受けられなければ、僕は一体どうなるのだろう」


ルシオは暫く怠っていた、内観をまた再開した。

少しでも神の存在を感じられるようになるために、パブロ魔導師の信頼に応えるために、もっと努力をしなければならないと考えてのことだった。

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